BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: ハイキューパロディ短編他 ( No.37 )
日時: 2016/02/16 10:25
名前: 七詩 ◆Ww9Me2u6TE (ID: oompVg8u)

*久々の更新なので、調子にのって少し長くなりました。前々から言っていたリエ夜久です。お題とか無くなりました……すみません。*


※引退後
※ちょうど今の時期くらい
※付き合ってる前提



——こんなに教室って広かったっけ。
 夕日が暖かな光を投げ込み、外からは野球部の賑やかな声が聞こえてくる。3年はとっくに自由登校になっていて、今夜久と共に教室にいる者は誰もいない。見慣れたはずの教室はがらんとして、ひどく寂しそうに見えた。

夜久は一人自分の席であった机に腰を掛け、そっと目を閉じて外の音に聞き入っていた。
 教室からは離れているというのに、野球部の声に混じって、体育館で練習しているらしいバレー部の声が小さく聞こえた。今頃は何をしていただろうか。そろそろ試合形式の練習をしているか、あるいはレシーブ練が長引いているか、だな。
 そんなことをとりとめもなく考え、夜久はゆっくりと目を開いた。そこにあるのは夕日に照らされ閑散とした教室で、シューズの音が響く体育館の光景ではない。そのことに夜久は軽く頭を振り、一つため息をついた。
——俺は、引退したんだ。



リエーフから「せっかく学校に来るんだから一緒に帰りましょ!」とラインが来ていたのは、学校に到着する五分ほど前だった。書類を受けとるだけだから30分もかからない、待つ時間の方が長くなると何度も説明したにも関わらず、結局押しきられ待つ羽目になった。
 相変わらず自由奔放な彼に対し、こちらの意見が通じたことなど片手で足りるほどしかない。かれこれ一時間は待っただろうか。夕日は最後の光を放ち、辺りはだんだん薄暗くなっていた。
 電気を点けようかと思ったちょうどその時、見回りの先生が通りかかり、カーテンと暖房器具、照明の管理を頼まれる。夜久は立ち上がるついでに一伸びし、カーテンを閉めに窓際へ歩みよった。
 外はかなり薄暗くなっていた。野球部たちも少し前に切り上げたのか、校庭には人の気配が全く無い。

——ふと、この光景を見たことがある、と思った。
 ああ、最後だ。最後の試合が終わった時。一二年はほとんどの奴らが泣いていて、でも、黒尾も、海も、俺も、事実を事実として受け止められてなくて。
 そのままぼんやりしながら歩いた家への帰り道、明日の課題を教室に置いてきたことに気がついて、取りに戻って。
 ——誰もいない教室から見た校庭は、こんな風に薄暗くて。

 そこまで思い出した夜久の胸に、急にその時の感情が押し寄せてきた。

——俺は、引退したんだ
——もう、あの輝かしい舞台に立つことは、出来ないんだ

——出来ないんだ……




 きつい練習を終え、慌てて着替えて三年の教室まで走る。リエーフから言い出したことだというのに、練習が少し長引いてしまい、すっかり日が落ちてしまっていた。
(五時には終わるって言ってたのに、コーチの嘘つき……)
 芝山や犬岡には、夜久が今日学校にいることを伝えていない。二人とも夜久によく懐いていたため、黙っていることに後ろめたい気持ちもあった。が、受験だなんだで久しく二人きりの時間がとれていなかったのだから仕方がない。ごめんな、でも分かって、と心中で手を合わせ、リエーフは二人に手を振ってきた。

 階段を一つ飛ばしに上がり、夜久の待つ教室の前で止まる。運動直後で上がった息を落ち着かせ、リエーフはガラリと引き戸を開けた。
「すいません待たせちゃっ……て?」
 そっと夜久に近寄る。夜久は自分の机に突っ伏して眠っているようだった。試しに髪を軽く引っ張ってみるが、返事は一切返ってこない。
「やぁーくさーん」
何度か呼びかけてみるが、完全に落ちているらしく身動(みじろ)ぎすらしない。むー、と頬を膨らませながらリエーフは夜久の顔を覗き込み、そして、
「あ」
——目尻に残る涙のあとに気がついた。



続きます↓