BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.22 )
日時: 2022/05/05 21:58
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

「へぇ〜なるほどな、サトシ兄ちゃんってスッゲーカッコイイな!!」
「うん、でしょ?」

頭の中で処理が纏まり始めたのか俊介は質問を始めてきた。

「でもこの“サトシ”なら清水先輩と漢字が違うぜ?」
「うん、そうなんだよね…」

スマホで打って俊介に見せた漢字を自身でも見つめる。確かに、清水先輩の名前の漢字は二文字で“聡志サトシ”だから俊介の言う通りサトシ違いとなる。それでも

「その…慧斗が見た虹よりもキレイなキラキラしたものが、清水先輩にも見えた…とか?」
「…うん」
「そ、それってさ、俺にも見える?」

俊介が自分を指差す。素直に頷いて「俊介は薄紫色」と答えれば嬉しそうに顔を綻ばせる。オーラならみんなあるけど、サトシ兄ちゃんのは不思議なチカラを感じる。当時は分からなかったけど、今なら思う。あの不思議なチカラを感じたオーラは霊を浄化させるものなんじゃないかって。ジュワッと灼熱の炎にあぶり焼かれた様な音に、ブチッと重量のあるものに潰された様な音などで、近くに居た霊が消える所を何度か見たから。基本的に未練をはらって天へ導く、自分がよく使う浄化では、天からたまに挨拶などで地上へ降りて来るヒトも見かけるけど、サトシ兄ちゃんのオーラによって強制的に浄化された霊を見かけることは二度とない。たまたまかもしれないけど、俺にはソレがちょっとだけ怖くて、今朝は俊介に憑いたを守るために清水先輩から隠した。
幸いなことに浄化はされなかったけど、清水先輩のオーラとサトシ兄ちゃんのオーラは見間違えないくらい同一色をしている。
磁場みたいにピリピリわずかにしびれる感覚を肌で感じるけど、攻撃的じゃなくて、とても温かい。

「清水先輩とサトシ兄ちゃんの、ソレって、少しでも違ったり」
「完全に一致してるよ」
「お、おおっ…そっか」
「うん」
「…それ持ってる人って結構居る可能性とかは?」
「…あんまり、見たことない」
「なら可能性が無いとは言いきれないってことだな、たまたま名前が一緒だったってことも考えられるし、清水先輩が慧斗を覚えてないんじゃあ…ホントに人違いって線も…ある、だろ?」
「…うーん」

俊介の言う様に、偶然近い条件が揃っただけでソレだと決めつけるのは良くないことだと分かってる。俺がずっと心の中でサトシ兄ちゃんに会いたいと願ってた想いが、たまたま揃ってるだけ。清水先輩は本当にサトシ兄ちゃんとは別人なのかもしれない。だけど、諦めきれない何かが心にモヤとして残る。
そんな俺に気を遣ってか、俊介は話題を変えた。

「そういえば、その後、子猫はどうしたんだ?」
「子猫は…その日は手当だけして、少しの間、智兄サトシにいちゃんと公園で世話してた、学校帰りとか様子見ながら」
「どっちか飼うとか出来なかったのか?」
「俺は親の都合で転校することが多かったからペットは飼えなかったし、智兄ちゃんの所は、お兄さんが猫アレルギーだから無理って聞いたかな」

結局、俺は一ヶ月後に転校したから子猫がその後どうなったのかを知らない。今は飼い主を見つけて元気にやれているだろうか、あの公園はイジメられていた時の嫌な思い出と、智兄ちゃんと遊んだ楽しい思い出が浮かびそうで、時間がある時に行けない距離ではないのに、複雑な思いから足が進まなかった。今度、勇気を出して行ってみるのもアリかもしれない。何か智兄ちゃんと会う手がかりが残ってるかもしれないし。
俺が考えていれば、俊介は子猫から次の興味の矛先へ話題を変える。

「へぇ〜、智兄ちゃんのお兄さんには会ったことある?」
「うん」
「え、スゲェどんな時に会うの?」
「どんな時って…智兄ちゃんが一度だけ高熱を出して学校休んだ時に、心配で家に行ったら、お兄さんが居て…みたいな?」
「…へ、へぇ〜心配で、ふーん…」
「うん、智兄ちゃんが学校休むなんて珍しかったし」
「あぁ〜なるほど、それで、お兄さんはどんな人だったか覚えてる?」
「え、うーん…」

会ったことがあると言っても十年前の記憶だし、自分でも曖昧にしか思い出せない。当時は智兄ちゃんを心配して家に寄った訳だし、お兄さんがどうだったかまではあまり記憶にない。覚えているのは、智兄ちゃんとは違った妙な訛り口調で銀髪で顔が整っていたような、背後に逞しい筋肉を持ったヒトを憑けていたなってことだけ。
名前とかは流石に思い出せない、ただ智兄ちゃんの見舞いだと言えば「ええ子やのう」と優しく頭を撫でてくれたことを覚えてる。

