BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.43 )
日時: 2017/03/22 12:40
名前: 有夏 (ID: U9CqFAX7)

『真実の愛とは? スピンオフ』
Prologue:図書室-Side:藍花-


私の後に恋人となる人との出会いは中学1年の時に放課後の図書室で、相手から声を掛けられた。
「ねえ」
授業でやったところの復習をするのには最適な場所で、静かで一人にもなれるし、暇潰しにもなる。だからここに来てたのに。
「1年生のいずみさんだよね?」
聞き覚えのない声。聞きなれない口調。でも、僅かに視線をあげて見えた胸元のネームプレートに書かれた浜岡 陽向(はまおか ひなた)という名前には見覚えがあった。
「そうですけど、何か用ですか? 浜岡先輩」
私が冷たく小声でそう返すと先輩は驚いたように目を見開く。
そして、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「へえ、ヒナの事知ってるんだ?」
知ってるも何も友達が憧れの人として名前を挙げていたから偶然覚えてただけし。
「名前だけですけどね」
そう応えて再び手元に視線を戻す。
授業用のノートから復習用のノートへ教科書を使いながら授業用より詳しく、解説を加えつつ。
「字、綺麗だね」
…………邪魔されてる。
「忙しいのでお引き取りください」
チラリとも見ずに冷たくいい放ったのに、先輩はいっこうにどこかへ行こうという気配を見せない。
仕方なくそのまま先輩に触れずに私は声も掛けず黙々と復習を進め、二十分もした頃にふと私は顔を上げた。
「————————」
春の暖かい風が窓から入り、頬杖をつきながら外を眺める先輩の髪を揺らした。
黒くて、ショートの髪はサラサラと春の風に靡いてて。
その横顔も綺麗で、見とれてしまいそうになる。
「————風、暖かいね」
見とれなかったのは先輩がそう言ってこっちに視線を向けたからだった。
思わず目を逸らして視線を外に向ける。
「っ……そうですね。春ですから」
空は快晴で、部活をする先輩方の声がする。
なのに、何故か静かに思える。
ここだけが別の世界みたい。
「ヒナさー…春って嫌いなんだよね」
少し寂しげな表情をして先輩は視線を外に戻した。
「必ず、避けられない別れが来るから」
その口調からして、それは先輩の実体験なんだろう。
だから、こんなに寂しげなんだ。
「でも、出会いもありますよ」
何となく、そんな顔をされたくなくて、私はそんな事を言っていた。