BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

気になるんです。 ( No.12 )
日時: 2016/01/26 00:29
名前: key ◆4JUfxaQUro (ID: PY/2rZoc)

「……むぅ……」

いちごオレに刺さるストローから口を離し、幸村はため息混じりにそんな声を出した。
いつもの明るい顔はどことなく落ち込んでいる。

「どうしたの旦那。やっといちごオレ止める決心着いた??」

珍しく悩み事のあるような顔をする幸村に、前方に座る幼馴染みの佐助はニヤニヤとしながらそんなことを聞いた。

「いちごオレは好物だ、止める訳ないだろう」

「ん〜子供だねぇ〜」

「っな……!」

飲み物がいちごオレで何が悪いのだ、と今すぐにでもとびかかろうとする幸村に佐助はけらけらと笑う。

「じゃあ何があったのさー、またグラウンド覇権のアレ?」

「違う」

「んー、じゃあサッカーでうまくいかない」

「違うっ」

「武田先生がぎっくり腰になって今日からしばらく休みなのを知った」

「ちが……ってそうなのか!?」

「えっ聞いてないの真田の旦那!?……えっとまぁそれは置いといて……
 うーんと、勉強がうまくいかない!」

「違うっ!」

「えぇええぇじゃあ何!?俺様このくらいしか浮かばないよ!?」

「浮かばなくて良いのだッッ!!」

佐助の言葉に素早く幸村は反応した。

「旦那がこんなに隠し通すことなんて無かったのにっ……俺様泣いちゃうっ……!」

手で顔を覆い泣くフリをする佐助を幸村は華麗にスルーする。反応がない。

「ちょ、少しは付き合ってくれても……って、旦那?おーい?」

少し目を話した隙に、幸村の視線が佐助の後方に向いていたのが分かった。

佐助がくるりと体を半回転させて後ろを見るが、特に幸村が気になりそうな人物は居ないように思える。

「……や……の……」

「……矢野?矢野って人が居んの?」

佐助の質問に幸村は首を横に振った。

本当に誰なんだと佐助は?マークを浮かべながら、昼食を口に運んだ。

「……やす……」

「……やす?」

少し前屈みになった際に聞こえた幸村の口からは、確かにそう漏れていた。

『やす』と聞けば佐助の脳内にはポンッと一人の人物が浮かんだ。

改めて後ろを見てみると、確かにそこにはフードの着いた制服が目立つ、彼の姿が見えた。

きっと幸村が捉えていた人物はその人で合っていると思う。

「徳川の旦那がどうかしたの?」

何気ない佐助の質問に、幸村は顔をぼっと赤くした。

「……きっ、聞くものじゃないぞ佐助ッ!!」

「……?」

照れ隠しにか、がつがつと昼食に手を着ける幸村を佐助は不思議そうに眺めていた。

(もしかして……いや、流石にない……よね、うん)

脳内を颯爽と駆ける思考を振り払い、佐助はカフェオレを口に含んだ。