「…優しい人、だったのは覚えてる」
「優しい人かぁ、あんまり手がかりにはならないな」

まるで智兄ちゃん捜しを手伝ってくれるような言い方の俊介に、念の為、必要ない旨伝える。

「…俊介が気にすることないよ、智兄ちゃんは俺の尊敬する人だし、過去の約束とか、気になることは会えたら話をしたいだけだし」
「過去の約束?」
「う、うん、まぁ、それはこっちの話」

下手な断り方に口を滑らしたが、流石に約束の内容は、俊介には話せないから口を紡ぐ。
俊介は眉根を寄せて不服そうな表情をして、地面に転がる小石を蹴りながら口を開く。

「俺さ、慧斗が清水先輩と仲良くしてるの、ずっと不思議に思ってて…」
「俊介…?」
「なんていうか、その、慧斗は、智兄ちゃんと会えたら…スッキリするのか?」
「えっ…?」
「慧斗は、智兄ちゃんのこと、ずっと捜してる、のか?」
「……」

ずっと捜してるのか、と聞かれたら「ずっと捜してた」が答えになる。引っ越してからも会える奇跡を求めて、どこに転校しようが、学校中駆け回って生徒の顔を見て回って、捜した。「心配せんでも、絶対会えるて、オレらが再会するんは運命で決まってんねん!」そう笑顔で言った智兄ちゃんの言葉を信じてた。けど、俺の両親は離婚するし、引き取ってくれた父親からも離された俺が、何かを得られるとは思ってなくて、この高校に入ることが決まった時「智兄ちゃんとの約束を諦めよう」そう思ったんだ。
子どもの根拠が無い発言、未来は誰にも分からない、運命なんて無い。
そう思って捜すのを辞めたら、智兄ちゃんにそっくりな人が現れるなんて、それで別人なら…あまりにも、残酷じゃないかっ…!

「慧斗…慧斗が智兄ちゃんを捜すなら、俺は協力するぜ?」
「…捜してないよ、ただ…」

〜〜回想〜〜
俺が引っ越す1週間前の話。
「サトシ兄ちゃんに会えてホントに良かった」
「っ…なんやねん、急に」
「ずっと一緒にいたい」
公園の滑り台で呟いた一言に、智兄ちゃんに片手をバッと掴まれ手を繋がれる。何だろうかと顔を向ければ、頬を赤くした智兄ちゃんは真剣な面持ちで言う。
「今はオレら子供やし、無理かもしれん…けど、大人んなったら自由やん」
「…自由?」
「おん、大人んなった時、ずっと一緒に居ればええやん」
「…うん!」
大人になれば智兄ちゃんとずっと一緒に居られると浮かれて頷いた。それに満足そうに口角を上げた智兄ちゃんは俺から顔を逸らして夕日を見て、手を繋いだまま会話を続ける。真似して夕日を見る。
「鶴にはオレのオーラが見えんねやろ?」
「うん」
「大人んなったら、きっと見た目も変わる、オレめっちゃムキムキで身長高いかも知れんし」
「ふふっ、うん」
「せやから」
そう言って繋いでいた手に力が入った智兄ちゃんに顔を向ける。
「せやから、そんときは、鶴が俺を見つけてほしい」
「…オレが?」
「うん、俺が知らんふりしても捕まえて声かけて、絶対離さんでほしい」
そう言った智兄ちゃんは、いつもとは違って情けなく眉を下げて俺に懇願していた。そんな智兄ちゃんに元気になってほしくて、俺の目が見間違えることは無いって断言したくて、繋いだ手に俺も力を込めて頷いた。
「うん、絶対、絶対に智兄ちゃんを見つけるよ!」
「別人と一緒になったら許さんで?」
「ならないよ、智兄ちゃんのこと、大好きだもん!」
「…頼んだで、大人んなったらオレら___」
「うん、約束!」
〜〜〜〜〜〜
今でも夢だったんじゃないかってぐらい智兄ちゃんと居た時間は幸せだった。
智兄ちゃんの隣だけが俺の居場所なんだと思ってた。会えないなら、清水先輩みたいな「智兄ちゃんそっくりな人」を俺の前に出さないでほしい。
俺は、智兄ちゃんを捜すのは諦めた…ただ…

「ただ、清水先輩と別人だって証拠がほしい」

清水先輩は「人違い」と言った。
本当にそうなら証拠がほしい、俺が希望なんて持たなくなるぐらいの絶望がほしい。生ぬるい傷跡が一番苦しくて痛くてみるから、いっそ一思いに殺されるぐらいの絶望…

「…なるほど、それなら俺も協力するぜ」

頷いた俊介が、手伝うと言ってきて、巻き込みたくて話したわけでは無い為、両手を前に顔の前で振りながら断りを入れる。

「へっ、いや、いいよ、本人に色々聞くし」
「ここまで話聞いて何もしないは出来ないから何かさせてくれよ!」

話を聞かせてくれと言ってきたのは俊介だし、俺の話を聞いて俺に同情したのかもしれない。何かやる気に満ち溢れてる俊介に、これ以上断っても無駄だろうなと思い、あまり清水先輩の詮索もされたくもないけど、断れない雰囲気に押し負ける。

「うーん…わかった…」
「よっしゃー!」

慧斗へ話し終えたところで、俺達はまた歩き始めた。