BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.26 )
日時: 2015/03/24 10:54
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

清水は泣いたからか、自分のコンプレックスを俺に明かしたからは分からないが、しばらくするといつもの彼に戻っていた。

「先輩、折角海に来たんすから、泳ぎましょう」

「ああ……」

彼の立ち直りの速さに少々呆気に取られていたが、その言葉で海水浴に来ていたことを思い出した。俺達は浅瀬で泳いでいたが、それでも夏の暑い中に冷たい海で泳ぐのはとても気持ちがいい。ふたりで競争したり、水の掛け合いをしたりして、クタクタになるまで遊んだ。
海からあがり、着替えた後、帰路につこうとビーチを出ると、ひとりの人物が俺達の行く手を阻む。2メートル級の身長に鍛え上げられた逆三角形の逞しい体格の男で、紫のタイツを着ており(体に密着しているためその圧倒的な筋肉が透けて見える)、赤いマントを羽織っている。髪はまるで牛の角のように両サイドがハネ、そしてその瞳は百獣の王ライオンのように威厳と風格に溢れている。只者ではないことは一目見れば明らかではあるが、俺は彼との面識は一切ない。だが、相手は無言で仁王立ちになり、俺達を先へ行かせないこうとしている。一体なんの目的でこんな嫌がらせをするのだろうか。
ふと別の道はないかと考えたが、そんなものは見当たらなかった。

「あんた、ちょっとどいてくれないか?」

恐る恐る訊ねると、彼は首を振る。

「なんで、通してくれないんだよ」

若干苛だちながら問いかけると、彼は人差し指を真っ直ぐ突き出し、俺より一歩後ろにいる清水を指さした。さされた彼の方は、心なしか顔が青ざめている。

「お前、清水と知り合いなのか?」

「……そうっすよ」

代わりに答えたのは、彼ではなく清水だった。
彼はキッと鋭く睨む。だがその顔は、俺には危ないものを近づけないと目一杯棒切れを振り回している子どものように感じられた。
互いに睨みあう、大男と清水。
このふたりはどういう関係なのか。
入り込む隙がないふたりの激しい無言の睨みあいに、この中で自分だけが浮いていることを悟った。