BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.45 )
- 日時: 2017/04/15 08:55
- 名前: 有夏 (ID: 3A3ixHoS)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.1:残暑-Side:藍花-
9月上旬。
最近2学期が始まったばかりでまだまだ暑い。
日差しが強いから夏は嫌い。そして秋もこんな調子だから嫌い。
日焼けするし……。
「藍花」
日差しを避けながら廊下の端を歩いていると正面から見知った顔の先輩が現れる。
「……浜岡先輩」
いつの間にか先輩は私を下の名前で呼んでいた。まあ、私も気にしないけど。
不機嫌に先輩の名前を呼ぶと苦笑された。
何でそんなに嫌そうなんだ、みたいな。
「藍花って夏とか嫌いなのか?」
当然のように私の隣に並んで先輩は付いてくる。
「日焼けしたくないんですよ」
別に暑いのとか寒いのとか拘りないし。
どっちでもいいけど、最適な温度が一番いい。まあ、皆そうだろうけど。
「へえ、なんで?」
いや、普通日に焼けたくないでしょ。
そういう目で先輩の方を見ると「?」って顔をされた。
「……黒くなるから嫌なんです」
丁度私より先輩の方が背が高いから日除けになる。
「あと、眩しいので嫌です」
四季の中で一番夏が眩しい。
たまに目が開けていられないぐらいに眩しくて困る。
「へえ、だからいつも日陰に居るんだ?」
教室でも廊下側だし、体育でもわりと長袖とか着てるし、まあ確かに休憩の時は日陰に一人で居ることは多い。
「……まあ、そうですね。っていうか先輩、いつも私を見てますよね」
体育の時視線を感じて振り返ると先輩と目が合う。
「ふふ、まあね」
そして私と話す時はやけに機嫌がいい。
前に先輩同士で話していたのを見かけた時、物凄く先輩は退屈そうと言うか不機嫌と言うか無表情と言うか……。
「変な人ですね」
私と話してて何が楽しいんだろう。
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.46 )
- 日時: 2017/03/24 17:10
- 名前: 有夏 (ID: 6ASHZzNt)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.2:涼しい場所-Side:陽向-
藍花のあとを付いていったら今日も図書室に着いた。
人の少ない図書室。風がよく抜けるから凄く涼しい。
気紛れにヒナは部活を休んでこの涼しい図書室で藍花と過ごしてる。
「……部活サボるのはどうかと思います」
いつもみたいに藍花の勉強を傍で見ていたらそんな事を言われてしまった。
「えー? 何で?」
「真面目な方々に失礼です」
バッサリだな。そこがいい。いや、別にヒナはそういうのが好きな訳じゃないよ。罵られても嬉しくないから。
「正直だね」
そう。正直だから好きなのさ。ヒナの周りに正直な人が居ないからなー。
姉貴とか素直じゃなさすぎる。まあ、姉貴の場合は可愛いからいいんだけど。
「…………毒舌とならよく言われます」
こっちに一瞥もくれずに復習をし続ける藍花を観察してて判ったことがある。
今のは「嬉しいけどそんなんじゃないです」っていう謙遜と照れから来てる言葉。
その前の言葉は話題のひとつとして選んだもの。
人に気を使ってる。けど冷たい印象を与えやすい。
「ははっ、まあ、解らなくはないね」
言った方は藍花の表面だけ見てたんだろうな。
「……ですよね」
あ、今傷ついた顔した。
「表面だけ見るとそう思えなくはないってだけで、ヒナは藍花に理解あるつもりだよ?」
ちゃんと、フォローを入れると藍花はヒナを見上げてきた。
「……………………そうですか」
顔、少し赤くなってる。
嬉しいんだ。
判りやすくて可愛いな。
「ふふ、うん」
夏の風が吹く図書室にはヒナと藍花だけ。
騒がしいのに静かな、暑いのに涼しい場所。
ヒナは、この時間が一日の中で一番好きだ。
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.47 )
- 日時: 2017/03/25 06:59
- 名前: 有夏 (ID: zOrwUnX8)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.3:いつの間に-Side:藍花-
いつの間にか、気付いたら浜岡先輩と一緒にいる事が多くなっていた。
