BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.17 )
日時: 2022/03/06 20:13
名前: みっつまめ (ID: SUkZz.Kh)

 連れて来られたのは文房具やら日用品の売られているお店。買い物というからてっきり洋服店とか靴屋かと思っていたため、シャーペンやノートといった消耗品を買うために同行してほしいというのは珍しい誘いだと思った。
 慧斗は結構一人行動が出来るタイプに見えるし、実際学校がある日の昼休憩に俺とご飯を共にしているわけでもないし、ひとりでに教室を出て行く姿をよく見る。以前行き先を聞いたら裏庭で子猫と一緒にご飯を食べてると言っていた。俺は猫アレルギーだから一緒に行けないと言ったら「寂しくないから平気だ」とも返されたぐらいだ。そこまでハッキリ言われると腑に落ちなかったが、そういうものかと割り切っていた。
 そんな慧斗が俺を誘ってまで一緒に行きたいと言って、連れてきた場所がココかと、何かが突っかかる。

「うん、これなんてどうかな…じゃぁこれは?」

 小声で独り言を呟く慧斗は棚の下段に置かれたノートや手帳、色々な形の消しゴムなど、手に取っては戻しを繰り返す。そのどれもが小さい子どもが好みそうな可愛らしいキャラクター入りの物だ。
 慧斗はこんな可愛いキャラクター入りの物が好きなのか?以外だな、イケメンが可愛いを集める…ギャップ萌えってやつ?…いや、ギャップでもないのかな?

「慧斗は、こういうのが好きなのか? 迷ってるなら俺が買うけど」
「いやいや、俺じゃなくて、この子…あぁ~」

 俺が声をかけると慧斗は言葉を濁らせる

「この子?」
「いやあ…この間お世話になった子、そう、その子のこと」
「?…うん、その子が?」
「うん…その子が、俊介にお世話になってたらしくて、そのお礼がしたいんだって」

 ずっと目を逸らして話す慧斗は何か隠しているようで、その何かが気になって、もう一つ質問をする。

「うんうん、なるほど…それで?」
「それで…?」
「なんで慧斗が選んでんの?」
「あぁ~……」

 俺の質問に慧斗はあからさまに目を泳がせる。
 それもそのはず、先日慧斗がお世話になった子が、以前に俺にお世話になったとしてお礼がしたい、との話なら、その子が俺にお礼の物を選んで持ってきてくれるだろうが、なぜか慧斗が俺にくれる物を選んでいるのだから。
 俺は何も見当違いな質問はしていないはずなんだ

「…その子、もう引っ越してこの辺いないから、俊介に直接渡せなくて、引っ越す前に偶然会ったとき俊介に渡してほしいって、一緒にここで選んでたんだ、よ、ねぇ~…あはは」

 苦し紛れの言い訳をしているように見える慧斗をそれ以上いじめる趣味は無い。聞きたいことなんて山ほど出てくるけど、慧斗の顔に「それ以上は追求しないでほしい」って書いてるから、いや、俺が単に雰囲気を読んだのかもしれないけど、なんとなく変な空気にもなりたくないし、この話を受け流すことにした。

「ふ~ん…んで、慧斗は、もしかしてその“俺に渡すお礼”って、その子と一緒に選んだ商品がどれだったか忘れちゃったとか?」

 この店に着いてから、色々と商品を手に取って吟味していた姿に、そう問いかければ八の字にした困り眉で苦笑いする慧斗は、まるで他人事みたいに言って別の箇所を指さす。

「うーん、そうみたい…あっちの方も見てみようかな。俊介は疲れてたら、近くで休んでていいよ」

 俺を見た青い瞳がチラリと俺の背後を見てから視線が戻ったことに、振り返れば店の出口から少し離れたところに休憩所としてソファーが置いてあった。慧斗の方へ顔を戻せば、もう慧斗は俺に背を向けて店内の奥へ足を進めていた。辺りをキョロキョロ見るでもなく、真っ直ぐ歩く姿は、まるで何かの後を追って歩んでいるように見えて、ブルッと震えた体を両手で抱いて、顔を左右に振る。

「そんなはず、ないよな…この間慧斗と見たホラー映画のせい、だよな?」

 俺自身も疲れているのかもしれないと思い、近くにあるクレープ店に目が留まった俺は「糖分でも摂取して疲れを癒やそう」と足を運んだ。