BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 友人と恋人の境界線 ( No.15 )
- 日時: 2019/03/01 10:14
- 名前: キジ (ID: WVWOtXoZ)
「ぷっ!くっ、ふははは!くくっ、ぶふっ、ちょっとたんま!」
「……なにがおかしい」
「ははははっ!いや、マジ八木ちゃんやっぱ面白いわー」
急に笑い出した佐野は、その言動に引いて後ずさり訝しげな表情を浮かべているであろう俺にニヤケ面をしたまま応える。
「本当にそう思ってんのかよ?俺と絶縁?忘れたい過去…ねえ?」
「…言いたい事があるなら言え」
「じゃあ言わせてもらうけど、八木ちゃんは過去のトラウマを繰り返したくないだけなんじゃねえの?俺がまた居なくなるのが怖いんじゃねえの?」
「お前の事などどうでもいい」
「本当にそうかよ?だったら、アイツらか?」
「アイツら?」
「仲良くやってんじゃねえか、スポーツ推薦の連中とよォ」
佐野の言う“アイツら”とは松江と篠塚のことだろうと分かったが、何故今あの二人が出てくるのか分からない。
「お前には関係ないだろう」
「あ?…はあー、随分と唆されちゃって」
「どういう意味だ」
「アイツらに裏切られたくねえからアイツらと一緒に居ること選んでんだろっつってんだよ」
「松江と篠塚はそんな奴じゃない!」
「うっせえ!…いけすかねえ奴の名前なんか出してんじゃねえよ」
何なんだ一体。佐野は後頭部をかいてみるみる怒りのボルテージを上げているが理由が全く分からない俺もただ怒りを目前にして何だか憤りを感じる。
佐野は落ちていた空き缶を蹴り飛ばす。空を見上げて一息つく。落ち着いた声音で言いながら俺を見た。
「ジョーダンだから、アレ」
「冗談?」
「八木ちゃんにキスしたの。八木ちゃんの反応が面白いからからかってただけ」
「なに?」
「恋人じゃあるまいし、いくら親友と言えどキスはしねえだろ。八木ちゃんが気づくか試してたけど、どうせアイツらに気付かされたんだろ?」
「……なら、変な感情があった訳では無いということか」
「変な感情?」
「恋愛感情だ」
「…ああ、ねえよ。あるわけねえだろ」
「そうか」
俺は胸をなでおろし安堵のため息がこぼれた。やっと理解出来た気がする。佐野はまた俺と昔のように関わりたかったが俺が成長する上で心変わりしていないか不安になり試していただけで、俺の反応が良かったから嘘だと言いづらくなっていた、ということなんだろう。なんて不器用な奴なんだ。そう思うと何だか目の前にいる佐野が小さな子供のように見えて可愛いじゃないかと口に手を当ててクスクスと笑う。それに気づいた佐野は一瞬目を見開き、頬を赤らめそっぽを向く。
「何笑ってんだよ…」
「ふふ、いや、全ての謎が解けた」
「謎?」
「ああ、お前は俺と元の関係に戻りたかった。そうだろう?それで俺があの時のまま、お前の親友に相応しいか試していた、違うか?」
「…ああ、全部そうだよ。見事合格ってわけだけど、俺とは絶縁…なんだっけ?」
「撤回しよう、初めからそういう話なら問題ない。早く言ってくれればいいものを」
「……言えるわけねえだろ」
「なるほど、これが俗に言うツンデレというやつか」
「はあ?!ちげえだろ!…バカじゃねえの」
篠塚の言う通り話してみなければスッキリした。問題も解決した。佐野の肩に腕を回して肩を組めば少し高くてイラつくが俺も佐野をからかえる立場となれて少し嬉しい。昔とは少し違うような友達の在り方だとしてもフラットな関係でもいいだろうと思えた。
「……全部嘘だよ」
ボソッと聞こえたそれに、これまでの反省の意が込められているようで素直に謝れない佐野に笑いながら「はいはい、そうか」と返してやった。