BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 友人と恋人の境界線 ( No.7 )
- 日時: 2019/02/14 09:18
- 名前: キジ (ID: H65tOJ4Z)
第2話「夜空への願いごと」
「はぁー、俺たちスポーツ科が普通科と一緒の教室だったらなぁー」
「それはどういう意味だ?松江」
「だって八木を待たせるのも悪いし」
「俺が勝手に待っているだけだ、それとも俺と帰るのは嫌なのか?」
「違う違う!そうじゃねえって!」
下駄箱で靴へ履き替え、松江と話す。篠塚は何も言わないが着いてきてる。話しながら学校から出て俺を真ん中に挟む形で二人は歩く。左側に居た松江は俺の発言に慌てて否定して、数歩前に出ると振り返り夕日を背中に両手を広げた。
「もっと八木とも一緒にいたいってことだよ!」
「…一緒に?」
「おう!教室が一緒ならもっと話もできるし、一緒に帰る時間だって作れる!な、篠塚!」
「ああ、そうだな」
松江の言葉に篠塚も笑顔で頷く。松江の言葉はとても嬉しかった。俺と篠塚と帰りたいといった言葉は佐野のような妙な独占的なものには聞こえなかった。
だが、いくつかの難点を考えていないような発言に若干呆れつつも当然のことのように言う。
「だが、お前達と俺とでは学科が違うだろう。学科が違うのに教室が同じになることなんてあるのか?仮に普通科とスポーツ科が同じ教室で授業を受けていくことになるとしても普通科は5クラスあるんだぞ?お前達が俺と同じ教室になるとは限らない」
「うーん、なんとか奇跡起きねえかなー」
「奇跡が起きたとしてもお前達はスポーツ科だからな、部活動があるなら俺と下校するのだって難しくなってくるだろう」
「なんでそんなに俺たちを突き放す言い方すんだよ」
「事実を言ったまでだ」
俺の発言に膨れっ面になる松江、言い過ぎたと心では反省するが間違ったことは言っていないし、俺も松江達とは一緒に居たいからな、そこまで強く言っていない。
俺の目前に歩んで来た松江はまゆを八の字にして、懇願するように言ってきた。
「なあ!八木も部活一緒にやろうぜ!」
「…言ったはずだ、高校になったら勉学に集中すると」
「八木は、いっつも満点だし、学年もトップだし、いいじゃん部活ぐらい」
俺の家庭環境は一般のものとは違う。何でも頭脳ではトップでなければならないのだ。義父さんのお陰で生活が出来ることを思うと義父さんの言うことは絶対になっている。
中学の時、俺たちは三人ともサッカーをしていた。部活と勉学を両立出来ない俺ではないが義父さんに勉学に集中しろと言われれば断る理由は無かった。
それを知っている松江は唇を尖らせて拗ねる。
夕日も姿を消して辺りが暗闇へと包まれてきた頃、俺たちの帰路の別れ道が近づいてきた。道が三つに別れている所だ。丁度三人がそのそれぞれの道に帰って行くことを知ってから俺たちはそこで毎度別れを告げることにしている。
空を見上げた松江が指を指して叫ぶ。
「あっ!流れ星!願い事しなきゃ!八木と同じ教室になれますように、八木と同じ教室になれますように、八木と同じ教室になれましゅように!あ、噛んじゃった!」
両掌をすり合わせて大声で願い事を唱える松江を見て篠塚も合掌して目を瞑り俯く。唱え終えたら、しっかり三回願えなかったと松江は口に手を当てる。
表情のコロコロ変わる松江に飽きが来そうにはない。
俺も顔を上げて空を見上げた。暗闇に光る星たちが大きいものから小さいもの、集まってる所や疎らになっている所、雲に隠れている所、時折飛行機の光まで。
流れ星は見えなかったが目を閉じて流れ星が通ることを想像しては、俺もコイツらとは同じ教室になりたいな、と願った。
それからすぐに俺たちはアノ道で手を振りそれぞれの家へ帰った。
そういえば、篠塚は殆ど喋っていなかったなと思ったが気にしないことにした。