BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.25 )
- 日時: 2022/05/30 00:49
- 名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)
それでも、写真が見つかったことで捜すヒントとしては大きい進歩で、もしかしたら写真は他にも探せば見つかるんじゃないか、と考える。
「写真てこれだけやった?」
「おばさんが渡してきたんはそれだけやで?」
「…」
俺は、今必要ないと思ったものはすぐ捨てる断捨離が得意なタイプだが、母親は何かと「記念に」と言って倉庫や押し入れの中に収納して忘れるタイプだ。
当時は日記しか手掛かりが無いだろうと勝手に思い込んでいたが、一つ出てきたとすれば、この写真以外に他にも手掛かりは残っている可能性がある。それなら、すぐにでも実家に帰って探したい思いだが、実家は遠く、帰省するなら再来週の三連休しかないか、と木崎のカレンダーを捲って考える。
「再来週帰るわ」
「は!?なんやねん急に」
「他にも写真あるかもわからんし」
「…」
「先に寮長に手続きしてくるわ、ちょぉ待っとき」
「ちょ、待ちぃや…!」
部屋を出ようとすると、後ろの服を引っ張られる。振り向けば服の裾をガッシリ掴んだ結衣が口を歪ませ視線は下に、眉間に皺を寄せてる。何か言いたげな表情だ。
俺が振り向いて、部屋を出ようとした動きが止まれば、服から手を離して言いづらそうに小さく問いかけてくる。
「…あ、あんた、それでもええんか…?」
「どういう意味や」
「あ、あんたが…自分のことおざなりにして鶴ちゃん必死に捜しても…鶴ちゃんはアンタのこと、覚えてへんかもしれんし、彼氏だっておるかも」
「ええよ」
「…は…?」
「ええて、彼氏おっても俺んこと覚えてんくても」
「…は、な、なんで?そしたらアンタの捜してた時間は何?無駄やん」
「無駄ちゃうわ、俺が会いたいだけで捜しとんねん…向こうが忘れてようが相手つくろうが関係ないわ、会って話聞きたいだけや」
「…なんやそれ、それでアンタの人生棒に振ったら、アンタ報われないやん」
「関係ないやろ」
「…っアホ」
結衣が俺の事を心配して言ってきてくれてるのは分かってる。それでも心の穴を、モヤをスッキリ解消させたい俺は、写真の彼女のことを放っておけないから、こう言うしかない。
すまんな、と思いつつ、俺の言い方で泣いてしまった結衣を部屋に置いて、寮長室に行こうと部屋を出る。
部屋を出て扉の前で、先程の写真をもう一度見る。
見覚えのない少女のはにかみ笑いが、どこかで見たことがあるような気がするのは、目前の部屋の彼と顔が似ているからなのか。
ガチャッと205号室の扉が開いた音に驚いて顔を向ければ、写真の彼女と顔が似ている彼と目がバッチリ合った。部屋を出てこようとした彼が動きを留めたことに多少疑問に思うも、気にせず相手の身なりに目を向けつつ、写真をズボンのポケットに仕舞う。
外出用の服に、後ろにはルームメイトの菊池もいるようで、2人でどこかへ出かけるのか、こんな朝早くからと思い問いかける。
「こんな朝早くから買い物行くん?」
「いやいや、朝早いって、もう10時ですよ? いま起きたんですか? 長時間睡眠は脳細胞死にますよ?」
「自分、一言多いて言われへん?」
ただ、聞いただけなのに何とも生意気な返事が返ってきた。また胡散臭い作り笑顔を(人当たりの良い笑顔を)貼り付けた彼は俺の様子を伺っているようで、なにか緊張しているような張り詰めた空気感に、緊張されるようなことをしたか、と最後に交わした会話の記憶を辿っていると隣から彼のルームメイトである菊池が顔を覗かせる。
「おはようございまっす!清水先輩」
「おん、おはようさん」
相変わらず元気の良い挨拶に心地良さを感じて、挨拶を返せば、彼らはこれからデートをすると言ってきた。
デートか…と頭に文字を浮かべれば、菊池なら遊園地とかスポーツができる人が集まる場所に行きそうだなと思い、相馬はレストランや買い物、水族館とか落ち着いた所に行きそうだと思い浮かべ、そんな2人が行くデートはどこになるのか問えば買い物だと返ってきた。
「買い物ッス、慧斗から誘われたんで!」
「ほぉ~ん」
「んじゃ!」
それだけ言って首元に腕を回された相馬は菊池に引き摺られるように寮の出口へ向かう。
「気ぃつけや」と出そうになった口を紡ぐ。何に気をつけろと言うのか考えたから。
きっと菊池の言う「デート」は相馬からすれば「ただの買い物の付き合い」なんだろうと、肩に腕を回された相馬の嫌がる様子から見て解る。ただ、何かを気にしてる様子の相馬が気にかかった。あまり外に出ない相馬が人を誘って外に出るなら、まず俺に声をかけても良かったんじゃないか?と思ったが、買い物なら学校の委員会等の出し物を探しに行くなんて、理由にもなるしな、と自己完結させ、寮長の部屋へ向かった。