BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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満月物語【RKRN】*こへ滝*
日時: 2015/10/14 13:17
名前: 伊京-凝兵渙慌- (ID: F08K/Z64)

お初にお目にかかります。


名字は【伊】で【カナハジメ】、
名前は【京】で【ケイ】、

合わせて【カナハジメケイ】

と申します。


少し切なくて、
少し暖かい、
そして淡く恋をする・・・


満月物語は、
そんな小説です。


目線は滝夜叉丸。


他キャラも出てきますが、
滝と小平太がメインです。


死ネタ、トリップ、年齢操作・・・


色々ごちゃごちゃしてますが、
苦手でなければ見ていって下さい。

Re: 満月物語【RKRN】*こへ滝* ( No.2 )
日時: 2015/10/14 13:17
名前: 伊京 (ID: F08K/Z64)

ほのかに背後が、橙色になっていく夜の森。
炎がパチパチと、爆ぜる音が聞こえる。
追っ手の放った火が、いつの間にか燃え広がっていた様だ。
私はそんな中を、怪我を負った先輩に肩を貸しながら進んでいた。

小)「滝夜叉丸...下ろしてくれ...」

不意に先輩が、いつもの溌剌とした声とは裏腹な、か細い声で呟いた。

滝)「でも、七松先輩...っ」
小)「頼む...下ろして...くれないか......」

私は仕方無く先輩を下ろし落ち葉の敷き積もった地面に寝かせ、上半身を支えるように抱きかかえた。

滝)「先輩...」
小)「お前...、怪我はしてないか...?」
滝)「私は平気です...先輩が、守って下さいましたから...」
小)「そうか...」

目を閉じる先輩を目の前に、私は頬から止めどなく涙を伝わせていた。

滝)「七松先輩っ...!」

元はと言えば、私がいけなかった。
私が任務を終えた後に、もっと周りに注意を払っていれば、城の衛兵に気が付かれたりはしなかったのに...。
気が付かれたばかりに、衛兵に追われ、そして未熟な私は自分の身すら守れず、先輩が私を狙った火縄銃の弾から私を庇い......。
頭巾を包帯代わりに患部に巻いたが、傷口から溢れる血は止まることを知らない。

小)「何を泣いている...?」

息も絶え絶えに、されど優しく微笑んで、先輩は私の頬を撫でた。

滝)「わ...私がもっと...注意を払っていれば...こんなことには...!」

しゃくりあげながら、私は言う。
追われている身であることは、もうすっかり忘れていた。

小)「気にするな...!失敗は...誰にだってある...」

とても苦しそうなのに、あたかも平気なように振る舞う先輩の姿が、余計に辛くさせる。

小)「私だって悪いのだ...お前に任せきりにして...自ら注意を払おうと...しなかったのだから...」
滝)「そんな...っ!先輩は悪くありませんっ!」

声を押し殺し、叫ぶ。
悔しさ、辛さ、悲しさ、負の感情が入り乱れたものを、全て吐き出すの如く。

小)「とにかく、だ...」
滝)「...?」
小)「お前は...早いとこ逃げろ...」
滝)「何を仰って...」
小)「私はもう...城に帰ることは出来ない...だから...せめてお前だけでも...」
滝)「出来ません!そんなっ...先輩を置いてなど......私も一緒に死にますっ...!」
小)「莫迦言うな!...二人とも死んでしまったら...手に入れた情報が...無駄になってしまうだろう.....?」

細かいことは気にするな、を座右の銘としている先輩が、珍しく声を荒らげる。

滝)「しかしっ...」
小)「口答えはするな...!断固として...認めないぞ...」
滝)「先輩......」

軽く起こられることはあっても、こんなに厳しく叱られたことは、今までで一度もない。
どんなときも明るく、たくましく、後輩にも優しく接してくれる先輩。
だから、こんな怖い顔は、滅多に見たことがない。

小)「いいな...お前だけでも城に帰り...情報を伝えるのだ......それに......」
滝)「それに...?」
小)「滝夜叉丸...お前には生きてて欲しいのだ......私の大切な...後輩なのだからな......!」

