BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 友人と恋人の境界線 ( No.14 )
日時: 2019/02/26 20:40
名前: キジ (ID: osQJhSZL)

第5話「嘘と本音」



放課後、旧校舎裏へ行くと佐野は既に来ていた。白いTシャツに上下ジャージ姿で前を開いた上着のポケットに両手を突っ込んだ状態で振り返り、俺を見つけると真剣な顔をするがそれも一瞬でニヤケ面に元通り。

「で?話ってなんだよ」
「……」
「ンだよ、辛気臭え面しやがって」

佐野とちゃんと会話を出来るが、聞きたいことは聞けるか不安になる。だが、話してみなければ謎は解けない、松江が見守ってくれている、篠塚も背中を押してくれた。ここで引いていてはダメなんだと歯を食いしばる。
目の前で佐野が問うた質問に返さない俺に後頭部をかいてイライラしている口調になっている。
俺は小さく深呼吸をして、単刀直入に聞いてみた。

「…お前は、俺のことをどう思っている」
「は?質問かよ、つか何だよその質問」
「…お前は、何故俺にキ」
「人に聞くより、まず、自分はどうなんだよ」
「なにがだ」
「八木ちゃんは、俺のことどう思ってんだよってコト」
「また話を逸らすのか?」
「逸らしてねえよ。正しいこと言ってるだけだろ?なあ、俺のこと、どう思ってんだよ」

いつの間にかすぐ近くに来ていた佐野は俺の顔をのぞき込む。俺の眉間にシワが寄るのがわかる。どう思っているか、そんなこと考えもしなかった。いや、考える必要がなかった。佐野のことなどどうでもいい、忘れたい過去も思い出してしまう、出来ることなら関わってきてほしくない、そう強く思ってしまうからだ。ただ、本人を前に直球で言って良いものか迷うのだ。人間関係では社交辞令というものがあるのだ、どう答えるべきか俯いて考える。

「八木ちゃん」

ふと、甘い口調で呼ばれて佐野に頬を撫でられた。
ゾッと悪寒がして、あの時のトラウマが蘇る。
俺は反射的に佐野の手を叩き払った。辺りにはパァンッと乾いた音が鳴る。顔を上げて佐野を見る。スカした顔の佐野も俺を見ている。佐野を睨みつけながら恐怖心に震える体を誤魔化すように棘のある言い方をする。優しい言葉なんて今の俺には思いつかなかった、だから思った事を告げた。

「俺は、お前のことなんか大嫌いだ!あの過去は消し去るつもりだった。なのに貴様はノコノコと俺の前に現れた。訳もわからないキスなんかをしてきて挙句には俺の聞きたくもなかったセリフを易々と口にする。俺はお前の事など一瞬たりとも考えたくないんだ、今後もお前と関わっていおうとは思っていない」

思いの種をぶつけられた気がした。言葉にすると自分の本音がスッと体に染みてきて、改めて理解する。口から出た言葉によって落ち着いた恐怖心は心に留め、改めて本題といった形で佐野を呼び出した要件を云った。

「お前と話し合う気が無くなった。改めて要件を言おう、俺と絶縁してくれないか」

俺の言葉を聞いて佐野は暫くすると口角を上げて吹き出し、腹を抱えて笑った。