BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ふたりでいること 【Episode 15】 ( No.20 )
日時: 2017/01/13 03:55
名前: はるたに (ID: DSoXLpvQ)

     【Episode 15】





 8月20日の午前9時。
 きっかりの時間に集合場所に着いた唯は、すぐになつきを見つけた。
 いくらか前に着いていたなつきは、高校の制服姿。イヤフォンで音楽を聴いていたようだ。彼女の肩にぽん、と手を置くと、びくっと身を跳ねさせた。

「おわっ!?」
「えへへ、ごめんね、なっちゃん。おまたせ」
「いや、そんなに待ってないよ」

 へらっとこちらに笑いかけたなつきの笑顔が、以前会ったときと変わらなくて、唯は安心する。なつきの笑顔を見ると、唯の心はなぜだか安らいだ。……まあ、気のせいなのかもしれないけど。
 なつきと肩を並べて、唯はあるきだす。
 ——今日は、12時30分に霧ッ乃中に集まることになっている。
 だが、唯となつきは、早めに集まり、唯の家で遊ぶことにした。高校に入ってから、霧ッ乃中に用事があるときは、基本こうしている。
 ふたりでいるのが楽しいから、できるだけ長く一緒にいようという、唯からの提案だった。
 霧ッ乃中に行くということもあり、ふたりとも制服姿で集合していた。

「今日なにやろうねー」
「あー……15分前に朝飯食べたから、激しい運動パスで」
「室内だから、激しい運動なんてしないよ。Wiiとかやる?」
「やる!」
「なっちゃん、いつもWiiしかやらないじゃん」

 唯がくすくす笑うと、なつきはぶすっと顔をふくれさせた。

「家にWiiがないんだっちゅーの」
「分かってるよ?」
「じゃあ言うなやっ」

 優しめのチョップが額に当たる。
 唯はへらへらして「ごめん」と流すと、なつきは呆れ半分なため息をつきながら、チョップしたところをさすってくれる。
 こころなしか、なつきは唯にすこしあまいキガスル。唯が謝ると必ず許してくれるし、唯が困っていると、手取り足取り助けてくれるし。
 んー、尽くしてもらってる感じ……?

(でも、やってもらいっぱなしは、申し訳ないしなあ……)
「? どうしたの、唯。らしくもなく考えごと?」
「らしくないってどういうこと?」

 むすっとして、唯は聞き返す。
 額をさする手を止めず、なつきはにやにやしながら唯を見下ろす。

「普段ぽけーっとしてるくせに、神妙な顔付きしてるから」
「失礼だよ!?」

 からかわれていることが分かって、唯はくちびるをとがらせた。
 相変わらずなつきはにやにやしていて、額はすりすりしたままだ。

「へーへー。怒るとデコにしわが寄ってブスだねー」
「ブス!?」
「オーバーリアクション」

 けらけらと笑ってくるなつきに、唯はじっとりとした視線を向ける。一方のなつきは、まったく気にしませんという顔で、マンションの階段を降り始めた。