BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ふたりでいること 【Episode 3】 ( No.5 )
日時: 2016/08/20 17:15
名前: はるたに (ID: DSoXLpvQ)

     【Episode 3】





『……って、感じかなあ』
「まじかー! 唯のほう、めっちゃ大変じゃん」
『うん、まあ……。でも、お芝居はすっごく楽しいから。充実してるよ』

 夜の8時を回る頃。なつきと唯は、電話越しに近況を報告し合っていた。無料通話なのをいいことに、既に3時間は話し続けている。

『とは言っても、やっぱり、疲れるは疲れるんだよね……』
「なるほどねえ。それで、久々のオフの今日は、昼の1時までぐっすりだったわけね」

 ちょっと冗談交じりに言うと、唯は慌てたように。

『ご、ごめんね? 遊べなくて……』
「いいの、いいの! 遊べたらいいなー、くらいの気持ちで誘ったから!」

 寝間着のすそをいじりながら、なつきは唯をフォローする。

『ほんとう? 都合がつく日見つけたら、必ず教えるね』
「うん! あたし、基本的に暇だから、唯の予定に合わせるよ!」

 唯が、目の前にいるわけじゃない。

『そう? あっ、でもなっちゃん、夏休みは補習、あるんでしょ?』
「う゛う゛っ……」
『もう、なっちゃんってば。中学のときから、びっくりするほどできなかったもんね。栄黎にも、あと5点ってところで、落ちちゃったし』
「それは言わない約束!」
『ふふ、ごめんごめん。そうだ、今度会うとき、教えてあげよっか? 英語なら任せて!』

 やめてよ。

「えー。唯、ちゃんと教えてくれるのー?」
『もちろん〜。なっちゃんの留年を、阻止しなくちゃだし!』
「唯に教えてもらうのか……不安ー……」
『これでも私、クラス10位にはおさまってるんだからね?』
「いやみですかねえ!?」

 くるしい。

「はああ……自慢されたああああぁ……聞きたくなかったよおおおおおぉ……」
『ふふふ。ごめんってば。今度お菓子あげるから、ね?』
「ほんとー?」
『ほんと、ほんと』
「んー……じゃあ、許す」
『渋々って感じだね。……そんなに、怒らせちゃった?』
「……唯はさっきから、ずいぶん楽しそうだね」
『うん。1週間ぶりの電話だしね♪』

 携帯を耳に当てながら、のんきに笑っている唯を思い浮かべて、なつきは口元を緩める。

「そーだね。あんたがあまりにも忙しいから、電話できないんだけど」
『えへへ……お芝居に夢中な唯ちゃんでーす♪』
「はいはい」

 そのとおり過ぎて、なにも言えないじゃん。

「んじゃ、あたし、もう晩ご飯だから」
『分かった。それじゃ、おやすみ〜』
「うん、おやすみ」

 ぷつっ、と電話が切れる音がして、ツーツーという音が聞こえる。
 なつきは「はああぁ……」と、長い長いため息をつき、携帯を枕に放る。晩ご飯までは、あと30分ある。
 ごろん、と横になり、手で目元を覆う。視界がまっ暗になると、なつきはふたたびため息を漏らし亜。

「今度って、いったいいつ……?」

 1週間前の電話でも、「今度」って言った。
 3週間前のメッセージのやりとりでも、「また今度」って言った。
 1ヶ月前のメッセージのやりとりでも、「今度絶対会おうね」って言った。
 その前も、その前も。あんたは、「また今度」って。
「今度」って……。
 その「今度」って、いったいいつ?

(…………面倒だな、あたし……)