BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 友人と恋人の境界線 ( No.8 )
日時: 2019/02/14 22:46
名前: キジ (ID: H65tOJ4Z)

第3話「相談」前編

「ういーっす」

翌日、二限目が終わってから鞄を片手に佐野は教室の扉を足で開けて挨拶しながら自分の席に着く。顎や頬に痣と擦り傷が出来ている。喧嘩をしてきたのだろうと皆が思い道を開け距離を置く。同じ不良共がヤツに話しかけても「うっせえ、話しかけんな」とメンチを切る。完全に一匹狼タイプだ。

三限目が終わり四限目の授業で使う資料を取りに来るよう教科担任に言われていた俺はすぐに教室を離れた。

「じゃあコレ、よろしくね!」
「はい」
「私も授業までには行くから皆に配っておいてくれる?」
「わかりました」

綴られたプリントの束を両手で持って教室まで風で飛ばないように滑り落とさないように慎重に、授業に遅れぬようなるべく足早に向かう。
階段を登り終えた所で声をかけられる。

「ンだよ、パシられてんの?八木ちゃん」
「…佐野か、何か用か」

佐野と二人きりになりたくはないが、廊下に生徒は居なく俺たちのクラス以外は移動教室やら体育で外に行っていて俺たちの教室はこの階の一番奥ときていて、今は二人きりなのだ。
二人きりになりたくないのは、コイツが何をしてくるか分からないからだ。今は両手も塞がっている。内心焦っているがポーカフェイスを崩さず聞き返す。

「手伝ってやろうか?」
「…何?」
「俺がソレ持ってやろうかって」

俺の前に出てきて道を塞ぐ佐野に近づかない為に足を止める。佐野は笑顔で俺の手の中にある重い資料を運んでくれる提案をしてきた。
なんだ、意外と優しいところもあるんじゃないか、と少し嬉しくなり運んでもらうのは申し訳ないが手伝ってくれるのは有難い。少しは見直したぞ、佐野。
俺は照れながら資料を前に出す。

「すまないな、少し重かったんだ。手伝ってくれて助かる」
「キスしてくれたらな」
「は?」
「八木ちゃんが、オレに、キス、してくれたら手伝ってやるよ」

前言撤回だ、このクズめ。
ご丁寧に自分の唇まで指で指してココにしろとでも言っているようだ。

「冗談は顔と態度だけにしろ」
「待てよ、八木ちゃん!」
「!……あ」

俺は聞かなかったことにして佐野の横を通ろうとすれば二の腕を掴まれ強く引かれる。驚いたのと強く引かれた事により片手を離してしまい、持っていた資料がバサバサと音を立てて廊下に散らばった。
佐野はため息を零して床に広がる資料を丁寧に拾い始める。

「あーあ、八木ちゃんってばドヂだねェー」
(誰のせいで落としたと思ってる)
「ま、俺は優しいから拾ってやるよ。八木ちゃんの為だしな」

資料は床についてしまった面を軽く叩いても付いた汚れは完全には落ちない。落とさぬように慎重に運んできたのにまるで俺が悪者扱いだ。挙句の果てには俺が今一番聞きたくない言葉をヤツは吐いたのだ。

「ほら、八木ちゃんは俺の親友だからな」
「……貴様が持って来い」

握る拳に上がる肩、怒りを抑えるために食いしばった奥歯がかけてしまいそうだ。上記だけ告げると俯いたまま佐野に背を向けて教室へ足早に向かう。
俺を引き止める声が聞こえた気がしたが聞こえぬフリをした。

四限目が終わり、佐野が呼びかけてきたが咋に避けて昼食は松江と篠塚と中庭で食べた。