BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.1 )
日時: 2017/03/01 00:11
名前: 有夏 (ID: VNRRceKz)

『私はキミの』
Prologue:いつもの場所、違う時間-Side:マオ-


私はひとり、ジメジメする空気が滞る屋上に居る。
いつも一人、いつも独りで。寂しくなんてないし、独りがいいから、誰も寄せ付けない。
この屋上は四方をフェンスに囲まれてて、嫌い。
だって、空が綺麗に見れないから。
今日はこんなにも光芒こうぼう——別名「天使の梯子はしご」と呼ばれる雲の隙間から射し込む光の筋——が綺麗なのに。
雲の隙間から射し込む太陽の光は、いつも世界を綺麗に、いつも世界を平等に照らしてる。
こんなに汚い世界でも、こんなに汚い私でさえも、いつでも平等に照らしてくれる。

「あぁ……」
翼が欲しい。例え、それが"イカロスの翼"のように蝋で出来た翼であっても。
私はあの空を渇望する。
あの雲を突き抜けて太陽を見つけて、そして太陽の熱で身を焦がされてしまいたいと。
そしてそのまま、墜ちればいいの。
私に存在理由なんて無いのだから。
「フェンスさえ無ければなぁ……」
私はフェンスに背中を預け、空を仰ぐ。
視界には、梅雨独特の厚い雲と、その隙間から覗く青い空、そして————フェンス。
フェンスは本当に邪魔でしかない。
どうせ私は此処から飛び降りる勇気なんてないのに。

空は、太陽は、誰にも嘘など吐かずに平等に接してくれるから。
ただただ、私達を見守ってくれてる。
その代わり、誰のことも助けてはくれない。
"太陽みたいだね"ってよく言われる私は、いつでも誰でも平等に嫌って、それでも嘘を吐き続け、誰のことも助けない。
そんな私(太陽)を隠す仮面(雲)がある。
いつも笑顔で、なのに心はズタズタの。

「ねえ、どうして無理に笑うの?」
ずっと気になってたことを、ついに私は問い掛けた。
そしたらキミは目を見開いて「えっ」って驚いてて、私は思わず失笑した。
「どっ、どうして気付いたの?」
戸惑いながら聞き返してくるキミが可笑しくて、笑いを堪えようとしても完全には我慢しきれない。
そして、ふと私は意地悪を思い付く。
「どうしてだろうね?」
キミが無理に笑っていることを私が何故気付いたのか、隠すことにした。
キミが気付いてないのなら、それでいい。
きっと、キミには平和が訪れる。