BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.19 )
日時: 2022/04/14 22:00
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

それは、今朝も寮を出る前に顔を合わせたばかりの男で、退屈そうな顔をして空虚を見つめ毛量のある橙色の髪を風に揺らす男、清水聡志だった。
何故ここにいるか、という驚きよりも、別の驚きに俺は一瞬、声が出なくなる。

彼の隣には、女性がいた。茶色の長髪を頭の上で1つ結びした露出多めの女性が彼の片腕を抱きしめて楽しそうに笑っていた。

「え、彼女?」

あの人に、そういった噂を聞かないからこそ、目の当たりにしている光景に驚きが隠せず、気づいた時には言葉は零れていた。
それに、慧斗が「ん?」と聞き返して、俺の視線を辿って顔を向ける。

慧斗は清水先輩と最近仲がいいみたいだし、知ってるか。そう思って慧斗を見れば、慧斗は眉間に皺を寄せて、口を僅かに開けて、未知の生物を目の当たりにしている顔をしていた。
見たことがない慧斗の険しい顔に、俺は慧斗に見せちゃマズいものを見せてしまったような気がして、場を和ませるように苦笑いして続ける。

「あれ、人違いかな、きよ」
「清水先輩で間違いないよ」

いや、怖い!!俺まだ喋ってたんだけど!

真顔になった慧斗が窓ガラス越しに清水先輩達を見ながら即答する。少し伏せ目がちになった瞳は俺を見ようとせず、慧斗にしては珍しい隙のないオーラと真顔に、その表情が氷のように冷たく感じて、ブルっと震える体を両手で抱きしめる。
慧斗が見ても、アレが清水先輩で間違いないなら、隣の女性が恋人ではない可能性にかけようと声を出す。

「あっ、い、妹さんかな?似てなくてキレイな人だな〜」
「先輩に妹は居なかったはず…男兄弟って聞いたし」

墓穴掘った…いや、男兄弟なら、似てない弟の方が女装してるとか!

「お、弟なんじゃねっ? 女装してるとか!」
「先輩は2人兄弟の弟の方だったと思う」

しまった…!なら、ダメ押しで…!

「お、お兄さんが女装を…!」
「…ん〜…」

やっとのこと慧斗が清水先輩たちから視線を外して、スマホ画面を触り、何か考える仕草をとる。
俺は、なんとか慧斗を傷つけずに済んだのではないか、と内心とても安心していた。
「お待たせしました〜」と丁度注文していた料理も届き、慧斗を元気づけようと変顔したりクラスメイトを驚かせた時の成功話をしたりすれば、慧斗はクスクスと笑ってくれた。
慧斗のパスタも運ばれてくると、先程までの冷たい表情はどこへやら、穏やかに微笑む慧斗は、いつも通りに戻っていて、安心した。

その後は、会計を済ませたあとも慧斗がカフェの方へ視線を向けることはなく、最後に夕日が沈む前に行きたい場所があると言った慧斗の後を着いて歩いた。