BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 友人と恋人の境界線 ( No.9 )
日時: 2019/02/14 23:55
名前: キジ (ID: H65tOJ4Z)



「んでボールくれ!って叫んだら俺の所に武田が投げたボールがこう、グワーッて…違うな、こうビューンってきて俺がバシュッ、スッ、パサッ、トンッて感じでよ」
「八木の弁当の卵焼き美味しそうだな」
「旨いぞ、食べてみるか?篠塚の弁当のそのウインナーも珍しい形だな」
「ああ!タコさんウインナーだ!交換しよう!」

弁当を広げて三人で輪になるように座り、松江は身振り手振りで午前の授業に行った体育での出来事を話しているが後半は擬音が多くて理解出来ない。それは中学の頃から変わらない。武田からボールを貰った、という少ないヒントだけで何の話か大体は予想がついた。松江と篠塚のクラスに武田は一人で、ヤツはバスケ部のエースだ。大方、武田から受け取ったパスをカッコよくシュート出来たって事なんだろう。
篠塚も松江の扱いには慣れているから松江が会話中に俺の弁当を覗き込んで話しかけてくる。
俺も篠塚の弁当を見て物珍しいタコの形をしたウインナーに食感が気になると告げれば真っ黒い篠塚の瞳に光が現れ口元にも笑みを露わにする。自信満々に「タコさんウインナー」なんて、イケメンのコイツには不釣り合いな言葉をキラッと星が出そうなドヤ顔で言う篠塚に、つい口元に手を当てクスッと笑ってしまう。

いそいそと弁当の具を自分の箸で交換する篠塚と松江の話を聞いているなら妙なタイミングで笑った俺に気づいた松江がまた頬を膨らませ大声で文句を言う。

「ああー!なあ!二人共ちゃんと話し聞いてんのか!?」
「ん?ああ」
「聞いてる聞いてる、それで?試合は勝てたのか」
「それがさ、バーッてきて俺たちもキュッてなったんだけど安田がスッてしたらピーッて鳴って…」
「勝てたのか?」
「おう!ギリギリだったぜー」
「そうか、良かったな」
「ああ!」

俺から貰った卵焼きをモグモグと口を動かしながら頬張ってる篠塚は返事だけしてそれ以上は話さない。松江の話は更にややこしくなったが、どうやら勝てたようで誉めると嬉しそうに表情を緩ませた。毎回思うがニッと笑う松江の顔はまるで太陽のように眩しいぐらい幼い頃から変わってないであろう無邪気な笑顔で、目が霞む思いだ。

「あ、そうだ!八木、今日は俺バレー部に助っ人で呼ばれてるから一緒に帰れないや、ゴメン!」
「そうなのか?」
「俺も、サッカーあるから。すまない、八木」
「いいさ、気にするな」

松江はなんだかんだ大振りな競技なら得意でよく色んな部から助っ人を頼まれ、本人も多種多様な競技に夢中になれるから望んでやってることに俺が咎めることは無い。
篠塚はサッカー部のエースだ。昔からサッカーでは得点王で今でも一年なのにFWで戦力となっているようだ。好きなサッカーを続ける篠塚に俺と一緒に帰る為にソレを辞めてくれなんて烏滸がましいだろう。
申し訳なさそうに謝る二人に俺が焦ってしまう。気を使ってほしくない、第一、俺は一人でも帰れるからな。そう自信を持って言いたいがコイツらと帰れない寂しさがあるのも事実でそれは言わない事にした。

昼食を終えて五限目開始前に松江達と別れ、教室に戻る。
教材を机の中から引き出すと小さく折り畳まれた紙が出て来た。見覚えの無い紙に軽く首を傾げ、紙を開くと「放課後、旧校舎裏に来い」と書かれていた。差出人の名前が無い。

差出人が無ければ間違って入れたのだとしても、それが告白の可能性もある。不用意に入れた人を捜すより直接本人に会って間違いは訂正した方が本人の為になるだろう。
今日は放課後時間が無い訳では無いからな、都合が良かった。

俺は放課後、帰宅準備を済ませ旧校舎裏へと足を運んだ。