BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.15 )
日時: 2022/02/15 00:38
名前: みっつまめ (ID: kgjUD18D)

菊池俊介side

 ハッとして目を覚ますと太陽の日差しが部屋に差し込んでいた。慌てて時計を見れば登校時間にギリギリ間に合いそうな時間だった。

「慧斗! 慧斗! やべーぞ、遅刻す…あれ?」

 飛び起きて、上の階に居るであろう慧斗を呼びながら階段を駆け上がると、慧斗のベッドには本人は既に不在で一瞬気が抜ける。すぐに立ち止まってる暇なんてないと、服を脱ぎ、制服に着替えて、寝癖やら型のついた髪を手櫛で解いて机に置いたカチューシャを頭につけて鞄を手に学校へ全力疾走した。


 日々サッカー部で鍛えた足のおかげか、鐘が鳴り止むまでに教室になだれ込むことに成功した。呆れた顔の教師に怒られ、クラスメイトからは笑いが溢れていた。ゼーハーする息を整えながら自分の席にドスッと座る。隣の席の慧斗は両手を顔の前で合わせ苦笑いしながら「ごめん」と小さく謝ってきた。同じ部屋なんだから起こしてくれてもいいじゃないか、いつも俺が起こしてやってるのに。膨れたイライラの気持ちは午前中だけでなんとか耐えられた。
 昼休憩に席を立ってどこかへ行こうとする慧斗の腕を掴んで自席に無理矢理座らせ、尋問することに成功した。

「で? なんで朝、置いてったの?」
「いやぁ~、ちょっと用事で。 俊介いつも朝早いし間に合うだろうなって思って」
「用事って何だよ、アラームもかけてなかったからギリギリだったっつうの」
「でも、間に合ってるし、髪型もいつも通りじゃん」

 髪型の話題に触れられると、そういや昨日ドライヤーしてないということを思いだし、眉尻の下がった困り眉でヘラヘラ笑う慧斗の頬を指で摘まんで軽く引っ張る。

「昨日自然乾燥でパリパリだっての! 誰のせいだ、誰の」
「あらぁ~おれの? 痛い痛い、引っ張らないで~」
「柔らかっ」
「あぁ、もう、謝ったじゃん」

 慧斗が眉間にしわを寄せ目を瞑って痛いと大袈裟に言う。俺は摘まんだ慧斗の頬がフニフニ?プニプニ?あまりにも柔らかくて驚き怒りを忘れ、優しく揉んでいると慧斗の手に払いのけられた。

「そんな痛くないだろ?」
「痛いって~」

 また摘まもうと慧斗の頬に手を伸ばせば触れる前に払いのけられる。
 冷静になった頭は昨晩のことを思い出す。結局俺は風呂上がりに寝てしまって、慧斗がドライヤーを持って帰ってきたのを見ていない、それに今朝も慧斗が部屋に居たとこすら見ていない。

ってことは、もしかして、慧斗は向かい側の部屋でお泊まりした可能性も…?

「え…もしかして、お、お泊まり?」
「ん?なんの話?」
「昨日だよ! ちゃんと帰ってきたのか?」

 慧斗の両肩を掴んで揺さぶれば、不快そうに寄せられた眉にすぼんだ唇。どの表情をしてても至近距離で見てもイケメンはカッコイイし可愛いなと知る。

「ちゃんと部屋で寝たって、なんの心配してるの?」
「はぁ、ならいいけど」

 ヘラヘラ笑っている慧斗に安堵する。
 自分が何に焦っているのか分からず、ただ心臓がザワザワしているのを落ち着けることしかできないでいると、慧斗から話しかけられる。

「ねえ俊介、日曜って時間ある?」
「日曜? …特に予定はぇけど?」

慧斗が俺に予定を聞いてくるなんて珍しいな、日曜は元々テスト前になるから部活も休みだし、サッカー部の同学年の奴らと勉強会の話があがってたけど、なんとなく嘘をつく
 慧斗から何かの誘いがあるのかと期待して、その青い瞳を見つめる。

「時間あるなら、買い物に付き合ってほしいんだけど…」
「…え、マジ?」

 慧斗からの誘いだなんて、想像以上の台詞に自分の耳は幻聴を伝えているのかと疑ってしまう。驚いて開いた口が塞がらず、目の前の慧斗は困ったように眉を八の字にして「変な顔~」と笑っている。

「できれば一緒に行ってほしいなってだけ、俊介に聞きたいこともあるし」

え、聞きたい事ってなに? 今ココで聞けない事ってなに?

「な、なに、聞きたいことって…他の人にも聞いてること?」
「いや、俊介にしか分からないことー…でもないけど…他の人に聞いても意味ないし…え、嫌?」

 慧斗の誘いに返事をすること無く、誘ってくる理由を追及してばかりの俺に「自分と買い物するのは嫌か」と不安げに聞かれて、慌てて否定する。

「嫌じゃない、嫌じゃない! むしろ一緒に行きたい! えっ? これってもうデートなんじゃない?」

 ははっ、と慌てすぎて自分でも何を言ってるのか分からない言葉を連ねると、斜め下を向いた慧斗が少しだけ柔らかく微笑んで、呟く。

「…まぁ、デートかもなぁ…」

えっ…?

 小さく呟かれたその言葉を昼のうるさい教室で拾ったのは恐らく俺だけで、机に頬杖をつきながら斜め下を向いている慧斗の口元はまだ少しだけ口角が上がっていて、なんだか嬉しそうに微笑んでいるように見える。

 また何を言えばいいか頭の中が真っ白になった俺は、朝の遅刻の件で先生に呼ばれていると、クラスメイトから肩を叩かれるまで動けないでいた。
 肩を叩かれてハッとしたときには、慧斗は既に目の前からいなくなっていた。