BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: ハイキューパロディ短編他 ( No.15 )
日時: 2015/12/08 22:53
名前: 七詩 ◆Ww9Me2u6TE (ID: hFu5/zEO)

→続き



「ん、よし終わり、っと」
 ふう、と息をつきながら黒尾は筆を硯の横に置いた。途中から澤村が大人しくなったので、ついでにやりかけだった仕事も終わらせてしまった。少し時間はかかるが片手でも文鎮を二つ使えば意外とできるものだな、と思いながら黒尾が振り返ると、手を握られたままくたんと居眠りしている澤村の姿があった。
 ——やけに大人しかった理由はこれか。
 繋いだ手を軽く振ってみるが、肩がぴくりと動いただけで起きる様子はない。
「さーわーむーらー」
声をかけながら、今度は右手で肩を揺すってみると、ようやく目が少しだけ開いた。
「ん……」
「起きた?」
 軽く顔を近づけ反応を見る。澤村はしばらくぼんやりしていたが、何回かまばたきをした後、あー、と小さくうめいた。
「あーすまん、寝てたか」
「いや、こっちもやりかけの仕事済ませてたし、別にいい」
 黒尾がそう言うと、澤村はそうか、と呟いて体を伸ばそうと腕を持ち上げて——止まった。
「……いつまで繋いでる気だ?」
 怒りでも苛立ちでもなく、ただ疑問だ、というような口調に、黒尾はどうしようかなーと呟きニヤリと笑った。
「いや離せよ」
「んー?まあ本当に離してほしいなら離すけど」
「……さっきから離せって言ってんべや」
「はいはい」
 そう言って黒尾はパッと手を離した。先程までの温もりがすっと冷えていく。寒さにふと火鉢を見ると、火はとっくに消えていた。明日炭を持ってこなければ、と思いつつ澤村に目を戻すと、澤村は中途半端に手を持ち上げた状態でぼんやりしていた。
「どうした?」
「っ、ああ、悪い……なんでもない」
 慌てて手を下げ少し落ち込んだような顔をした澤村を見て、黒尾は小さく笑い、下げられた澤村の手を再び握った。
「、くろ」
「なんでも分かってんのが自分だけだと思うなよ、澤村サン?」
 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべてやれば、すぐに澤村は顔を真っ赤にした。


 部屋に来たときの顔つきで、とっくに分かっていた。
 音駒と烏野の距離は遠く、近かったとしても領主同士は何もないときにひょいひょい遊びになど行けない。逆に言うなら、会える日は大抵何かしらの事件があったときで、つまりゆっくり語り合い酒を飲む、などということはほとんどできない。だからこそ、事件はあれど多少余裕を持って澤村に久々に会えるこの日が来るのが本当に楽しみだった。
 それはお互いにそうなのだ。だが黒尾が倒れたために面会が少し遅れることになってしまった。
「寂しかったならそう言えって、の!」
 握った手をぐっと引っ張って腕の中へと引き込む。澤村はしばらく焦った様子でもがいていたが、そのうち黒尾の背中に手が回った。
——会いたかった
 その手からそんな言葉が聞こえてくるようだった。




***


これが私にできる精一杯の甘さだった……orz
ほのぼのした二人が好きです。


追記
リエーフの誤字が酷かったので一応
みんなでつくりました
です。
後日談としては、クロさんに手紙もらったリエーフは大はしゃぎした後夜久さんに例のおにぎりを振舞い、結果夜久さんがぶっ倒れます。