BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

百合 ( No.1 )
日時: 2016/06/16 18:22
名前: 桜庭 優 (ID: Qos362AQ)

これは中学生オリジナルの百合小説です。
〜with love〜
〜第一話〜
公園でゆらゆらと大枝を揺らして辺りに桃色の雨を降らせる桜の木からは、今が春だという事が伺えました。
桜が咲き乱れている中で楽しげな子供の声が聞こえてきます。
女の子の頭に大きなリボンを付けて、くるくるパーマの三つ編みの子が、熊のぬいぐるみを大事そうに抱え走り回っています。
幼稚園児ぐらいでしょうか?女の子の顔は、走れば走るほど赤くなっていき、息づかいも荒くなっていきます。

「おそいよ、しんちゃん、さくらちゃん」

乃愛は、走りながら苦しそうに顔を赤らめながら後から追いかけてている同じ年位の二人の女の子に楽しそうに話しかけました。
でも心の中では、早く乃愛を捕まえてよね。と思っていました。

「まってよ、のあちゃん。
そんなにはやくはしったらまたたいちょうをわるくするわよ」

茶色い髪を低い位置で2つに束ねた女の子が、心配そうに乃愛を見つめながら、乃愛の後を必死で追いかけまいます。
桜は、乃愛が体が弱いのが良く解っていました。
そして何時も無理をして苦しんでいる乃愛を見てると何時も心が辛くなりました。
だからから早く乃愛を捕まえようと頑張りました。
桜は、あと少しで乃愛に手が届く所まで来たけれども乃愛を掴む寸前で乃愛に避けられて乃愛との距離が離れました。

「だいじょうぶだよ。
もうさくらちゃんは、しんぱいしょうだな。
でもはやくのあをつかまえてくれないとつまらないよ」

乃愛は、楽しそうに笑うと走るスピードを速くしました。
すると、どんどん桜と乃愛の距離は、離れてしまいました。
乃愛が大きく右足を踏みだした、その瞬間でした。
乃愛が苦しそうに胸を押さえつけて、その場に倒れこんだのです。

「だいじょうぶか、のあ!?」
「だいじょうぶ、のあちゃん!?」

ツインテールの幼い女の子とのショートカットで黒髪の幼女が乃愛に走って近寄りました。
心配そうに乃愛を見つめながら体を支えてくれる紳とそれを今にも泣きそうな表情で乃愛を見つめる桜に乃愛は、二人を心配させないように辛いのを我慢して無理に笑って見せました。

「ごめんね、またふたりにめいわくをかけちゃったよね」

乃愛は、申し訳なさそうに紳と桜を見渡すと一回深呼吸をするとゆっくりと立ちあがろうとしました。

「きゃっ!?」
「あぶない!?」

立ち上がる寸前の所で体のバランスが崩れて倒れようとしました。
でも倒れる前に紳が乃愛の体を支えました。

「まだたいちょうがかいふくしていないのにあんまりむりをするなよ、のあ。
わたしがベンチに、はこんでやるから、すこしやすんでいろよ」
「もうこんなからだは、いやだよ……」

紳は、乃愛の体を姫様抱っこするとベンチに向かいました。
紳に抱っこされた上で乃愛は、泣きそうに涙を瞳に溜めながら辛そうに俯いた。
紳は、乃愛を優しく見つめながらベンチまで運ぶとベンチの上に降ろしました。

「そんなかおをしないでよ、のあちゃん。
おおきくなったらからだのたいちょうもかいぜんされるとおもいますよ」

桜は、乃愛の体を優しく抱きしめると耳元で囁きました。
それを見た紳は、桜の上から乃愛を抱きしめた。

「のあは、からだのことをきにしすぎだ。
からだのたいちょうがわるくしてもわたしとさくらがほろうするからのあは、どんとかまえていろよ」

紳は、乃愛を安心させるように、優しく耳元で話しかけました。
顔を上げた乃愛は、手の甲で涙を払うと桜と紳に向かって、柔らかく笑って見せました。

「ありがとう、さくらちゃん、しんちゃん。
のあ、もうすこしがんばってみるね」

それから乃愛は、体の弱さを隠すようによりやんちゃをするようになりました。
それが桜と紳それに乃愛の両親に気を使わせない一番の方法だと考えていました。
そして乃愛の事は、紳達にとってお転婆の姫様として受け入れられるようになりました。

「乃愛、朝よ、起きなさい」

乃愛は体がゆらゆらと揺さぶられているのを感じ、目を覚ました。
目を開けるとそこには、呆れたような顔をした乃愛のお母さんが腰に手を当てて立っていました。

「う……んっ……お母さん……?」

乃愛は、目を擦りながら自分の体にかかっている布団を捲り体を起こしました。
それと同時に乃愛のお母さんは、部屋のカーテンを開けました。

「『お母さん……?』じゃないわよ。
いつまで眠ってるつもり?
ほら、早く起きて制服に着替えてご飯を食べちゃいなさい。
もう少しで紳ちゃんが迎えに来ちゃうわよ」
「は〜〜〜い」

乃愛のお母さんが部屋から出て行くのを見送ってから、乃愛は制服に着替え、髪をクシでとかしはじめました。
昔からの天然パーマのおかげで、髪をとかすのに毎朝苦労させられるのです。
やっとのことで三つ編みにした髪に、チャームポイントである赤い大きなリボンをつけると、乃愛はその場でくるりと回って見せました。

「うん、完璧だよね」

乃愛は、鏡に映っている自分に向かって一回ウインクをしてから頷くとリビングに向かいました。
リビングでは、乃愛のお母さんが焼いた食パンをのせたお皿をテーブルに運びながらため息を吐きました。

「乃愛は、もう中学二年生なんだから自分で起きれるようにしなさいよ」

テーブルの上には、乃愛のお母さんが妬いてくれた香ばしい匂いのするパンがお皿の上で「私を早く食べてよね!」と訴えるかのように、乃愛の食欲に、火をつけました。

「早く朝ご飯を食べないと紳ちゃんが迎えに来るわよ」
「急いで食べるから急かさないでよ」

乃愛が椅子に腰掛け、食パンを二口頬張り、牛乳を飲みこんだ、その時です。
家の中で呼び鈴が鳴り響きました。

「わっ、もう紳ちゃんが来たの!?」
「ほら、言わない事じゃない」

乃愛は、急いで立ち上がると牛乳を一気飲みしてからお母さんに近づきました。

「いってきます、お母さん」

乃愛は、お母さんの頬にキスをしました。

「行ってらっしゃい、乃愛」

お母さんも、乃愛の頬に、軽くキスをしました。
乃愛が食パンをもぐもぐと頬張りながら玄関を開けると、黒髪のショートヘアーの女の子がそこに立っていました。