BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 友人と恋人の境界線 ( No.17 )
- 日時: 2019/04/18 23:47
- 名前: キジ (ID: LaqAx/EG)
佐野は昼食を教室へ忘れたようで「鈍臭いやつだな」と嘲笑ってやると「テメェが急に来て連れ出したんだろ」と叱りを受けた。
それに松江や篠塚は「まるで駆け落ちする二人をみるかのよう」と比喩したが少し意味が分からなかった。
篠塚が間食用にと持っていたクリームパンを佐野に譲った。佐野は甘いのは苦手だと愚痴たれたがそれしかないと言われるとぶつぶつ言いながらも食べていた。佐野が言わない代わりに篠塚へ礼を言うと佐野は「俺は子供じゃねえぞ!」と怒鳴られた、松江と篠塚と三人で笑った。
こういうのも悪くない、そう思えた。
佐野が少し離れた所でパンを食べ始めて、松江と篠塚と再来月行われる文化祭の話をした。
自分のクラスで何をやるのか、それに必要な役割と材料、組み立てる時間を考えると今朝HRで文化祭について教師から話があったのは良い頃合だと思った。
文化祭では舞台の部、展示の部、出店の部で最優秀賞、優秀賞になったクラスには賞状と担任から差し入れと言う名の褒美があるらしい。褒美が何かは分からないがそれ欲しさに本気になる生徒は多く居る。
それについて何がやりたいかを松江は恋に浮かれた表情で上を見上げ、顔に両手を当ててポロポロと願望や欲求を口走る。
「舞台とかいいよなー、派手に暴れて敵を倒す!みたいな」
「…物語が見えてこないが、いいんじゃないか?スポーツ学科は特にキレも良いだろう。構成さえしっかりしていれば優秀賞も目ではないだろう」
「最優秀賞じゃないのかよおー、あ!でもカフェとかでもいいなあ、外でテント張って焼きそばとかたこ焼きとかでもいいんだけどさ、女子にウケるのってカフェが定番だろ?」
「カフェか…確かに甘い物が好みの生徒は多いだろうな。屋台と違ってスイーツや軽いドリンクなら手軽に作れる上に油の汚れや臭いが服に着くことも無いからな」
「だよなあ、何希望しようかなー?」
「八木は詳しいな」
「文化祭をするだけで褒美が貰えるというのは少し興味があるからな、賞を取るには物事を色々な視点から見て探る事が重要だ、また出店や演劇で被るような事があると大変だからな、意見はなるべく聞いておきたい」
「ほう、八木は何かやりたい事はあるのか?」
クラスで話し合いがあった訳でもないのに井戸端会議は止むことを知らない。松江が頭を抱え悩んで俺と松江の会話が終わったと思えば篠塚は呑気に入ってくる、至って普通に返せば篠塚からの質問に頭の中で質問を繰り返した。
やりたい事?そういえばそんなに考えたことは無かったな。褒美に興味があるだけで俺自身は特にやりたいことは無い。篠塚からの予期せぬ質問内容に少し考えるが、ふと思い立ったものを言ってみる。
「俺は、展示だな。古風なものを使った手作りの物を展示して一つの言葉にする、なんてのはどうだ?」
「古風なもの?」
「ああ、糸を使ったミサンガやマフラーなど手編みなものから折り紙を使った作品、手先に自信が無いものは絵画や自信のある一枚の写真、なんてのもいいだろう」
「なかなかロマンチックなんじゃないか?」
「でも一つの言葉にするって頭良いやつじゃないと分かんねえんじゃないか?八木や篠塚なら分かってもさっ…」
頭脳偏差値の低い松江は俺と篠塚には謎の解ける面白い問題でも謎が解けない松江のような奴らには到底理解できない上に楽しくないだろう。ムスッと頬を膨らませてわかりやすく拗ねる松江に考え済みのことを答える。
「そういった場合に作品のタイトルを一文字だけ空けてそこに入る言葉を、最終的に集めて言葉を繋げるパズル形式でもいいんだがな。」
「ジグソーパズルのようなものか」
「おお!それなら楽しいかもな!スッゲー!八木は天才だな!」
「あくまで願望の話だ。それだとやる事は多いし時間もかかる、あまり纏まっていない要望を適当に言ったと思ってくれて構わない」
「適当でもそこまで考えられるのはスッゲーよ!」
「文化祭、楽しみだな」
「ああ」
「おう!」
篠塚の呟きに似た問いかけに俺と松江が殆ど同時に返事をするとタイミング良く、昼休憩を終える鐘が鳴った。三人で居る時間は楽しく、あっという間で時間を忘れて話してしまうから大体が予鈴の鐘で会話を終わらせる。
三人で屋上を出て階段を降りながらも話をする。
二人と別れ教室に戻って気がついた。佐野の存在を忘れていたことに。