BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 魔法少年 ( No.1 )
日時: 2016/03/05 21:17
名前: 赤猫。 (ID: mwz5SFMT)

#1


____願い事……?


突然発せられたその言葉に、ぐっと息をのむ。

私の願い。絶対に叶うことがないと思っていた。

激しく鼓動が脈を打つ。




本当に叶うの_______?





その時の私は、期待半分怪しさ半分でそのものを見た。
いや、怪しさが9割を占めていたかもしれない。


だってそれは………


まごうこと無き鶏だったから。




__時は数時間前にさかのぼる。



「いってきます」

誰もいない空虚な空間に、いつも通り声をかける。
…いや、正確に言えば何かはいるのだが。
そこには、いつも通り美しい肢体を弄ぶ、白蛇がいた。

それには実体がなければ、害も無い。
ただ私の家に住み着いているだけのようだ。

外に出れば、また美しいものが私の目を保養する。

天に向かい、優雅に空を泳ぐ龍や、名もわからぬ2匹の動物が仲良く飛んでゆく姿。
毎日のように見る光景。
だが、最近はその姿を見ることも少なくなった。
昔はもっと草木の間や路地裏に、ひっそりと佇んでいたものだ。

その原因は分からない。

毎日少しずつ、日の光を浴び、消えてゆく姿を何度も見てきた。

私は何もできなかった。

それを眺めているだけの私を、人々は何度も指をさす。

『あのおねいちゃん、何を見ているの?』
『見て、あの子また誰もいないところを見てるわ』
『近寄らないほうがいい』
『何考えてるか分かんないよね』

どうしようもなく、人々の言葉は突き刺さる。
でも、悲しむことも憐れむこともできなかった。

ただただ、憂欝が私の心に降り積もるだけだった。



「やあ!初めまして!」

不意に声をかけられた。だがその声の方向には誰もいない。
私が不信感を抱いていると、
「こっちだよ!下下!」
そこには確かに鶏が羽をはためかせていた。

一瞬思考が停止する。
まって。ここは養鶏所ではない。じゃ、どこからか逃げてきた?この辺りにそんなのあったけ?
あの美しい動物たちに実体は無い。もちろん話しかけられることも無い。
じゃあこれは一体……

私が試行錯誤していると、鶏はおかしなことを言った。
「ねえ君、僕のことが見えているんだろう?」
鶏は小首をかしげる。

いやあたりまえですがな。

この鶏には実体がある。一般人が喋る鶏を見つけたら、どこかの研究所に連れて行かれるだろう。
だが……
丁度そこに笑い声が聞こえてきた。
登校中の小学生だろう。まっすぐこちらに向かってくる。
彼らにも、この鶏の姿が見えているはずだろうが、彼らは私たちに見向きもしなかった。

どうして……?

「おや、一般人に僕らが見えなくても、別段気にすることではないだろう?
 『天眼』の娘よ」

てんがん?目薬のこと……?

「え、キミ何も知らないの?」
鶏の言う言葉全てにクエスチョンマークを浮かべている私に驚いたらしい。
私はこくこくとうなずいた。
「え〜説明めんどくさいなあ。まあお仕事だし、しょうがないか。
 じゃあ、さっそく聞くけど、キミ何か願い事がある?」



____願い事……?


こうして1人の人の子と1羽の鶏が出会ったのである。