BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【短編集】 ( No.4 )
日時: 2015/06/09 17:14
名前: レム* (ID: sSv6cHIH)

『生きてる意味ってなんですか?』


 『あんたなんか産まなきゃよかったっ!』
 『その余裕って感じの目とか、うぜぇんだよ!』



 僕が生きてる理由はなんだろうか。
「ツッキー?」
「……あぁ、山口」
「どうかした?」
「……いや、何も」
 こいつもきっと、本当は僕を信じてなんか——いない。

「……ただいま、帰りました」

 家に入り、そう小さく呟く。
 聞こえていようがいまいが返事はない。
 たいして変わらないのだから、別にどうでもいい。

「あら、帰ってたの」
 リビングに入れば、僕の最も憎む人。
「……今、帰りました」
「そう。……バレーはやめた?」
「……いいえ」
 こいつは僕がバレーをやっていると、やめろやめろと言う。
 どうせ部費がどうとか言うんだろうけど。
「まだやめてないの!? ずっとやめろって言ってるでしょう!? ……これだからあんたなんか産みたくなかったのよ。死ねばいいのに」
「……」
 死ねばいいのに、か。


 僕の母親は、僕を毛嫌いした。
 父親が死んだとき、僕はその場にいた。
 父さんがトラックに轢かれたのは、僕のせい。
 僕を庇った父さんは、あっけなくトラックに潰された。
 
 『全部、あんたのせいよ!!』

 憎むだなんて言うけれど。
 それは僕の身勝手。
 悪いのは全部僕。

 死ねばいいのに。
 母親の口癖は、もっと僕を息苦しくさせた。
 僕が死ねば、母さんは楽になれる?
 僕が生きてるせいで苦しむ人達は、幸せになれる?
 ……だったら、だったら。
 ……死んでもいいかな、なんて。

「少し、出かけてきます」

 そう言うと、走って家を飛び出した。
 住宅街を抜けて。
 坂ノ下商店を抜けて。
「はあ……っはあ……っ」

 ——烏野高校。

 吸い込まれる様に、屋上へと走った。

「…………着いた」
 なんとなく見慣れた風景。
 チームメートと見た風景。
 偽りの友情のはずなのに。
 なぜかそれが心地よくて。

「くそっ、くそっ、くっそぉ……っ!!」

 涙がボロボロと溢れ出てくる。

「なんで……。いらないのに、ただの、偽りなのに……っ!!」

 もっと一緒にいたい。

 馬鹿みたいに楽しそうな日向とか。
 目付きが悪くて、でもバレーが好きな影山とか。
 いつもうるさい西谷さんとか。田中さんとか。
 ゴツいくせに乙女趣味な旭さんとか。
 お母さんみたいな菅原さんとか。
 いつもみんなをまとめてくれる主将とか。
 僕のそばで笑ってくれる山口とか。

 死のうって決めたはずなのに、なぜか涙が止まらなくて。


「月島!!」
「月島ボゲェ!!」
「つーきーしーまーっ!!」
「馬鹿月島!!」
「月島!」
「月島」
「月島ぁ!!」
「ツッキー!」


 なんでいつも貴方達は。
「なんで……いるんですか……っ!!」
 僕の支えになってくれるんですか。

『仲間だからに、決まってんだろ!!』

「——本当、馬鹿みたい」