BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.4 )
- 日時: 2022/01/22 21:25
- 名前: みっつまめ (ID: Btri0/Fl)
来間によって紹介されたイケメンくん、通称 相馬慧斗くんは一礼した後、目を細め口角を上げて微笑んでた。人の良さそうな笑みは周りからより注目され怒濤の質問を浴びていた。可哀相に思うがそれが転入生の定めである。
「マジでイケメンだったな」
木崎が相馬を見定めるように自身の顎を触りながら真顔で話を振ってくるため「顔はええみたいやな」と素直に返せば「お前はまたひねくれてんな~」なんて呆れた声がかけられたため、やることもなくなった食堂からさっさと退席させてもらおうと食器の乗ったお盆を返却口に返す。
ズボンのポケットに両手を突っ込み、この後の予定を考えながら自室へ歩みを進めていると、くいっと服が引かれ体が止まる。振り向けば俺の服の裾ひっつかんだ相馬が俺を見て、少しだけ目を見開いて何かを言おうと口をはくはく震わせていた。
「…なんや」
いきなりの転入生の行動に周囲に居た寮生も驚いているのか辺りが静まりかえっている。なかなか切り出さない相馬に、物理的に引き留められている俺から問いかければ小さくも「あの」と声を出した。
「あの…サトシ兄ちゃん、だよね?」
「「「聡志兄ちゃん!!?」」」
「…は?」
相馬が「サトシ兄ちゃん」なんて言うから寮生全員声を揃えて驚いた。
いや、俺ですら驚いてんねん…初対面の相手から“兄ちゃん”呼ばわりされて驚かん奴おらんやろ…第一、俺には兄貴しかおらん
なんて返答すべきか思考を巡らせていると、眉を少しだけ寄せた相馬は「あれっ?」と疑問を抱く表情に変わり、質問を変えた。
「おれのこと、覚えてない…?」
この質問に返せる台詞は1つしか思い浮かばず、後頭部を掻きながらなるべく相手を傷つけないように言葉を選んだ。
「あー…人違いと違うかな? おれら初対面やろ?」
そう言うと黙った相馬の視線は少しずつ下を向き、顔に影がかかってどんな表情をしているか分からず様子を伺おうと顔を傾ければ、掴んでいた服の裾からパッと手を離した相馬が顔を上げた。
「…いやぁ~あまりにも知り合いに似てたもんですから、すいません」
「…え、いや…別にええけど」
顔を上げた相馬は先ほどまで皆に見せていた人の良い笑みを浮かべていた。張り詰めていた空気が、相馬の軽妙な口調にどっと安堵感が流れ、所々でホッと息を吐く音が聞こえた。俺はその相馬の笑った表情に少しだけ違和感を抱いたが、気のせいだと思うことにして、また相馬への質問攻めが始まるのを背中に自室へ戻った。