BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 【GBF】いちごというにはあまりにも【ランパシ】 ( No.1 )
- 日時: 2019/04/14 23:03
- 名前: 帰ってきてウェンディ (ID: 3EnE6O2j)
「なんだその戦い方は」
「昨日の方がまだましだ。話にならん」
「お前は周りも見えんのか」
これは、ここ数ヶ月の間に同じ人物から言われた小言の、ほんの一部だ。
ランスロットが騎士団に入ってからというもの、何かにつけて小言を言ってくる同僚がいる。
燃える様な赤い髪に、ガーネットの瞳。隣国から来たという名門貴族のおぼっちゃま。
名をパーシヴァルといったそいつは、ランスロットと同い年でありながら、いつも上から目線でチクチクと小言を投げてくるのだ。
そう、現に今も。
「お前はいつになれば、その悪癖を改めるつもりだ。お前の独断専行で隊が危険を曝される事もあるという事がわからんのか。」
ランスロットの横を歩きながら、険しい顔でパーシヴァルは小言を続けていた。
今日の小言の発端はといえば、ランスロット達新人ばかりを連れた遠征先で行った模擬訓練だった。敵に囲まれたという想定の元で行った訓練で、開始直後にランスロットが一人、敵に向かい飛び出して行ったのだ。
ランスロットとしては、あれは敵の不意を付き、そこから一点突破を狙えると確信した上で行ったのだが、どうにもパーシヴァルの癪に触ったらしい。
訓練が終わり、帰路についてからというもの、トレードマークの逆立てた髪を、わかりやすく怒らせながら、いつもの様にランスロットへ小言を言ってきたのだ。
随分と長い間彼は小言を続けているが、心なしか火の粉が舞っているようにも思える様子から、まだまだランスロットへの不満は収まらないらしい。
「おい、聞いているのかランスロット」
「聞いてるって。というか、そろそろ聞き飽きた。お前は何度も言うが、あそこではあれが最善だと思ったからやったんだ。結果としてうまく行ったし、それでもういいだろう。」
黙って聞いていたランスロットだったが、流石に耐えかねて口を開く。
これまでの経験から、パーシヴァルの小言に反論すれば、それだけ長く続き、更には喧嘩にまで発展するとわかっているので、最近は黙って聞いていた。
しかし、いつにも増して尽きない小言に、だんだんとランスロットも苛立ってきたのだった。
(なんなんだこいつは、俺のことばっかりグチグチ言いやがって。)
そこで、日々の仕返しに、パーシヴァルを困らせてやろうと思いついたことが、運の付きだった。
「全く、ことあるごとに突っかかってきややがって。もしかしてお前、俺のこと好きなのか?」
「なっ……!」
ニヤリとして言い放った言葉にパーシヴァルが固まる。
してやったり、と思ったのは、その数秒だけだった。
「も、もういい!」
ふいっと顔を背けて、ランスロットの前へと行ってしまったパーシヴァルに、ランスロットはただ呆然としていた。
「おいおい、まじかよ……」
さり際にランスロットの目に写ったのは、髪と同じくらいに赤く染まった、まるで図星ですと言わんばかりのパーシヴァルの顔。
いつもはすまし顔をしたいけ好かない同僚の、まさかの反応にランスロットまで面食らってしまった。
「もしかして、今までのって心配してくれてたのか……?」
よくよく思い返してみれば、パーシヴァルの小言はランスロットが危なっかしい事をしたときによく飛んできていた。
無理な体制から腕を振り抜いたり、体調が万全でもないのに無理に訓練を積んだり。そんなときには決まってパーシヴァルが小言を言うのだ。
さっきのだって、前に出すぎたランスロットの身を案じてのことならば……。
「〜!!」
急に顔に熱が集まるのを感じる。きっと今、ランスロットはさっきのパーシヴァルと同様に真っ赤に顔を染めているのだろう。
だって仕方がないじゃないか。
ずっといけ好かなくと思いつつも、実力を認めていた相手から、知らず柔らかいものを貰っていただなんて。
急に顔を手で覆ったランスロットの態度を不審に思った同輩達や先輩騎士達がチラチラと視線を送る気配がするが、それどころではなかった。
あぁ、これからどうやってパーシヴァルと接して行けばいいのだろう。
後々知ることになる、同僚の大の好物であるいちごに例えるには、あまりにも酸味の強い好意。
いや、これが好機と捉えるべきか。
これから互いに少しずつ知っていけばいい。
彼が随分も素直ではない気質であると、ランスロットが今日知ったように、パーシヴァルにもまた、ランスロットの事を知ってほしかった。
きっとパーシヴァルとは仲良くなれる。今のランスロットには、そんな気がしていた。