BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.16 )
日時: 2022/02/23 23:19
名前: みっつまめ (ID: CejVezoo)


 待ちに待った日曜日が来た。慧斗から誘われて二日後だが、俺は結構浮かれてたみたいでグラウンドで走りながら通りすがりの人に聞いてもいないのに言いふらしたみたいで、朝に「うつつを抜かすのは今日だけだ」なんて通知や応援メッセージまで十件以上来ていた。

「じゃあ、行こっか」
「おう!」

 ショルダーバッグを肩から斜めにかけた慧斗が二階から降りてくると扉のドアノブを掴んで俺に声をかけた。自然と綻ぶ顔が分かるほど大きな声で返事をして、扉を開けた慧斗の後ろを歩く。そんな俺を見ながら慧斗は首を傾げて笑いながら部屋を出る。

ガチャッ
「俊介、今日すごい元気だね、外も晴れてよかっ…」
「俺ってば晴れ男だか…わぶッ! …慧斗?」

 部屋を出た瞬間に慧斗が足を止めて、歩いていた勢いのまま俺は慧斗の頭に顔面をぶつけ、慧斗が足を止めた原因を探るために、慧斗を見る。
 正面を向いた慧斗に不思議に思い、体を左側にずらして慧斗の前に何があるのか見ようとすれば、すぐに左手を広げた慧斗が体も左側に少し傾けて俺を目の前の物から隠す動きを見せる。

ん?

 俺を見せないように動く慧斗の前にある物は一体何だろうかと顔を動かせば、聞き覚えのある声が聞こえた。

「こんな朝早くから買い物行くん?」
「いやいや、朝早いって、もう10時ですよ? いま起きたんですか? 長時間睡眠は脳細胞死にますよ?」
「自分、一言多いて言われへん?」

 関西地方を思わせる独特の訛り口調は、この学校に一人しかいない。けど、なぜ慧斗は俺を清水先輩から隠す必要があるんだ?俺と二人で買い物に行くこと、清水先輩には言ってないとか?だから、見られたくないとか?なんだよ、それ。
 なんだかモヤッとして、慧斗の肩に腕を回して慧斗の横に並ぶ。

「おはようございまっす!清水先輩」
「おん、おはようさん」
「ちょっ俊介、あぶなっ」

 思ったより清水先輩と慧斗の距離が近かったのもあって、驚いたが、慧斗が俺の腕から逃れようとモゾモゾ動くのを気にせず、笑顔で清水先輩に伝える。

「オレら今からデートなんスよ!」
「へぇ~どこ行くん?」
「俊介、ちょっと離れ」
「買い物ッス、慧斗から誘われたんで!」
「ほぉ~ん」

 んじゃ、と用件だけ伝えてなかば慧斗を引きずるようにして、清水先輩から離し、寮の出口へ向かう。何か言われるかと思ったが、清水先輩は何も言ってこない。

「……」

 ただ、後ろから清水先輩の視線を感じたけど知らないフリを押し通して、寮の出口を通った後に慧斗を放す。
 俺の膝辺りを見た慧斗は安堵のため息を吐きながら軽く屈んで「無事で良かった」と呟いた。

それはどういう意味だろうか、清水先輩って結構暴力振ってくるとか?え?慧斗は清水先輩に暴力振るわれるかもしれない俺を守ってたってこと?え?慧斗は常日頃、清水先輩から暴力を!?

 俺は慌てて慧斗の両手を握って、慧斗と目線を合わせる。

「慧斗!もしかして、いつも清水先輩から暴力を振られてんのか!?」
「へっ!? は?」
「気づいてやれなくてゴメン!今度は俺が守るから!」
「えぇ~? なんの話し?」
「え、そういう話じゃないの?」

 俺の予想は少し外れていたみたいで、俺も慧斗も上手い具合に話が噛み合わず二人して首を傾げる。空気を切り替えるようにいつもの笑みを浮かべた慧斗が言う。

「まぁ、この話はまた今度ってことで、そろそろ出発しないとバス乗り遅れちゃうから」
「ハッ!そうだった、何分のだっけ、走る?」
「35分発、走らなくても間に合うけど、ゆっくりはしてられなそう、早歩きで行こ?」
「慧斗、疲れたらぶってやっからな! 遠慮せずに言ってく」
「いや、それは遠慮する」
「遠慮すんなって!」
「あははっ」

 慧斗がいつも通りの笑みを浮かべて、いつも通りの会話が弾んで、心のどこかでホッとしてる俺がいた。