先輩の笑った顔に、はたはたと涙が落ちる。
私は思い切り、先輩を抱き締めた。
遠くでは、

『おーい!居たぞ!!』

と叫ぶ、追っ手の声が聞こえる。

小)「ほら滝夜叉丸...来ているぞ...早くしなければ......」

先輩が耳元で囁く。
私は涙を服の袖で拭い、ぼやけた視界で先輩を見詰めた。

滝)「は...はい......っ!」
小)「達者でな......そして...私のことを...忘れるな......」


そっと先輩を寝かせ、立ち上がる。
振り返ると、追っ手はかなり近くまで迫ってきていた。

小)「行け...滝夜叉丸...」

嫌だと言いたい、先輩と共に逝けるなら私はそれで構わない。
しかし、そんなことを言っても、到底許しては貰えないだろう。

滝)「決して...決して私は...貴方を忘れはしません......!」

先輩は満足そうに頷いた。
ゆっくりと再び目蓋を閉じていく。
離れたくはない。
が、私に生きていてほしい、というのが先輩の最後の望みだとしたら...……私はそれを全うしなければいけないのだと思う。

滝)「いつかまた...どこかで私と出逢って下さい...」

私はそう言うと、高く跳んだ。
手近な木の太い枝に跳び移り、振り替えることもせずに、ひたすらに木々の上を移動し続けた。
背後で騒がしい声がする。
追っ手が先輩を見付けたに違いない。
私の目からは、またも涙が溢れてくる。
拭うことなく、先を急いだ。
急に、木々がなくなり、道や小さな民家が現れた。
どうやら森を抜けたらしい。
顔を上げると、こんな最悪な夜でも綺麗に輝く満月が、涙に滲んで映った。

滝)「七松先輩......」

嗚呼、月はなんて美しく、憎たらしいんだろう。
私は月に、声無き叫びを上げる。











『出逢ったのが、こんな戦乱の世でなかったら』










『満月物語』
write:伊京-カナハジメケイ-

Re: 満月物語【RKRN】*こへ滝* ( No.3 )
日時: 2015/10/14 13:19
名前: 伊京 (ID: F08K/Z64)

私と七松先輩は、忍術学園という、忍を育てる山奥の学舎で出逢った。
花形委員会と称す体育委員会の委員長が、七松先輩、私が委員であったため、七松先輩と関わる機会は多かった。
獣のように、どこまでも突き進んでいく七松先輩。
先輩の行動についていけないときも多々あったが、それでも私は、七松先輩の背中を追いかけ続けた。
野山を連れ回されたことだって、今では幸せな思い出だ。



…………いつの間にか、七松先輩は私の憧れとなっていた。



どこまでも、その背中を追いかけていきたいといつしか思うようになっていた。
先輩が六年生となり、卒業の日。
本来、自分の就職する城を後輩に教えるのは御法度であるが、私は先輩に頭を下げ、どこに就職するのかを教えてもらった。
どうしても、先輩のお側にいたかったからだ。
二年経ち、私も卒業し、先輩と同じ城に就職をすることができた。
あの時、先輩が白い歯を光らせて笑い、頭をぐりぐりと撫でてくれたことを、今でもはっきりと覚えている。
また近くにいれることが、どれ程嬉しかったか。
活動を共に出来ることに、どれ程の喜びを感じたことか。
様々な任務を二人でこなし、様々な時間を二人で過ごし、あっという間に三年が過ぎていた。




私が十八、先輩は二十になる年。
あの悲劇が降りかかる。
美しく輝く満月の夜のこと。
先輩は、任務中に亡くなった。
先輩が二十を迎える誕生日であったことに、その後気が付いた。




あれから一ヶ月が経つ。
私は志願退職をした。
引き留める声も掛けてもらったが、隊が七松先輩を失った責任は私にあるとし、辞めさせていただいた。


現在私は……山の麓の家でひっそりと暮らしている。


目立つこともなく、誰かと交流も持たず、ただただ、ひっそりと。
学園にいたときの私とは、まるで反対の生活だ。
しかしこれで良い。
今は、先輩のいない寂しさ、悲しさ、悔しさを噛み締め、一人で静かに過ごしたい。