昼休みも一緒にご飯食べたり、図書室行ったり。
…………まあ、先輩が勝手についてきてるだけだけど。
いつの間にか『藍花』呼びだし。
気付いたら違和感無くそう呼ばれてた。訂正とか面倒だから私は何も言わないけど。
「あ……浜岡先輩」
帰りの時刻、体育館の側を通り、たまにちゃんと部活に顔を出す先輩を見かけた。
帰宅部の私とはかけ離れた世界で先輩は青春を謳歌しているように見える。
「……先輩、ホントにバスケ上手いんだ」
先輩はどうやらシュートの練習をしているらしい。
先輩の放つシュートは面白いぐらいにゴールネットを揺らしてた。
何故か先輩がキラキラ輝いて見える。
バスケを楽しんでるなら、何でわざわざ部活を休んでまで私に会いに来るんだろう。
「っ……」
今、目が合った。
そしたら先輩の口許が解りやすく緩む。
しかも手を振ってきてる。
私は小さく会釈をするに留めて帰る事にする。
だって、先輩がこっち見た瞬間に視線が集まったし。
先輩が私に手を振っただけで一部がざわついてる。
人気者なのか何なのか。
まあ、本人に自覚はなさそうだけど。
先輩は、私をどう思ってるんだろう。
私は、先輩をどう思ってるんだろう。
何で先輩は私と過ごすのかな。
私にいい所なんてないのに。
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.48 )
- 日時: 2017/03/26 16:03
- 名前: 有夏 (ID: RARTxK9z)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.4:もやもや-Side:陽向-
ここ最近、ずっとモヤモヤしてる。
原因は判ってる。と言うよりは知ってる。
でも、何故なのかが解らない。
上手く説明しづらい状態でヒナはずっとこのモヤモヤを抱えてる。
先日、藍花が1年生の女子に告白されているのを見掛けた。
相手の子は告白して「返事は後ででいいから」って泣きながら逃げていった。
告白だけでああなるかね?
まあ、そこは今はどうでもいい。
その状況だけでも結構衝撃的だったのに、一人になった時の藍花の顔がとても切なそうな顔をしていたからモヤモヤする。
何であんな顔をしたのか、告白にはなんと答えたのかが気になる。
物凄く気になる。
「…………ああ、先輩。こんにちは」
先に図書室に居てモヤモヤをどうにかしようと色々考えていたら藍花が図書室に着いていつもと変わりなく挨拶をしてきた。
「あぁ、うん」
ヒナもいつもと変わりないように装って応える。
「………………」
本人に訊けばいいんだろうけど、訊きにくい。
告白なんて返事したの?って、訊ける訳ない。恋人じゃないし。
藍花にとったら、ただの先輩だろうし。
「……………………ただの、先輩か」
「……ん、何ですか?」
自分で思った言葉にショックを受けてると藍花が不思議そうに訊いてきた。
正直に、一度だけ訊いてみようかな。
冗談めかせばどうにかなるし。
「藍花にとって、ヒナはどんな存在?」
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.49 )
- 日時: 2017/03/28 18:00
- 名前: 有夏 (ID: XK9MY/AM)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.5:好意-Side:藍花-
先日、ちょうど浜岡先輩が部活でいない時に同級生の女子に告白された。
クラス合同になる時によく会って話したり、二人一組の時に良く一緒になる子だった。
答えは後で、と彼女は泣きながら帰ってしまったけど、私は一人その場に取り残されて急に空しくなって。
そして、無上に浜岡先輩に会いたくなって。
「…………はぁ……」
その後、浜岡先輩がいないの解ってたけど一度だけ図書室に寄ってから帰った。
「…………ああ、先輩。こんにちは」
最近、先輩は教室に私を迎えに来なくなっていた。
でも、図書室には先輩は来ている。
だから、会えない訳じゃない。
でも、少し寂しい。
「……………………」
難しそうな顔をする先輩の正面に座ると先輩が何かを呟いた。
「……ん、何ですか?」
聞き取れなくて聞き返すと先輩は徐に顔を上げる。
「藍花にとって、ヒナはどんな存在?」
冗談っぽく笑ってるけど目が不安そう。
先輩って、こんなに解りやすい人だっけ?
「…………」
逆に、先輩にとって私はどんな存在なんですか?
