BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.30 )
- 日時: 2015/06/13 12:24
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
- プロフ: 葦月にドハマりしました!!(
『シンデレラ』episode4
「それじゃあ蛍、掃除しとけよ」
「カレー!!」
「……ツッキーが一緒じゃないのは寂しいなぁ……」
僕は3人を見送り、さっそく家の掃除を始めた。
影山の部屋は、バレーのことばかりで、そして散らかっていた。
山口の部屋は、隠し撮りで撮った僕の写真が部屋中に貼られていた。もちろん全て剥がして火に突っ込んだけど。帰ってきたら山口には説教だね。
黒尾さんの部屋は、2人の部屋に比べたら綺麗だった。きっと母さんに怒られないようにだな。
たまに休憩もとり、夕方には全ての掃除が終わった。
「……僕もパーティー、見たかったな」
「その願い、叶えてあげようか?」
今この家にいるのは僕だけなのに……
盗む物なんてないし、泥棒じゃないよね。
「誰?」
「俺は魔法使いの菅原孝支! 君の願い、叶えてあげるよ」
「……はぁ」
「その顔は信じていないだろ! そこに立って。その衣装を変えてあげる」
そう言って、魔法使いは杖を振り僕に魔法をかけてくれた。
魔法をかけてくれたのはいいんだけど、この格好は……
「あの、すみません」
「何?」
「何でドレスなんですか? 僕、男なんですけど」
僕が今着ているのは上品なドレス。
おまけにロングのウィッグ付きという……
「それは、赤——……ある人物に頼まれたから」
「誰かは知りませんが、ドレス以外にしてくれませんか」
「ごめん、無理。ドレス以外でパーティーに行けば俺の命がないからさ……それに、今日ののラッキーアイテムはドレスだって占いで言ってたよ」
魔法使いに頼んだ人物はとても恐い人だということはわかったけど。
この様子では、ドレスを着てパーティーに行くしかないのか……
ていうか、ドレスがラッキーアイテムってどんな占いだよ。
「お城まで、どうやって行けばいいんですか?」
「あぁ、それなら心配ないよ。俺が馬車を手配しといた」
外に出てみると、家の前に停まっているのは自転車にリアカーが付いている乗り物だった。
お城まで徒歩ではないにしても、これは道中すごく人目についてしまうと思う……
「おお、可愛い子だ!! ……あ、俺は田中。ヨロシクな」
「田中、その子城まで連れていって」
「城までって距離すごいっすよ!?」
「ジャンケンに負けたのは田中でしょ」
「……わかったっす」
「魔法は12時の鐘が鳴り終わると消えてしまうから気をつけてねー」
魔法使いに見送られ、僕はお城へと向かった。
「赤葦に気に入られるなんて、月島もついてないなぁ」
リアカーが出発した後に魔法使いがそんなことを呟いていたことに、僕は気づくはずもない。
この乗り物は人目についてしまうとは予想してたけど、人の視線がすごく恥ずかしかったかな。
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.31 )
- 日時: 2015/06/13 12:27
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
- プロフ: 葦月にドハマりしました!!(
『シンデレラ』episode5
「ハァ……っハァ……っ……疲れた!」
「ありがとうございました。田中さんのお陰でパーティーに間に合いました」
「まぁ、楽しんでこい」
田中さんと別れ、僕はパーティー会場へと向かった。
パーティーはダンスタイムとなっており、ダンスを楽しむ人もいれば、ゲストルームで話をしている人もいた。
「そこのお嬢さん、俺と踊って頂けますか?」
声を掛けてきたのは、この間、馬車に轢かれそうになった時に僕を助けてくれた赤葦さんでした。
慣れないドレスにヒールの靴を履いているので、ダンスは断りたいと思いましたが、変に断って男だとばれると不味いと思い、ダンスの申込みを受けた。
こんな大勢の前で男だとばれたら、女装癖のある変態だと思われるよね……
「ダンスお上手なんですね」
「そう? 君も上手いと俺は思うけど」
僕がダンスを上手く踊れているとしたら、それは赤葦さんのリードがいいからだと思う。
ダンスが終わった後も、バルコニーへ出て話をすることになった。
赤葦さんの話は面白く、また聞き上手なこともあり、楽しい一時を過ごすことができた。
ゴーンゴーンと、12時の鐘が鳴る音が聞こえてきた。
鐘が全て鳴り終わる前に、会場から出ないと……
「あの、そろそろ帰らないといけなくて」
「もう少し君と話したいんだけど」
「本当にすみません」
赤葦さんの返事を聞く前に、僕はドレスの裾を少し持ち走った。
お城の階段を下りる際にガラスの靴を片方落としてしまったけど、鐘が鳴り終わる前にお城から離れたかったから、そのまま走り続けた。
「月島のドレス姿は綺麗だったけれど、12時までしか魔法の効果が保てないなんて菅原さんもまだまだだな」
階段に落ちていたガラスの靴を拾い、俺は城の使いの者を結集させ、このガラスの靴の持ち主を探しだすように命じた。
「京治様、このガラスの靴の持ち主を探して如何なさるおつもりなのですか?」
「このガラスの靴の持ち主に心を奪われて。見つかったら俺の妃として迎えるつもりです」
靴の持ち主が俺の妃となる人だと分かった使いの者達は、すごいやる気をだしていた。
俺の言葉を聞いた、側近は泣いて喜んでいた。
今回は探しても見つからないとは思うけどね。
……さてと、俺は俺で、今後のことを考えないといけないかな。
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.32 )
- 日時: 2015/06/13 12:29
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
- プロフ: 赤葦怖い!! 怖い!!
