BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.21 )
- 日時: 2022/05/02 00:34
- 名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)
「サトシ兄ちゃんと初めて会ったのは、公園だった」
〜〜回想〜〜
俺は、親の都合で同じ学校に通うことが少なく、珍しい容姿をしているのか、いじめの標的にされることが多かった。当時は同学年と1つ上と2つ上の計3人の男子生徒に、登下校中に後ろから体当たりされたりサッカーの練習がしたいとゴール前に立たされボールをぶつけられたりされてた。
勿論それはほとんどが強制だから、逃げが効くなら逃げたし隠れたし、強く断って家に走ることが多かった。
そんな楽しくない日々が続いて、その日も彼らの命令を無視して下校してた。
下校途中に彼ら3人がよく遊んでいる公園の前を通ると、普段は聞こえない猫の鳴き声が聞こえた。3人はまだ来ていないようだし、その日は夕方から雨が降ると天気予報で言っていたから気になって、猫の鳴き声がする方へ歩を進めた。
公園の手前の茂みにダンボールに入った小さな黒猫を見つけた。左後ろ足に怪我をして悲痛な鳴き声をあげていた。まずは怪我の手当てを優先しようと思ったが、道具は何も持っていないため、手持ちの傘を雨避けとして開いて子猫を覆うように被せる。
走って家に帰り、公園に戻ってくると、あの3人が公園で大声で笑いあっていた。
見つからないように身を屈めながら、様子を伺えば、3人は公園の奥の茂みに布やらオモチャを広げ「秘密基地」と言いながら遊んでいた。
さっさと子猫の所へ行って手当して帰りたい、そう思うのに3人の所を見た途端に足が動かなくなる。
楽しそうにトランプカードで遊んでいる3人にはアレが視えていない。
さっきは居なかったのに、戻ってきたら公園には3体居た。1体は砂場で体育座りしてる坊主の男の子。1体は公園の中で割と大きめの木の下で俯いて立ってるセーラー服の黒髪女性。そして、もう1体が黒い帽子を深く被ったスーツ姿の男性。スーツ姿の男性は他2体と違って片手に包丁を持って3人のすぐ近くで、3人の遊びを見ていた。それが凄く怖くて動けなくなった。
「あれ、ソーマのやつ、こっち見てるぜ」
「は?どこ?」
「ほら、あそこ」
そのうち、3人の1人が俺に気づいて指をさしてはその場で立ち上がる。他2人も俺を見ると楽しそうに笑って手招きする。
「ほんとだ、アイツなに隠れてんだ?ブフッ」
「おい、来いよ、お前も特別に秘密基地に入れてやる」
1人が俺ところまで来て腕を掴むと、秘密基地まで引っ張られる。3人が怖いのではなくスーツ姿の男性が怖くて、掴まれた腕を振りほどこうにも力が出ない。
『やめてっ、やだ!』
「静かにしろよ、オレらがいじめてるみたいに見られるだろ!」
「そーだ、そーだ」
「ババ抜きのビリはジュース皆の分オゴリってのは」
スーツ姿の男性はゆっくりと刃物を持った腕を上にあげ、喋っていた1番年上の男子生徒に向かって勢いよく腕を振り下ろした。
『あぶないッ!』
「…は?」
咄嗟に大声をあげてしまっていた。
彼らには見えていないし、幽霊の攻撃も無害で、無傷な目の前の彼は、俺の怒鳴るような焦燥感にかられた言い方に腹を立てた。
「おい、何が“危ない”んだよ、言ってみろよ」
『うっ…い、いたい…』
「またオバケが見えたとか言うのか?」
「あぁ〜ん、ママぼくちん怖ぁーい」
「今どこに居るのか言ってみろよ、おら!」
『ッ、痛い…やめてっ』
「オレらにウソついたバツ〜」
腹を殴られて、屈んだら体を押されて地面に倒される。すぐ蹴られると思ったからお腹を守るように膝を地面について蹲る。予想通り3人は俺を囲んで背中を不規則に蹴られる。