滝)「満月……か…………」

七松先輩と過ごした最後の夜も、こんな満月だった。
輝いていて、美しくて、憎らしい。
月は私の想いなど知らない。
私の想いなど、届けてくれない。
そう思った時だった。

滝)「なんだ……あれは……?」

月明かりに照らされ、何やら光るものが縁側から見えた。
近づいてみる。
するとそこには、

滝)「穴……?」

まるで月がそのまま地面に映ったような、大きくて、銀色に輝く穴が、口を広げていた。
不審に思い、覗き込んでみると、どこまで続いているのか、思った以上に深い。
瞬間、

滝)「…………え……?」

強い風が、私の背中を押した。
足を一歩踏み出す。
そこに…………地面はない。

滝)「え?えぇぇぇぇぇ?!」

落ちてる、どんどん落ちていく。
物凄い早さで、風を切って。
穴の底へ、底へ。
嫌だ……私はどうなってしまう?
誰か助けて……誰か……








滝)「助けて……七松先輩ぃぃぃぃ…………!!!」

Re: 満月物語【RKRN】*こへ滝* ( No.4 )
日時: 2015/10/14 14:13
名前: 伊京 (ID: F08K/Z64)

滝)「せんぱい…………七松先輩…………」
?)「平気だ、私はここにいるぞ」
滝)「……っ?!」

聞き覚えのある声に飛び起きる。
すると…………私は奇妙キテレツ摩訶不思議な場所にいた。
棚みたいなものがあり、その上には黒い箱があって……脇には小さな絵が立てて飾ってある。
布団もかなり上等なもののようで、私が普段使っているものとは比にならないくらい寝心地が良い。
そして目の前には……

滝)「七松…………先輩…………」

七松先輩【らしき】人が。

?)「大丈夫か?近所の公園で倒れていたんだぞ?服はかなり汚れていたから、洗濯してる」

言われてみて気がついたが、私は来ていた服ではなく、何やらよく解らない服装をしていた。
鮮やかな緑色の長袖の服と、同じく緑色の袴のようなもの。

?)「取り合えず、昔私が使っていたジャージだ。お古だが、細かいことは気にするな!」

その声……その言葉……それはまさしく……

滝)「貴方は…………七松小平太先輩…………」
小)「ああ、私は七松小平太だ……。お前は……滝夜叉丸、そうだな?」
滝)「はい。……だけどどうして七松先輩が?先輩は……任務中に亡くなられたのでは……?もしかして私も……?」

そう……先輩が生きておられる筈がない。
つまり私も……死んでしまったというのか?

小)「そうか……あんなことが起こった後だったのだな……。安心しろ!お前は死んだ訳じゃないぞ!」
滝)「でも……」
小)「何と言えば良いか……こればっかりは気にするなとも言えんしな……簡単に言えば、お前は時を越えてきた、という感じかな?」

私は死んではないのか?
時を越えてきた?
どう言うことなんだろう?

小)「今は平成という時代だ。お前が来た時代から、約八百年後の世界になる。」

…………?
……八百年後の……世界?!?!

滝)「えぇぇぇぇぇぇ?!?!?!?!」

そんな話……どうやって信じろと言うのだ?!?!

Re: 満月物語【RKRN】*こへ滝* ( No.5 )
日時: 2015/10/14 14:17
名前: 伊京 ◆K.l2Ea6NkY (ID: F08K/Z64)

それからかくかくしかじかと、七松先輩を語る人から説明を受けた。
話によると、こういうこと。


一、私がやって来た世界は、私が住んでいた世界から八百年後の世界だった。

二、この世界は平成という時代らしく、目の前にいるこの人は、七松先輩の生まれ変わりである。

三、生まれ変わる前の記憶は鮮明に残っており、学園のことも就職した城も自分の死に際もすべて覚えている。


簡単に言えばこんな感じだ。
生まれ変わりだ、という言葉を、私は最初疑った。
だが、試しに私と七松先輩しか知らないはずの、先輩の死に際について聞くと、

滝)「貴方が死ぬ間際に……私に何と言ったか覚えていますか……?」
小)「私のことを忘れるな、行け、滝夜叉丸……そう言った。」
滝)「では、私が最後に言った言葉は……?」
小)「いつかまた、どこかで私と出逢ってください……ではなかったか?」

