BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.23 )
- 日時: 2022/05/15 01:34
- 名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)
清水聡志side
ブーッブーッ
机に置いたスマホの振動で目が覚める。画面を見れば8時37分。学校が休みの日に、こんな朝早くから目覚ましをかける性格ではないため、二度寝をかまそうかと枕に顔を埋めれば、この間アイツがこのベッドで俺の髪をどうしても乾かしたいからと駄々こねていたな、と向かいの部屋の彼を思い出す。入学早々、俺と誰かを間違える、胡散臭い笑顔をいつも貼り付けてるくせに俺の前ではよく怒る、部屋に入る時にノックしろと言えば、ちゃんと従う忠実さがあるのにたまに融通が効かなくなる。初めはただの偽善の面被ったイケメンかと思ってたが、存外退屈ではない彼にクスッと笑う。
ブーッブーッ
2度目のバイブ音に、さすがに無視は出来ない為、体を起こしスマホの通知メッセージを確認する。
《もう寮着いてんけど、起きとる?》
《今日、ウチが来んの忘れてへんやろな?》
「…あ、せやった」
思わず零れた言葉は誰も拾うことなく部屋に響いて、下の階を覗けばルームメイトは既に外出しているようだった。
今日は父親の弟の娘、つまり従妹が来ると数日前にメッセージが来ていたことを思い出す。
通知メッセージの内容から、寮の出入口付近に居ることが分かり、軽く外出用の服に着替えてスマホの画面を見れば、「既読」の確認が出来たからか、待つことが嫌いな彼女からは次々に脅迫のようなメッセージが届く。
《遅ない?》
《ずっと外で待ってんけど!》
《あと1分で来なかったら「ダーリン」って叫んだるわ》
アホか、っつか「ダーリン」てなんやねん、古いわ
自室を出て、向かい側の205号室が静かなことを確認すると、スマホを操作して「今向かってるわ、じっとしとき」とメッセージを送る。
寮の出入口の扉を開ければ「聡志ぃ〜」と抱きついてきた従妹こと清水 結衣の顔面を鷲掴んで、体から離す。
「痛いわアホ!何すんねん!」
「お兄様つけんかい」
「え〜?聡志ったらウチらの仲やん」
「はいはい、とりあえず部屋案内したるわ、着いて来ぃ」
結衣に背を向け、自室に案内しようと歩き出せば、結衣は辺りをキョロキョロ見渡しつつ、質問してくる。
「ノリ悪いなぁ〜…この寮、女子のウチが入っても文句言われないん?」
もちろん男子寮に女子生徒が入ることは禁止されているが、結衣はウチの生徒じゃない。
「結衣がウチの生徒やったらあかんやろなぁ」
「はぁ!?それむっちゃ危ないやん!校則ギリッギリのとこ突いてんで!バレたらどないするん!?」
「そんときはそんときや、まぁ、なんとかなるやろ」
「アンタがどうなってもウチ知らんで!」
「アホ、声小さくせえ…誰かに聞かれたらどないすんねん」
自室の扉を開けて結衣を先に中に入れる。誰にも見られていないことを確認して部屋に入って扉を静かに閉める。結衣は俺の責める口調に「アンタが悪いことしとるんに、なんでウチが怒られなあかんねん」とボソボソ愚痴垂れている。
そんな、結衣が俺に会いに来た理由は実際のところまだ聞けていなくて、本題を切り出す。
「ほんで、どないした?」
扉の出入口に立ったまま何の用かと聞けば、結衣は「せやせや」と思い出したように気を切り替え、椅子に座って人差し指と中指を立てる。
「おっきく言うと2つあってな、1つ目はウチの行きたい思うてた店が明後日で閉店する言うて、そん前に行きたなったこと」
「俺以外に一緒に行ってくれる人おらんかったんか」
「ちゃうわ!みんな忙しいだけやねん!ウチがボッチなんちゃうから!」
「誰もボッチや言うてへんやろ」
「あぁあ〜!むかつく!」
結衣は机にあったルーズリーフの1枚を手の平でグシャグシャに丸め俺に投げてくる。避ける気がなく胸元に当たって落ちた紙くずをルームメイトのゴミ箱へ入れつつ「もう1つは?」と理由を聞く。
「もう1つは…まだ、捜してるんかなって気になって…」
言いにくそうに小さめの声で言った結衣のセリフは、俺を気にしてる様子で「結衣には関係ない」と続けようと結衣を見れば、1枚の現像された写真を俺に見えるように前に出された。
「これ…鶴ちゃんやろ?アンタの初恋の人」
結衣の指先に写る黒髪で色白な青眼の子供。子供は顔立ちが整っており、はにかんだような笑顔を見せている。その隣には、歯を見せて嬉しそうに堂々と笑う俺の幼少期の姿。片手は人差し指と中指を立ててピースして、もう片手は隣の子供と手を繋いでる。背景は昔の俺の実家だろうか、屋内で撮られたものだ。
俺の記憶にその写真の映像は無い。