そう訊きかけて口をつぐむ。
「…………良く解んないです」
急にそんな事を訊かれても、とっさに浮かんだのは『居ないと寂しい』っていう恥ずかしい言葉。
本人に言えるわけない。
「…………」
「…………」
何となく、気まずい雰囲気が漂う。
何か、違う話題に切り替えるべきだと思うけど、何も浮かばない。
「ヒナにとって、藍花は」
ぽつりと先輩が言葉を漏らす。
その先を、私は先輩を見つめながら待つ。
私は、先輩にとって。
「大切な存在」
少し苦しそうな表情で、先輩の心情が読み取れる。
先輩は、私に告白をしているのだと。
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.50 )
- 日時: 2017/03/28 18:45
- 名前: 有夏 (ID: 1tY8Y./l)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.6:気づいたのは-Side:陽向-
最初、藍花に声を掛けたのはヒナの好きだった人に似てたから。
二つ上の先輩で、中学を卒業するのと同時に引っ越してしまった先輩。
入学式の時に目に留まって似てるなって気になって、図書室で見つけて声をかけた。
話してみたら似てたのは容姿だけで、性格は全然違ったけど。
先輩はフワフワして優しい雰囲気だったけど、藍花はちゃんと地に足着いてて少し臆病だった。
そんな藍花を観察してて、話してて、もっと近づきたいって思うようになってた。
藍花はヒナを避けたりしないけど受け入れてる感じもあんまりしなくて。
だから、ずっと気になってた。
そしたらいつの間にか藍花を見掛けると必ず目で追うようになってて。
ああ、ヒナは藍花の事が好きなんだ。
そう気づいたのは、わりと最近。
夏休みの間会う事は一度もなくて、何で寂しいのかなって。
それで、ふと藍花はどうしてるかなって考えてる事が多い事に気がついたから。
だから、好きなんだって事に気がついた。
「ヒナにとって、藍花は大切な存在」
告白だった。
自分から告白をする事なんてあるとは思ってなかった。
あの先輩に対しての好きと、藍花に対しての好きは全然違う。
先輩は私を構ってくれたから好きだった。
寂しさとか紛れて、楽しかった。
でも、藍花に対してはそういうのじゃない。
ずっと一緒に居たい、藍花が居ないと寂しいって。
藍花が告白されてるのを見て、胸が苦しくなった。
「…………」
藍花はヒナの言葉を聞いて俯いてしまう。
多分、告白だって気づいてる。
だからなのか何も言わない。
「…………先輩、私……少し前に告白されたんです」
うん、と相槌を打つと少し間を置いて俯いたまま続きを話す。
「……断ったんです。好きな人が居るからって」
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.51 )
- 日時: 2017/03/28 19:41
- 名前: 有夏 (ID: 1tY8Y./l)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Episode.7:答え-Side:藍花-
「…………」
大切な存在という言葉と、先輩の表情でそれが告白なんだと気づいた。
私は表情を見られたくなくて、俯いた。
まさか1週間の内に二人の人に告白されるとは思っていなかった。
「…………先輩、私……少し前に告白されたんです」
隣のクラスの女子生徒。
あの子は私に告白をしたあと、緊張からか泣きながら帰っていった。
私何かを好きになっても得はないと、いつも告白される度に思ってて、今回も例外じゃなかった。
でも、二つ今までと違った事がある。
一つ目は、人に会いたくなった事。でも誰でも良い訳じゃなくて『浜岡先輩』っていう特定の人物に。
二つ目は、告白された時に胸が痛くなった事。
その理由は薄々気づいてたけど、気づいてないふりをしてた。
だって、私は。
「……断ったんです。好きな人が居るからって」
今まで好きな人なんて出来た事ないし。
なのに、今の私は。
「…………私も、先輩の事を好きかもしれません」
- Re: 百合(GL) 短編(?)集 気紛れ更新 ( No.52 )
- 日時: 2017/03/31 20:34
- 名前: 有夏 (ID: YCTThtwh)
『真実の愛とは? スピンオフ』
Epilouge:貴女の事-Side:藍花-
懐かしいこと、思い出したなぁ……。
「藍花」
先輩、結構心配性なんだよね。
だからいつも私を迎えに来てくれる。
「あ、先輩」
人がゾロゾロ教室を出るなか、邪魔にならないところで私を待っていた先輩。
「帰ろうか」
そうやっていつも先輩は私の手を握る。
温かくて優しい手。
恥ずかしいけど、嬉しいから私は何も言わずに手を握り返す。
あれが切っ掛けで、私達は付き合う事になったんだ。
お互い初恋らしいし。
「藍花、下駄箱着いたよ?」
昔の事を考えてたらいつの間にか下駄箱に着いていた。
「……あ、はい」
一度手を離してから靴を履き替えてもう一度手を繋ぎ直す。
「…………悩み事?」
横から顔を覗き込まれ思わず顔をそらす。
「…………別に……ヒナさんと会った時の事を思い出してただけです」
恥ずかしくて、私は手を繋いだまま少し早歩きをして先輩に————ヒナさんに顔を見られないようにした。
———END———