BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 友人と恋人の境界線 ( No.2 )
日時: 2019/02/07 15:08
名前: キジ (ID: H65tOJ4Z)

第1話「シンユウ」

篠塚と松江はスポーツ学科、俺は普通科だ。佐野は普通科の別のクラスに居たが同じクラスメイトと喧嘩沙汰になり、俺のクラスへ来た。
俺は過去のトラウマ以来、整った顔立ちを隠すために目を見られないサングラスのような特殊なメガネをかけていた。顔の半分を殆ど隠しているのによく分かったものだと思う。

それにしても、俺に手をあげてからも他のヤツにまで手をあげるとは何も変わっていない。大したクズだ。篠塚や松江と同じ人間と思えない人間の恥晒しだな。

ホームルームを終えると、トイレに行こうと席を立つ。トイレと廊下を分ける扉のノブを持って横にスライドして開けようとすると扉は動かない。
疑問が湧く前に声をかけられたのだ。


佐野は扉が開かないように扉に足をかけてニヤリと意地汚い笑みを浮かべている。
コイツと関わりたくはない。思い出したくないのだ。顔を逸らしてノブを両手で持つ。

「足を退けてくれないか」
「あれ?オレの事忘れちゃった?ンなわけねえよなァ?」

俺を挑発してくる佐野。昔の俺じゃない、簡単に動揺なんてするものか。

「フッ、高校生にもなって他者との意見のスレ違いに啖呵を切らし暴行沙汰で移動させられた佐野優馬だろう?」
「アアン?」
「邪魔だ、その短い足を退けろ」
「八木ちゃんさァ…チョーシのッ」

まんまと俺の挑発に乗った佐野が俺に寄ってくると同時に扉から足が離れたのをチャンスにして扉を開けてトイレに入り素早く閉める。佐野が何を言おうとしてたかなどこの際どうでもいい。
とにかく二人きりにならないことだ。

そんな願いはあっという間に砕かれる。

放課後、松江と篠塚を待つために次の授業の予習をしながら教室に残っていた。パッと壁がけ時計を見ると17時を少し回っていて俺の前の席に佐野が座って俺の方に体を向けて俺と目が合った。
佐野の席は俺の前の席ではないのに何故そこに座っているんだと眉間にシワがよる。
佐野は口角を上げながら問う。

「オレの事、避けてんだろ?」
「なんのことだ」
「知らばっくれんなよ」

もう一度、ノートに視線を戻してシャーペンを動かす。松江達はまだかと焦りが募る。俺の机の肘を置いて前のめりになり俺との距離を詰めてくる佐野。ここで引いてしまったら負けたも同然。こんなヤツに負けたくはない。俺も顔を上げてお互いの顔の距離10cmでお互いの視線を交わす。

ものの数秒だったのかもしれないが数分に感じた。

メガネをスルリと取られたかと思うと唇に柔らかく温かい何かが触れた。それも近くにあった佐野の顔で理解した。