BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ふたりでいること 【Episode 5】 ( No.7 )
日時: 2016/08/24 22:47
名前: はるたに (ID: DSoXLpvQ)

     【Episode 5】




「一切進展なし。むしろ、後退してる気すらしてる」
「そんなに!?」

 大袈裟なくらいに、隼は仰け反る。なつきが呆れ返った目で見やると、隼はしゅん、とちいさくなってしまう。

「わ、悪い……。でも、後退はないだろ。あんなに仲いいんだし」
「……仲はいいかもしれないけど、それだけだよ」
「……?」

 よく分からない、という顔をする隼に、なつきは額をおさえた。

「あんた……天然なの? すっとぼけなの?」
「いや、ほんとに分かんねえ」
「…………」

 あたしも、なんでこんな奴に、わざわざ恋愛相談してるんだっけ。
 そう思わずにはいられない。
 ……信頼できるから、という理由なのだが。

「すごく、すっごく仲のいい《友だち》。ただ、それだけの存在なんだよ、きっと。唯にとっては」

 そう、さらっと答える。
 ちょうどそこに、なつきの注文したパスタが運ばれてきた。軽く会釈をして、そのパスタに躊躇いなくフォークをぶっ刺す。
 パスタをフォークに巻き付けていると、黙っていた隼が、神妙な面持ちで口を開く。

「……そんな、へいきなふりして喋らなくても、いいぞ」
「…………は?」

 予想していなかったことばに、なつきは眉をひそめて、隼を見上げる。なつきの怪訝なっ表情にも、隼は顔色ひとつ変えずに。

「自分は恋愛対象としてみてるのに、相手には友だちとしか思われてないってのは、きついじゃん」
「……分かったような口きくね」

 さっきまでは、天然かましてたくせに。
 ふっと表情を崩し、悪戯っぽく隼は笑う。

「平井のことだしな。だてに中2んときから相談されてないぜ」
「ハイハイ。スゴイネー」
「なんでそんなカタコトなんだよ」

 むすっとした顔になる隼を見て、思わずなつきは吹き出してしまった。
 ころころ表情が変わって、いそがしそう。

「あんた、ちょっと唯に似てるね」
「へ? どのへんが?」

 あほみたいな顔できょとんとして、隼は聞き返す。
 ほら、そういうとこ。
 そんなふうに表情がくるくる変わるところが、まるで唯なの。