こんな風になるなら、彼らを守るようなことを言わなければ良かった、その方が蹴られる事はなかったかもしれない。そう思っていた時、近くから声が聞こえた。
『それ、楽しいんか』
「あ? なんだお前」
『自分より小さい子イジメて楽しいかって聞いてんねん』
その声と共に靴が砂利に擦れる音が近づいてきて、俺のすぐ近くで止まる。
「なにコイツ」
「お前ソーマの味方?」
「初めて見る顔だな」
『まずオレの質問に答えてくれへん?』
子供にしては挑発的な口調に、俺を庇っては彼まで巻き込まれる、と思った俺は顔を上げて目の前の彼の服を掴む。オレンジ色とピンクと黄色白色が混ざった優しくて眩しくキラキラ光るものが俺の事を庇った少年から出ていた。初めて見るそれに、太陽より眩しく鮮やかで虹よりキレイだと思った。
「お前が誰か知らねえけど、弱いやつが強いやつの遊びに付き合うのは当たり前なんだよ」
『あそび…?自分らがやっとんのはイジメやろ』
「イジメ? チッチッチ〜、オレらのルールじゃこれが遊びなんだよ」
「お前がソーマの味方につくって言うなら、オレらのルールに従ってもらうぜ?」
『待ってよ、この人は関係な』
『ええよ』
3人は俺の事を庇う少年を標的にするつもりで、ニヤニヤと意地悪い顔をしていて、彼を巻き込む訳にはいかないと、彼の前に出ながら「この人は関係ないから、巻き込まないで」と口を開けば、話の途中で少年は遮る。3人の遊びに付き合うと返事をした少年に「なんで?」と驚きと焦りを隠せず顔を向ければ、服を掴んでいた手をスルリと解いて、俺の頭を片手で撫でた少年は優しく囁く。
『目ぇつぶっとき』
目を瞑っていろと言うことだろうかと解釈して、両手で両目を覆い隠すと、頭をポンポンとまた撫でられ「ええ子」と言った少年は、俺に背を向ける。
『ほな、始めよか?』
そう言った少年の後に、ドッゴッベチッドカッと様々な音が聞こえ、3人のいずれかの声を聞こえて、砂利を擦る靴底の音に「つ、強いとか卑怯だぞテメェ!」と1つ上の彼の声が聞こえ、少年は怒りと愉しさの混じった口調で彼らに言う。
『卑怯って何がや、自分らのルールに従って“遊んだ”だけやろ?』
「こ、こんなの、弱いものイジメって言うんだろ、母さんに言いつけ」
『調子ええこと言いなや、先にやってたんはどっちや』
「お、お前がやってんのと俺らのとは全然ちが」
『まだ遊び足りひんか…?』
「ヒッ!!」
『今後、二度とこの子に近付くな、ええか?』
「ひゃいぃ〜」なんて情けない声と足音が遠ざかっていき、両手を退けて目を開けると、俺を助けてくれた少年が、俺の服についた埃を払ってくれていた。
『あ、の…巻き込んで、ごめんなさ』
頭を下げようとすれば額をペシッと軽く叩かれる。痛くはないが何故叩くのかと額を両手で抑え首を傾げれば、少年は眉を寄せて自身の後頭部に手を当てながら言う。
『アホやなぁ、そこは、ありがとうでええねん』
『ありがとう、ございます』
『…おん』
言われた通り感謝を述べれば、少年は頬を赤くして唇を尖らせ、満更でもない表情をした。パチパチ弾ける眩しいオーラを持った少年の瞳は小さくても琥珀色で毛量のある髪が橙色であることを、その時はじめて知った。
『また、ああいう事されたら俺んこと呼び、どっからでも駆けつけたる』
『…でも、お兄ちゃんに迷惑かけ』
『あ、せや、名前言うてへんかったな、サトシや』
『さとし…?』
『おん、こうやって書いてサトシや、よろしゅう』
〜〜〜〜〜〜
「って、サトシ兄ちゃんは地面に木の枝使って“智”って書いて笑顔で自己紹介してくれた」
軽くサトシ兄ちゃんとの出会った経緯を話せば、俊介は「へぇ〜」と虚空を見つめながら相槌を打った。俊介の頭でどのように解釈されるかは分からないが、処理が終わるのを待った。