BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

さよならの糸 ( No.9 )
日時: 2016/01/16 00:51
名前: key ◆4JUfxaQUro (ID: Ouicm1PF)

※氏ネタだよ!
※ココクンノシリアル…ゲフンゲフンシリアスだよ!

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血に塗られて、動かないままの将。部下には、その将の首を取らせなかった。

眠っていて、揺すれば再び起きてきそうな彼は、もう息途絶えてからしばらく経っていた。

____大阪夏の陣。彼は、その戦で英雄の名を知られる男となる。

……名を、真田幸村と言った。

眠る彼に近づく者が、一人。

「……真田」

いつもの明るく陽気な声は陰り、曇っていて静かに響く。

徳川家康。江戸幕府250年の礎を築き上げた人物として、人々に知られる男。

護衛も何も着けず、家康はたった一人で幸村に会いに来た。

神社の片隅で眠る幸村に近づくと、ひざまづいて頬を撫でてみた。

冷たく固い感触が、命無きことを静かに知らせる。

「……ごめんな」

「伝えることがあって、来たんだ」

家康は幸村に語りかける。

「ワシわな、お前が羨ましくて、お前を好敵手と見ていた。」

幸村は何も答えてはくれない。

「だから、お前を東軍に入れたかった。いつか、お前と一緒に戦ってみたかった。」

____けれどそれは、過ぎた願い。

幸村の体を抱きしめる。彼が生きている間には、出来なかったことを。

「お前といつか、平和な世で話をしたかった。暖かな日向で、二人だけで。」


「何もない、平和な日々を見せてやりたかった……!」

静かに、家康の頬を、暖かいものが伝う。

ぽろぽろと落ちていく涙の粒は、何も伝えてはくれない。

「幸村、ワシはな」

「お前が、好きだったんだ」

生きている間には言えなかった、秘めていた想い。

もう返事を聞くことも、抱き締め返して貰うこともできはしないのだ。

そのとき、どこかから、幸村の声が聞こえた気がした。

『某も、ずっと家康殿を想っていたのでしょう』

冷たいはずの幸村の体が、少しだけ暖かく感じた。

家康は静かに、こう告げた。


「____さようなら」


糸を切るように、家康は幸村から手を離す。

けれど、想いだけは、繋がったままだったのだろう。