BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ふたりでいること 【Episode10】 ( No.12 )
日時: 2016/09/08 20:57
名前: はるたに (ID: DSoXLpvQ)

     【Episode 10】





「栄黎!? 栄黎受けるの!?」
「うん」

 こっちをじーっと見つめてくるなつきに、唯は思わず照れ笑いをしてしまう。
 すると、予想外なことに、なつきはがくっとその場に崩れ落ちてしまった。

「ちょっ、なっちゃん!?」

 驚きの声をあげながら、そっとなつきに寄り添う。肩を優しくなでながら、唯は問いかける。

「ど、どうしたの、なっちゃん? 私が栄黎受けるの、そんなに嫌……?」

 なにか、栄黎に行かないほうがいい理由でもあるのかな。
 なつきの行動に、胸をどきどきさせていると、なつきがうつむいたまま、ぽつりとこぼした。

「あ、あたし……栄黎なんて、無理だよ……」
「…………へ……?」
「あたし、栄黎なんて行けないよっ?」

 勢いよく上げられた顔には、うるうると潤むふたつの瞳があった。唯のどきどきが、徐々に収まっていく。
 半泣きになりながら、なつきはぽつぽつとことばを繋ぐ。

「一緒の、とこ……行きたかった……のに……勝手に、決めちゃう……なんて……」
「なっちゃん……」

 またうつむいて、なつきは声を震わせる。
 なつきの気持ちは、唯もよく分かる。彼女と一緒にいる時間は凄く楽しいし、家族と過ごしているときより、楽しい瞬間さえある。家族といるときより楽しいなんて子と、そうそうないと思う。
 趣味がいっしょというわけではなかったが、共にいる時間が、宝物みたいにきらきらしていた。

(なっちゃんってば……)

 思わず、口元に笑みが浮かぶ。ほんとうになつきらしい理由だ、ショックの受け方もオーバーで……。
 ちいさい子を見るような温かい目で、唯は諭すように語りかける。

「ねえ、なっちゃん」

 唯の呼びかけに、なつきの肩がびくっと跳ねた。
 ゆっくり、ゆっくりと視線をこちらに戻してくれたのを確認し、唯はまず、思ったことを包み隠さず口にする。

「ありがとう、なっちゃん。そんなふうに言ってくれて嬉しい。でもね、なっちゃん。——それはわがままだよ」

 唯のことばに、なつきの動きがぴたりと硬直したように見えた。

「私は、私のやりたいことや目標があって、栄黎を受けるの。それは、なっちゃんが口出しすることじゃないよ」
「ゆい……?」

 目を見開いたまま、なつきは凍りついてしまったようだ。絞り出すような掠れた声で、なつきは唯の名を呼ぶ。
 なにかにおびえるように、瞳を揺らす彼女を安心させようと、唯はにっこり。

「でも、私もまだまだなっちゃんと学校生活、エンジョイしたい!」

 そう言ったとたん、今度は明らかに動揺する。眉根を寄せ、意味が分からないといったように首を傾げる。さっきとは違い、必死でこちらのことばの意図を、理解しようとしてくれているようだ。

「え、えっと……?」
「だって私、なっちゃんのこと大好きだもん!」

 ぴくり、となつきの肩が動く。

「高校も、なっちゃんと同じがいいって気持ちは、私にもある。だから!」

 ぱっとなつきの手を取り、まだすこし潤んでいる彼女の目を、まっすぐ見つめて。

「私と一緒に、勉強しよ?」
「………………へ???」