『シンデレラ』episode6
パーティーから数日が経った。
最近は、お城の使いの人達をよく街で見掛けるようになった。
街の人の話では、パーティーの時に王子の心を射止めたお姫様を探しているらしい。
お姫様の手がかりは、パーティーの帰りに落とした靴とのことだとか。
「僕も靴を落としたけど、王子に会っていないので違うよね」
それに、王子は隣国からの縁談話を全て断っていた人のはず。
そんな王子の心を射止めたとなると、さぞ絶世の美女なんだろうね。
だが、今城は王子の提案した新しい法律によって、臣下達は驚きを隠せないでいた。
王子が提案した法律というのは、同性婚を認めるといものだった。
この案件により、賛成派と反対派に別れてしまっているのだ。
「何故、そのような法律を作ろうとなさったのですか?」
「愛の形は人それぞれだと思うからです。近隣国も同性婚を認めている国は多いんですよ?」
「ですが」
「それに、民からも同性婚を認めて欲しいという声も多数挙がっていますしね」
「そうかもしれませんが」
「では俺から貴方達に聞きます。好きになってしまった人が同性ってだけで、なぜ反対をする?」
「そ、それは……」
唇を噛み、俯く。
「意見がないのなら、この案件は可決っていうことで、いいんですね?」
王子の威圧が恐くて、反対派は意見を言うことが出来なかった。
同性婚が国から認められてからは、民から感謝の手紙が多く城に寄せられた。
俺が自分の部屋で紅茶を飲んでいると、城の使いの者が部屋にやって来た。
まぁ、使いの者の表情を見たところ何を言いにきたのか想像はついたけど。
「ガラスの靴の持ち主は見つかりましたか?」
「申し訳ありません。パーティーの招待者リストに記されていた女性の元に参りましたが、靴が合う方はいらっしゃいませんでした」
「そうですか。じゃあ、俺が直々に探します」
「王子自らですか?」
「えぇ。父上と母上の了承は得ている」
こうなることはわかっていた。
だから、見つからなかった場合は俺が探す許可を貰った。
絶対に探しだし僕の妃とする。
その為に法律も変えたのだから。
——全ては、君を手に入れる為に。
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.33 )
- 日時: 2015/06/13 12:31
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
- プロフ: 短けぇ!!
『シンデレラ』episode7
城の使いの者を下がらせ、俺は城に仕える魔法使いの菅原さんを呼んだ。
「呼んだ?」
「月島の居場所を教えてください」
「そのことだと思った。好きだねぇ、本当。この紙に書かれている場所に月島はいるよ」
菅原さんに、月島が住んでいる場所が書かれている紙を貰った。
馬車を用意し、城の使いを月島の家へと向かわせた。
「こんなにいい天気なら、夕方には洗濯は乾きそうかな」
「すみません。この家に月島蛍様はいらっしゃいますか?」
「……僕ですけど」
「王子が貴方をお探しなのです。申し訳ありませんが、城まで来て頂けませんか?」
王子が僕を探している?
あの時のパーティーで、何かしでかしちゃったのかな……
「蛍様だけでなく、ご家族の方も来て頂きたく思っているのですが」
僕は黒尾さん達に伝え、お城の馬車に乗り込みお城へと向かう。
何も伝えられていないので不安でしかない。
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.34 )
- 日時: 2015/06/13 12:33
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
『シンデレラ』episode8
お城に着き、僕達は玉座へと案内された。
国王様と王妃様の間に座っている人物に見覚えがあった。
「久しぶり、月島。ずっと君を探してたんだ」
赤葦さんが、この国の王子様?
彼が僕を探す必要はないと思うんだけど……
「俺は、パーティーの時にある人に心を奪われた。そして、その人が落としていったガラスの靴の持ち主を探していたんだ」
赤葦さんが持っていたのは、あの日僕がパーティーから帰る際に落としたガラスの靴だった。
……っとその前に、この人はなんて言った?
