BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: イナズマイレブン!ブレイク組中心 ( No.7 )
日時: 2019/01/16 13:21
名前: らむね (ID: P747iv5N)

【握手】
灰→鬼
ーーーーー

イナズマジャパンとして選ばれた俺達は一回戦が日本で行われることが決定し、合宿所へ専用のバスに乗って向かった。

バスの中はガヤガヤと意外と騒がしく、稲森や円堂さんの声が主にデカく聞こえてくる。円堂さんの発言にその弟子みたいなやつはオーバーリアクションで聞き取れなかった言葉を相手に伝わるように声は更に大きくなるが誰も止める者がいない。

突然右隣から声をかけられる。

「灰崎、富士山が見えるぞ」

バスの中は騒がしい筈なのにコイツの声はよく響く。声に顔を向ければ俺を見て窓の外へ顔を向けた鬼道の視線を追うように移動中のバスの窓から見えた外の景色に大きく富士山が映っている。
あまりの大きさに目的地は近いのかと思うと同時に鬼道は富士山を生で見たことが無いのか?いや、こんなに近くで見たことがないのか?とすら思えてくるほど鬼道が富士山を見て気分が上がっているのだろうと感じた。

「アンタ、富士山見ただけでテンション上がってるのか?フッ、子供っぽいとこあるんだな」

半分挑発気味に言った言葉は「こんなに近くで見たことは無いからな」とすんなり受け入れられて返す言葉がなくなり、適当な相槌をうって、鬼道とは反対側を向く。通路側に座る灰崎は左斜め前の席に座ったチューリップ頭の豪炎寺が目に付く。

「(豪炎寺か・・・鬼道は)」
「豪炎寺が気になるのか」
「ッはあ!?変な言い方すんじゃねえよ!別に、そんなんじゃ・・・」

鬼道はどう思っているんだろうかと聞こうとした途端に耳元から声がして、小さく声をかけられたのに驚き過ぎて俺の声がデカくなっちまう。否定しようにも見ていたところを見られてはなんとも言えず。
黙った灰崎に鬼道は優しく笑み、話しをした。

「豪炎寺は元雷門のエースストライカーだしな、FWなら誰しも気に留める選手だろうな。俺からすれば豪炎寺がチームに居る存在感は安心出来るし、とても頼りになる。」
「・・・・・・(鬼道にそこまで言わせるのか)」

言っても鬼道の強さは俺自身サッカーを教わる者としてピッチに居るだけでかなり心が救われるというか、心強く感じているのだ。だが、そんな鬼道が俺と同じFWの奴を誉めているなんてなんだかモヤモヤする。
俺の気持ちなんて見えていない鬼道は予想外なセリフまで吐く。

「まあ、アイツのシュートの強さは身を持って知っているだろうがな」
「・・・なァ?!チッ・・・掘り返すんじゃねえ!」

木戸川戦で俺がGKをしていた時に豪炎寺のファイアトルネードを受けた話を持ち込みやがった。急に消したい過去を持ち込んでくる鬼道を見やればニヤニヤとからかうような笑みを浮かべていて、俺が何も言い返せないのも見透かされているようで悔しくて舌打ちを漏らす。コイツにだけは弱みを握られたくねえな、と思う半分、コイツになら弱みも何でもない会話に紛れて話してくれて気にも止まらなくさせてくれるんだろうなと思う半分の気持ちで熱くなった顔を鬼道に見られまいと、そっぽを向くついでにまた豪炎寺の方を見るハメになった。
俺の気持ちに敏感に感じてくれる時もあればこうやってなかなか気づけない所もあると人間味があると思う。
鬼道は薄く笑って俺との会話を終わらせた。

「挨拶も兼ねてあとで話してみるといい」

鬼道が俺を気にかけていることが少し嬉しくて、それが悟られないようにと適当に返す。

「へいへい。」

それからバスが停車するまでそれ程時間は経たなかった。