見事に当てられてしまったのだ。

滝)「御名答…………」

これはもう、生まれ変わりの言葉を信じざるを得ない。

小)「疑うな、私はお前が知っている七松小平太とほとんど変わらん。……というか同一人物だ!姿は少し現代風だがな」
滝)「はあ……」

(服装や髪型はともかく)見た目も声も表情も、全て私の知っている七松先輩。
私の憧れていた、七松先輩そのものだ。
信じない方が、逆に難しいかもしれない。

小)「さて!今日はもう遅い。聞きたいことは色々あるだろうが、ひとまずそれは明日にしよう。」
滝)「あの……私はどうすれば……」
小)「その布団、使っていて良いぞ!私は隣に別のを敷くから…………と思ったが布団はそれ一つしかないので……」

すると七松先輩は、

滝)「にょわっ?!」

布団の中に潜り込んできた?!

小)「こうさせてくれ!良いだろう?城では一緒に寝たりもしたのだから」
滝)「構いませんがいきなり……?!」
小)「……ぐぅ……」
滝)「寝るなぁぁ!?!?」

私の腰に腕を回し、まるで人形を抱くようにする七松先輩。

滝)「……全く……」

先輩の髪の毛を撫でる。
かなり短くはなっているが、手触りは変わらず、私が知っているままだ。

小)「温いな…………滝…………」

寝言を呟く。
…………?
滝…………?

滝)「それ……誰のことですか……?」

Re: 満月物語【RKRN】*こへ滝* ( No.6 )
日時: 2015/10/15 16:12
名前: 伊京 (ID: 4R6/w/z4)

小)「…………叉丸……滝夜叉丸!」
滝)「っ?!」

揺り起こされ、名前を呼ばれ、飛び起きた私。

見渡すと…………いつもの私の家に戻っていることはなく、昨日やって来た、八百年後の七松先輩の家だった。

それもそのはず。

私を起こした張本人は、七松先輩なのだから。

滝)「お……おはようございます……七松先輩……」
小)「おはよう、滝夜叉丸!よく眠れたか?」
滝)「ええ、何とか……。」

先輩は、どうやら私が起きるかなり前から起きていたらしい。

服を着替え、髪の毛を幾らか整えていらっしゃる。

相変わらず、癖があってもしゃもしゃふわふわしているが……。

小)「朝御飯、できてるぞ!それから、着替えはそこに置いてある」
滝)「あ、はい……」

私が寝ていた布団の傍らには、丁寧に畳まれた衣服らしきものが置いてあった。

卓袱台の足が長くなったような棚(?)の上には、湯気のたった焼き鮭やら味噌汁が並ぶ。

小)「私が前に着ていた服だ。お前には、少し大きいかもしれないな」

言われて服を手に取る。

…………小袖や袴に似たものの様だが…………、

小)「着方、解るか?」

私の性格上、解らないと言うのは嫌だったが、

滝)「……解りません……」

ここは素直に、首を横に振った。

小)「仕方ないなぁ……。その袴みたいなやつは、袴と同じように履くだけだ!」
滝)「……こう……ですか……?」
小)「そうだ。そこの金具を止めて…………そうそう。次に上だな!いくぞ、そーれ!いけいけどんどーんっ!!!」

《ばっ!》

滝)「うわぁぁぁぁぁぁ?!?!?!七松先輩ぃぃぃ?!?!?!」

先輩は、私が着ていた長袖を無理矢理脱がせた。

滝)「何するんですかっ?!?!」
小)「細かいことは気にするな!ほら、腕を上げろ!」
滝)「腕ですか?……はい」

《ぼふっ》

滝)「うわっ」
小)「……これでよし!うん、どんな服を着ても似合うな、滝夜叉丸は!」

わしゃわしゃと、私の頭を撫でる七松先輩。

滝)「…………。」

私は黙って、されるがままにしていた。

小)「さて……」

不意に頭から手が離れる。

小)「朝御飯、食べるとしようか?」
滝)「……はい」






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