BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.6 )
日時: 2015/03/19 21:25
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

「清水天、か」

部屋のベッドに横になりながら、俺はコーヒーショップであった惚れ惚れするほど美しい声の少年のことを考えていた。

「あいつが女だったら、きっと好きになっていただろうな」

自分で言って自嘲的な笑みを浮かべる。
だが、現実的に清水は男だ。
けれど、俺はあの男に他の男子に対して抱く感情を抱かなかった。
例えば、鬱陶しいとか暑苦しいとか、嫌な奴などといったものだ。
初めて声をかけられた時、静かでおとなしそうな奴だと思った。
けれど話してみると意外と会話は弾むし、やや生意気な言動は所々にあったものの、だからこそ奴と打ち解けることができたと考えた時、彼のもっている生意気という性格は俺の中で長所に変わっていた。昔、恋をしている時というのはあばたもえくぼで、相手の嫌な部分も恋愛感情を抱いているうちはいい風に思うことができる——と言った意味の言葉を聞いたことがある。だが、俺は奴の全てを好きになるほど惚れたわけじゃない。
ただ、あの声、彼の声に惚れたのであって、彼に惚れたのではない。
今の時点では、それだけは確かだ。
そもそも、初めて会った人間、それも同性に対して恋をするなどと言うのは、現実にはあり得ないだろう。

「どっちにしても、偶然あっただけなんだから、もう会えねぇだろうしな」

携帯の電話番号やメールアドレスを交換していないため、奴との接点はなにもない。ただひとつだけ、接点があるとすれば、あのコーヒーショップだけだろう。
仮にまた行ったとしても奴はいない可能性の方が高い。
つまり、俺と奴——清水天との出会いは一期一会だったということだ。

「もう、あいつに会う事はねぇだろうな」

電気を消し、暗い中でひとり呟く。
自分のその言葉が、このときなぜかとても苦痛に感じた。