BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: イナズマイレブンで自己満小説! ( No.22 )
日時: 2019/05/03 08:44
名前: らむね (ID: cvsyGb8i)


鬼道と話をしていると、あっという間に雷雷軒に到着した。運転手に代金を要求されて、鬼道は持っているのだろうかと様子を伺えばズボンのポケットを探り小さめの財布を開いて

「カードでいいか?」
『えっ?』

さすがだ、鬼道。
タクシーでカード払いとは・・・、ホントに中学生かと疑う者も出てきそうだが、あの鬼道財閥の跡取りともなれば皆理解は容易いだろう。さも当然のように聞くのだから

『申し訳ございません、現金でお支払いできますか?』
「現金か・・・」
「持ち合わせがないのか?なら俺が払おう」
「・・・すまんな、豪炎寺。料金は後できっちり返す。領収書をくれ」
「いや」
「?」

現金での支払いだと言われると、財布の中身を見ずに眉間の皺を寄せる鬼道。普通はあまり分からないだろうが、これは困り顔だ。
念のために自分の財布を持ってきていて良かったと思い、自分の上着のポケットから財布を取り出し運転手にお金を渡す。
眉尻を少し下げて感謝の言葉を述べる鬼道は本当に申し訳ないと思っているのが疑わなくてもわかる。運転手から領収書を受け取ろうと手を伸ばした鬼道の手を掴んで下ろす。

「お返しは別の形で受け取りたい」
「・・・フッ、ワガママなやつめ。降りるぞ」

どうやら俺の意図は読めたようだ。領収書を受け取らなかった鬼道は先に車を降りる。俺も降りようと、鬼道の座っていた位置へ腰を移動させると先に出た鬼道が腕を伸ばす。

「ん?」
「肩を貸そう」
「ああ、すまん」
「・・・よし。出すぞ、左足をぶつけるな」
「ああ」

鬼道の肩に左手を回せば、背中側から腰へ鬼道は右手を運び、少しやりずらいのか左手で俺の左腕をしっかり自分の首に固定し鬼道の右肩が俺の左の肩甲骨に付きそうなほど密着する。
普段そんなに意識して密着しない分、胸が高鳴るのを感じる。鬼道は俺の左足を気遣ってくれているが、鬼道のドレッドヘアーが目の前にあって微かに香るシャンプーと香水の匂いに吸いつきたくなる。
準備の出来た鬼道の合図に従って軽く左足を浮かせ、右足で車の底を蹴る。鬼道は俺の左腕を肩で抱えながら右手で僅かに浮いた身体を一気に車から引き出した。
鬼道の協力のもと、すんなりタクシーから外に出られて目を見開いて驚く。二人共、負担の軽い方法で素早く出られる方法なんだろう、そんなことを中学生がスマートにやるなんて頼もしい、さすが鬼道だ・・・惚れるな。
そんなことを思っている間に車から鬼道は松葉杖を取り出し運転手に礼を言う。

タクシーが去ってから鬼道から手渡された松葉杖を右手で受け取り、左腕は鬼道の肩に回したままで鬼道も右手で俺の右腰を支えている。

「・・・豪炎寺」
「ん?」
「いつまで俺の肩を借りるつもりだ、そろそろ松葉杖を使ってくれ。お前の半分の体重が俺に加わっているんだぞ、重い」

そういいつつ、自分からは離そうとしない優しさ。俺は怪我人だからな、邪険には扱えないんだろう。そんな鬼道に甘え半分、悪戯心半分で構いたくなってしまう。

「雷雷軒までもうすぐじゃないか、このまま運んでくれないか?」

眉を寄せた鬼道が一瞬ムッとして口角を上げればからかう口調で返事がくる。

「なら、おぶってやろう。その方が右足にも負担がくるまい」
「!・・・そうきたか」

所謂おんぶの事だ。この歳で同じ年の少年におんぶされている光景を誰かに見られる恥ずかしさは耐えられない。渋々、鬼道の肩から腕を松葉杖へ移動させる。その間も俺が倒れないように身体を支えてくれる鬼道。当たり前のようにやる俺の足を気遣う行動は、幼い頃兄として妹の音無春奈を一人で支えていた良心からか、鬼道家に来てから礼儀作法を学び身についてしまったものだからか、どちらにせよ鬼道らしくて頼れる存在だ。
そんな鬼道が甘えられる存在に俺はなりたい、鬼道が安心して心を預けられるような人間に。