BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.12 )
日時: 2015/06/13 10:03
名前: レム* (ID: sSv6cHIH)

『不老不死と消えない悲しみ』episode3



 月日は流れ、俺は2年になった。
 バレーにも慣れ、喜ぶべきか、副主将に選ばれた。
 ——そして今日は、2度目の夏合宿に参加していた。

「黒尾! 久しぶりだなぁ!」
「おぉ、木兎。あいかわらずうるせぇな」
「なにをう!?」

 黒尾さんにからかわれ、木兎さんが怒りだすという光景は、今年で3年目に突入した(俺は二年目だが)。
 まったく、進歩のない……
 これが主将だなんて信じられるだろうか。
 まぁ事実だし、信じるも何もないのだが。
 騒ぐ木兎さんを見ながら、深いため息をついた。

「木兎さん。そんな分かりやすい挑発に引っかからないでください。黒尾さんもこの後が面倒なんでほどほどにしてください」
「あかーし!?」
「おー、流石木兎の保護者だな」
「黙れトサカ。……ていうか、こんな大きい子供作った覚えないです」
「あ、あかーしぃ……」
「トサカって、ひでぇなぁ」

 木兎がしょぼくれモードに入る前に、黒尾さんは退散。
 しょぼくれモードに入りかける木兎さんを(仕方なく)慰め、体育館に向かった。



「ツッキー来ねぇなぁ……」
「腹でも壊してんのかな?」
「……」

 夜、いつものように集まって練習しようとしていた、俺と黒尾さんと木兎さん。
 しかし、いつもならこの中に月島が加わっているのだが、今日は一向に現れない。

 ……っまさか、何かあったんじゃ……

 長年の勘というものだろうか。嫌な予感がする。
「……黒尾さん、木兎さん。調子が悪いので、今日はもう休みます」
 嘘をつくのは嫌だが、この際仕方がない。

「ええ、あかーし大丈夫か!? ゆっくり休めよ!」
「お大事にな〜」

 見送られながら、体育館を出る。
 そして、出た瞬間に、全力で走りだした。

 きっと、自分を知っている人が今の自分を見れば、驚いて止めにくるだろう。
 しかし、今は月島の無事を確かめなければ。
 月島が行きそうな場所探したが、一向に見つからない。

「一体……どこに…………っあ!?」

 高校の真ん前の道路。
 そこに、見慣れた蜂蜜色は倒れていた。
 急いで駆け寄り、月島に声をかける。
 幸い息はあるようだが、周りには月島の血と思われる液体が広がっている。

「月島! 月島っ!」

 体を激しく揺さぶる。
 本当は良くない事だけど、今はこれ以外に月島を起こす方法が見つからない。

「あんまり……揺らさないで、ください……」
 しばらく揺すっていると、月島が弱々しい声で俺を止めた。
「月島!? 大丈夫!?」
 ほっと、思わず肩を撫で下ろす。
 しかしすぐに月島が心配で、気を入れ直した。

「……とりあえずここは邪魔ですから、動きましょうか」

 体についた血をそのままに、月島は立ち上がり歩道に入る。
 俺も黙って、月島の後を追った。


「——僕、死ねないんですよ」

Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.13 )
日時: 2015/06/16 17:16
名前: レム* (ID: sSv6cHIH)

『不老不死と消えない悲しみ』episodefinal



「どう足掻いても、死ねないんです」

「……え……」
 歩道に入った途端に、背を向けたまま呟かれた月島の言葉。
 すぐには理解できず、2人の間には僅かな沈黙が生まれる。
 その沈黙をどう受け取ったのか、月島は振り向きながら自傷めいた笑みを浮かべた。

「気持ち悪いでしょう? 僕は不老不死なんです」

 どうやら、赤葦が自分の事を気持ち悪がっていると勘違いしたらしい。
「違う!!」
 いきなり大声を出した赤葦に驚いた月島だったが、無理はしなくていいと、泣きそうな声で告げた。

 そんな月島の言葉に、俺は首を左右に振る。
 そして、ふわりと月島を抱きしめたかと思うと、静かに語り出した。

「気持ち悪いわけない………俺も、死ねないから……」
 すると、今まで大人しかった月島が、いきなり俺の腕の中から抜け出そうと暴れだした。

「だからっ! そんな同情なんていらないって言ってるんです!! たかが数十年生きてきた奴に、この苦しみが分かるわけない……っ!!」

 拒絶の言葉を叫びながら、暴れる月島。
 ……と、運悪く月島の爪が、俺の頬を引っ掻いてしまった。

「……っあ……」
 結構深く引っ掻いたのか、爪痕から血が溢れてくる。
「あ、あか、あしさ……僕……」
 俺は自分の頬に触れ、ぬるりとした感覚を確かめると、月島に視線を戻した。
 月島に先程の拒絶の色は無く、そのかわりにその綺麗な瞳にうっすらと涙を浮かべていた。

「月島。大丈夫だから、見てて」

 今にも泣き出しそうな月島に優しく声をかけ、自分の傷を月島が見えやすいように顔の向きを変える。
「……!」
 月島の表情が、見るみる内に変わっていく。
 それに合わせて、頬の痛みがなくなっていくのを感じた。


「……俺もね、死ねないんだ」


 信じてくれるかと尋ねれば、月島は戸惑いながらもコクリと頷いた。



 その後、2人はお互いの今までの事を話し合った。

 それで分かった事だが、月島は100年、赤葦は200年生きているらしい。
 月島と赤葦の違いと言えば、両親がいるかいないかだ。
 月島の両親はとても若く、いまだに現役で働いているらしい。

 細かいことは置いておくとして、2人はその場で長いこと語り合っていた。
 同じ境遇だからだろう。
 そして、明け方まで話し込んでしまい、双方の部長や部員にこっぴどく叱られた。

『澤村さんって怒ると怖いタイプだよね』
『えぇ。今後怒らせないように気を付けます』
『頑張れ』

 君と話したこと日のことは、俺にとって生きる道標。