聞き間違いでなければ、心を奪われたと聞こえた気がしたんだけど……
「パーティーの時のドレス姿も綺麗だったけれど、俺は初めて君に出会ったあの日から、動物にも優しい心を持っている君に、俺は惹かれていたんだと思う」
僕が色々と考えていた間に、赤葦さんは僕の目の前に膝まずいていた。
「いきなりこんなこと言ったら驚かせてしまうと思うけど、俺と結婚してくれないか」
「……へ?」
『結婚!?』
プロポーズを受けた僕よりも、黒尾さんや山口、影山の方が驚いていた。
逆に、国王様と王妃様はプロポーズのこと驚いていないような……
「僕、男なんですけど……」
「先日、同性婚が認められたけど」
「そうだったとしても、僕は子どもを産めません」
同性婚が認められたとしても、王族となったのなら後継者問題は回避出来ないはず。
「確かに子どもは必要だね。……でも、俺と月島で、出来ないことなんてないと思うけど?」
……なぜだろう。
赤葦さんが言うと、本当に出来ちゃうんじゃないかと思う。
「ダメかな?」
「あの
「俺は2人の結婚なんて認めない!!」
「……山口?」
「俺だって、ツッキーに初めて会った時から大好きだし!! いきなり出てきたような野郎に、ツッキーは渡さない」
ちょっと山口!!
これ以上話をややこしくしないでよ!
黒尾さんと影山も驚いてるでしょ!!
とりあえず話がややこしくならないように、山口は鳩尾に一発。
「山口が迷惑掛けてすみません」
「キャアァァァ!! 月島君カッコよすぎる!!」
「しっかりしてるし、赤葦とも上手くやっていけるんじゃないか?」
「さっそく、結婚式の準備に取り掛からせないと!!」
今ので、国王様と王妃様に気に入られてしまったらしい。
それもこれも全て山口のせいだね。
こうして、赤葦さんと僕の結婚式が、1週間後に行われることになった。
……なんだか、全て赤葦さんの考えていた通りに話が進んでいるような気がする。
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.35 )
- 日時: 2015/06/13 12:36
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
『シンデレラ』episodefinal
ついに、結婚式の日がやってきた。
……何故か、僕はウェディングドレスを着ている。
「すごく綺麗だ」
「……ありがとうございます……?」
女性ならきっと綺麗と言われたら喜ぶのだろうが、僕にはものすごく複雑な気持ちだった。
赤葦さんも白のタキシードがとても似合っていたけれど、今の僕は赤葦さんに伝えたいと思わなかった。
誓いの言葉を言い、指輪の交換を行い、誓いのキスの時には山口がうるさかった。
式の後は、お城のバルコニーに出て国民の方々に笑顔で手を振ったりと、すごく疲れた1日だった。
僕は、2人の寝室にあるベッドに腰かけた。
「月島……いや、蛍って言うべきかな? 休む前に少しいいか? 君に伝えないといけないことがある」
「……大丈夫ですよ」
今までこんなに真剣な顔をした赤司君を見たことがなかった。
僕は、赤葦さんの話を聞こうと体の向きを変えた。
◇
赤葦さんが珍しく緊張しているようだったので、僕は紅茶を淹れた。
「熱いので気をつけて下さい」
「ありがとう」
王室にある茶葉だから、香りも味も一級品。
赤葦さんは紅茶に口をつけずに、ただカップを見つめているだけだった。
「それで、話って何ですか?」
「……君には本当に悪いと思っている。無理矢理、結婚を押しつけてしまって」
「……」
いつもの自信に満ちた彼ではなく、弱々しく感じた。
「俺には、色々な国の姫から縁談はきていた。姫が欲しいのは、権力やこの国で採れる宝石だけで、誰も俺を見ようとはしていなかったんだ」
「……」
「そんな時、君に出会った。馬車で轢かれそうになったのに鳴き声だけで馬が怪我していることに気づき、ケアまで薦めていた。本当に優しい心の持ち主だと思ったし、妃にするなら君みたいな人がいいと思った。だから、パーティーの招待状を君の家に送った。でも、パーティーに君の姿がなかったから城に仕えている魔法使いに君を連れて来るように頼んだ」
あの時の魔法使いは、赤葦さんに仕えていたのか。
通りで、ドレス以外の服を頼んだ時にあんなに慌てていたわけだ。
でも、1つだけ分からないことがあった。
「何故、ドレスだったんですか?」
「ドレス姿の君に心奪われたとなれば、君を探すのに反対されないだろ? 使いの者が君を探している間に、同性婚を認められていれば君が男でも結婚することができるしね。でも、父上と母上があんなにも君のことを気に入るとは思っていなかったけど」
「……」
「……君を妃にする為とはいえ、ごめんね」
ここまで計算していたとは思ってなかった。
……ていうか、赤葦さんって意外と不器用なんだなぁ……
「確かに、ほぼ拒否権のない結婚でしたね」
「……」
「赤葦さんがどういう人なのかも全然わかりませんし」
「……」
「だから、これから赤葦さんのこと、色々教えて下さい」
「……え?」
最初は、この結婚を認めることはできなかった。
でも、僕の為に色々と考えてくれていたのは伝ったし、真実を黙っていることもできたのに、隠さずに話してくれたことが嬉しいと感じた。
「これからの人生2人でいる時間は長いです。だから、少しずつ幸せになっていきましょう? 京治さん」
「……蛍、ありがとう」
涙ぐむ京治さんを僕は優しく抱きしめた。
次の日から京治さんのスキンシップも増えたけど、プロポーズで言ったように王家の権力を駆使し2人の子宝にも恵まれ、いつまでも幸せの日々を送ることができた。