BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.27 )
- 日時: 2015/03/24 10:48
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
「あんた誰なんだ?」
空気と化してしまいそうだった俺は、このままではいけないと感じ、大男に訊ねる。彼はニヤッと笑みを浮かべ、ついにその口を開いた。
「私は木下正義(きのしたせいぎ)。ここにいる清水天(しみずてん)の師だ」
「なっ……!」
この木下正義という苗字と名前がかなりアンバランスな男は、清水の師匠だという。だが、一体何の師匠なのだろうか。
「彼は僕の格闘技の師匠なんすよ、先輩」
「格闘技!?」
意外だ。清水は筋肉質ではなく、どちらかというと細い方で腹筋も割れてはいなかった。
そんな彼が格闘技を習っている姿など全く想像ができない。
「少年、驚くのも無理はない話だ。清水は私に教えを乞うとき、頼んだのだ『腹筋をつけたら今以上に出ベソが目立ってしまう。そうならないように筋肉をつけずに強くしてほしい』——とな」
よくわからないが、そういうものだろうか。それにしても彼はそこまで自分のコンプレックスを気にしていたのか。もしかすると清水は、生意気ではあるが案外繊細なのかもしれない。
「それにしても、どうして弟子を辞めた僕のところにやって来たんですか」
「思い当たる節がないか」
正義の一言に、彼は口をつぐむ。どうやら、何かを思い出したらしい。
けれど彼はため息を吐き、決意を秘めた眼差しで言った。
「格闘技者たるもの、恋愛はしてはいけない——ですよね」
「そうだ。だがお前は私の教えを聞かず、恋愛に走ってしまった。それも、同性とだ。それがいかに許されざる行いであるか、お前に改めて教えてやるために、私は直々にお前のもとへ現れた」
「ふうん、でも残念でしたね。僕と先輩はまだ付き合っていません。あくまでも友達として接しているだけです」
「かもしれぬな……だが、映画館でのキスはどう説明するというのだ?」
「それは——」
清水の顔に僅かながら動揺の色が見えた。
それに彼も気づいたのか、相手に反論させる隙を与えず話を続ける。
「お前がなんと言おうと、唇を奪われたことは事実だ。つまり、お前はこの少年の抱く恋心を受け止めたという何よりの証になる!」
今度は俺を指さした。人に指さしをするのはいけないと、彼は学校の先生から習っていないのだろうか。すると彼は腕を広げ、こんなことを口にした。
「もしどうしても、お前がこの男と付き合いたいのであれば、この私とリングで闘い倒してみるがいい。さすれば、私はこれ以上お前達の邪魔はしないでやろう。最も負けた場合は、付き合いを認めぬが……さて、どうする?」
ポーカーフェイスの師の言葉に、彼の出した答えは。
「仕方ないっすね。これ以上僕達の関係に横やりを入れてほしくないので、その条件、受けて立ちますよ」