BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

月を見上げて ( No.3 )
日時: 2016/01/12 23:56
名前: key ◆4JUfxaQUro (ID: MPQJ5FJP)

※家康が大1、幸村が高3の設定


____闇夜に浮かぶ、満月。

漂う薄雲を淡く照らし、その周りには小さな宝石のような星が散りばめられている。

東京では見られないようなその美しい夜空に、家康は目を細める。

「……たまには、夜空を見上げてみるのも良いでござろう?」

そんな家康に、隣に座る幸村は言った。

ここは長野県の田舎町にある幸村の実家。かつて二人は、東京にある学園“BASARA学園”で知り合った仲だ。

BASARA学園は校風も悪い訳ではなく、全国的にも規模の大きい為に、より専門的な指導が受けられると将来の夢への希望を抱いて入学する者は全国からである。
なので住んでいる地域が違う生徒たちの交流も盛んで、家康と幸村もその中のひとつだった。

今日は夏休みも兼ねて、家康が田舎にある幸村の実家に訪ねて来たのだ。

「そうだな。東京じゃこういう夜空が見れないから」

根っからの東京育ちな家康は、田舎程の美しい夜空を見たことはほとんどない。

その為か、家康は幸村をはじめ比較的田舎出身者の人達を羨ましく思っていた。

今日見れて嬉しいよ、と家康は付け加えた。

その言葉を最後に、しばらく続く無言の空間。

おもむろに、幸村が口を開いた。

「____月が、綺麗ですな」

辺りが静かなだけあって、その言葉はやけに澄んで聞こえる。

「……まるで、百年後に咲く百合の花のようだ」

幸村の言葉に、家康はそう返した。

「……知っておられましたか」

「お前も文系だし、分かるかなと思ったんだ」

「……家康殿、」

「ん?なんだ?」


……月は静かに、優しく、二人を照らしていた。