BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.9 )
- 日時: 2015/06/13 09:56
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
- プロフ: 一応葦月です!!
『不老不死と消えない悲しみ』episode1
今まで何度も聞いてきたお経が、耳に響く。
——あぁ、まただ。
また、一人になってしまった。
大好きな人が笑顔で写る遺影を眺めながら、俺は心の中で呟いた。
俺は死ねない。
いまも、これからも、ずっと、俺は独りなんだ。
◇
俺は、死ぬことができない。
俗に言う、不老不死というやつだ。
しかし、不老不死ではあるが、不死身ではない。
普通の人間の様に、怪我をすれば痛みだってあるし、風邪だって引く。
ただ、どんなに大きな怪我をしようとも、死ぬことはなかったのだった。
俺は、そんな体で数えるのも嫌になるほどの年月を過ごしてきた。
それは、同時に大切な人……愛していた人との別れを、必ず迎えるということでもあった。
そしてまた俺は、独りになった。
「赤葦君……来てくれてありがとう……」
「……いえ」
目を真っ赤に泣き腫らした女性が、俺に声をかける。
確か、この人は亡くなった友人の母親だ。
あまり話したことはないのだが、確か写真を見せてもらったことがあったっけ。
——大学に通い始めて、初めての友人だった。
その彼が一昨日、亡くなったのだ。
……まだ、20歳だった。
この間みんなで、誕生日を祝ったばかりだった。
そんな彼が一昨日、交通事故で呆気なく逝ってしまったのだ。
人間なんてそんなものだ。
儚いだの尊いだのと人は言う。
ただその人間が死ぬ環境をつくっているのは自分達ではないか。
人は醜い。
自分のやったことを認めない、そんな自分勝手な生き物なんだ。
——俺は、まだ心の整理もできないまま、葬式に出席していた。
他の友人や親戚もそれは同じらしく、皆、まるで魂が抜けたようだった。
俺は、は何度も何度もこんな場面を見てきた。
でも、何度見ようと、経験しようと、慣れることなんてありはしなかった。
……ただただ、悲しみだけが心の中に居座った。
『大切な人ほど、失う時の悲しみも大きい』
そんなこと、俺が一番知っている。
周りと距離を置いた時期もあった。
それでも人との関わりを完璧に断つことなどできず、大切な人が一人、また一人とこの世を去っていった。
- Re: 【ハイキュー!!】頂の景色を夢見て【BL短編集!】 ( No.10 )
- 日時: 2015/06/13 09:59
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
『不老不死と消えない悲しみ』episode2
友人の死をきっかけに、俺は大学を辞め、一日一日をまるで屍のように過ごした。
「……屍、か」
それは、自分の一番求める姿だった。
いくらなろうとしても、俺にはできない。
それは、わかっていることだった。
「……死にたい、なぁ……」
俺が小さく呟いたと同時に、遠くの方で、高校生らしき集団がとても楽しそうに笑いあっているのが見えた。
……高校か……もう一度行ってもみても、いいかもしれない。
俺は、約60年前に高校を卒業している。
当時の友人達は、もうほとんど残っていない。
……3年間、短いけど、俺には丁度いいかもしれないな。
そこからは早かった。
高校は一度出ているが、それは60年前の話だ。
流石にいろいろと変わっているだろう。
中学生の受験資料を買いあさり、勉強に励んだ。
何十年ぶりかに取り組んだ勉強は少々難解だったが、目標を見つけた俺は、その難しさも楽しかった。
そして無事に高校に合格。
高校名は……梟谷学園。
一度校門をくぐれば、部活勧誘の嵐。
どこの部活も、目が真剣すぎて少々恐ろしい。
そんな中に、ひときは大きな声で勧誘する部活があった。
「ヘイヘイヘーイ!! バレー部入ってくれーっ!!」
「ちょ、木兎うるさい!」
「このくらいやらないとみんな来てくれないだろ? あっ! 君どう? バレーやらない!?」
いつの間にか人の波に流されて、バレー部の勧誘スペースの前まで来てしまっていたらしい。
耳元で叫ばれると、耳がいたい。
ヘイヘイヘーイ、という謎の掛け声をかけていた、銀髪の……木兎さん? という人が俺にまで声をかける。
……バレーかぁ……
バレーは60年前に経験済みであるが、なんせ何十年ぶりのバレー。
それに加えて、この木兎という人への絶対的な不安感(というか不信感)。
正直に言うと不安しかなかった。
繋ぐスポーツ、バレー……ね。いいかもしれないな。
「……はい。入部します。よろしくおねがいします」
俺がそう言えば、木兎さんとやらは目をキラキラと輝かせ、またあの変な掛け声と共に、他の部員に自慢しにいった。
なぜだか、ものすごくこれからが不安だ。
俺の不安の原因が分かるまで、あと少し。