BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: ハイキューパロディ短編他 ( No.13 )
日時: 2015/12/08 19:18
名前: 七詩 ◆Ww9Me2u6TE (ID: 5SQt.OF5)

最後にあげたの結構前だったんですね、びっくり……

※この前のリエ夜久と同設定
※黒大
※年齢操作あり
※長い
※多分付き合ってる




 ふと、何かの気配で目が覚めた。
 体はまだ少し熱く、重く、だるい。喉の痛みこそないが、完全に風邪である。仮にも音駒という一国を治めている領主が体調管理もできないなんて、と黒尾は自虐的にふっと笑った。
 まだぼんやりした頭で気配の正体を探ると、なにやら廊下が騒がしい。その音で意識が冴え、黒尾は今日の予定をはっと思い出した。
「今日澤村来る日だった……」
 ゆっくりと体を起こす。体はまだ休んでいたいと悲鳴をあげるが、澤村の治める烏野は遠くそう易々とこちらに来られる場所ではない。それに仕事があるとはいえ折角余裕のある日程で来てくれているのに、体調不良程度で休んで日数を削りたくはない。
 なんとか布団から出て、正装に着替える。足がふらつき頭も鈍く痛い。黒尾は大きく息を吐き出し、ぐっとへそのあたりに力を入れた。


「く、黒尾さん!? 駄目です、まだ寝ていなきゃ……!」
「そうですよ、澤村さんにはちゃんと訳を話してありますから!」
 黒尾が廊下に出てすぐ、犬岡と芝山が駆け寄ってくる。心配そうに眉を下げる二人の頭を撫でてやり、黒尾は安心させるように言った。
「あー、もう平気だから心配すんな。それに澤村もあまり長居はできねえだろ?さっさと済ませりゃ、病み上がりの体にも響かねえよ」
「それだけふらついといて、平気だなんてどの口が言うんだ?」
 突然の落ち着いた声に黒尾が振り向くと、背後に海がいた。抵抗する間もなく羽交い締めにされ、そのままずるずると部屋まで運ばれる。
「海……俺は大丈夫だから離せって」
 黒尾の抗議の声もむなしく、海は一切顔色を変えずに黒尾を布団の上へ放り投げた。
「着替えて寝てろ、な?」
 いつもの菩薩顔でそう言われ、黒尾は渋々寝間着に着替えた。


 夜、ふと目が覚めて、黒尾は体を起こした。夕食の時間はとうに過ぎたようで、枕元に三つおにぎりが並んでいた。皿の下には手紙が挟まっていたが、月明かりのみではかなり見辛い。
 火種を貰おうと立ち上がる。もうふらつきも頭痛もない。明日には面会できそうだと思いながら、黒尾は廊下に繋がる障子をがらりと開けた。
「あ」
「うお!?」
 目の前にいたのは、右手を中途半端な高さに持ち上げたまま固まる澤村だった。どうやら見舞いに来てくれたようで、左手には風呂敷包みを持っている。
「起きたんだな、元気そうで良かった」
「おー……」
 そこで黒尾は、自分が寝間着姿であることに気がついた。一瞬慌てたが、よく見れば澤村も寝間着とまではいかないまでも正装ではない。正式な場でもないし、そこまで気にすることもないか、と黒尾は開き直ることにした。


 蝋燭と火鉢に火を灯すと部屋の中は明るく、暖かくなった。流石に寝間着一枚で相手をするのも悪いと思い、黒尾は赤い羽織を寝間着の上から羽織った。澤村は黒尾に向き合う形であぐらをかき、左手に持っていた風呂敷包みを差し出した。
「土産だ」
「どーも……お、酒か。いいね。烏野の酒は美味いから」
「それは良かった」
 お互いに小さな杯に酒を入れ、軽く掲げる。一気にくっと飲み干すと、ひりりとした痛みのあとにほんのりと米の甘味が広がった。久々の好みの味に黒尾が嘆息すると、澤村は満足そうに笑い、自分の杯も空にした。




続きます→