BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 隣人と俺。
- 日時: 2016/11/12 00:22
- 名前: 優斗 (ID: LHB2R4qF)
DK×サラリーマン
- Re: 隣人と俺。 ( No.1 )
- 日時: 2016/05/15 01:05
- 名前: 優斗 (ID: kDko/hPR)
蛙がわめき散らす田んぼの畦道。綱渡りのようだが、夜になってしまえば、とんだハードモードに成り代わる。
物語は、この、靴を気にし、おぼつかない様子でよちよち歩く本田という男から始まった。ある意味隣人の男、鬼頭豊太が本田に好意を抱いていることは、本田のなかでは有名な話だ。物好きも居たものだと感心するまでに至る。
「…ああ、やっと出られた…」早く家に帰りたい、付け足した本田がスマホに目を落とした。こんなに明るいのに、もうすっかり夜。夏とは末恐ろしいものだ。
それにつけても外は暑い。背中をストーブで炙られているような感覚に陥る。唾をはいてやろうと空に視線を向けると、太陽がそんな様の自分を見下ろしていた。
「おーい!」絶叫の方向を見ると、太陽よりも面倒な奴が自転車でこちらに向かってくる。「…あ!!あからさまに嫌そうな顔をしないでくださあーい!」あらかさまに嫌そうな顔がよく見えたなあ、今度は振り返らずに家路を目指した。
- Re: 隣人と俺。 ( No.2 )
- 日時: 2016/05/21 23:45
- 名前: 優斗 (ID: CQQxIRdY)
隣人と俺。
死んだ親父の田舎の家。それは、二人で暮らすには大きすぎる。
あちらからの荷物は全て運び終えた。が、元の家が小さかったせいか、まだ少し部屋が余っているくらい。…すぐに余った部屋も埋まるのだろう。子供の成長とは光の早さだ。
じじいになったものだ。感心して、目を細くした。
「ね」肩にそっと、何かが触れる。「トシさん」…昴稜子だ。未来の妻が微笑みかける。この現実に満足していた。可もなく不可もない、ただ、平穏無事な人生を歩んでいける。その幸福が満足だ。
口紅を塗らずとも、ふっくら膨らみ、いつしか三度目を奪えるであろう唇を、彼女が動かした。それを見るだけで、なんとも幸せなことか。
「…別れましょう」
水風船のような自分に針を突き刺した稜子が、あの美しい笑みで「別れましょう」と、停止した僕に言い聞かせた。「別れましょう?」今度はトーンを変えて、二度目を言った。自分は耳に蓋をした。
完璧な見ざる、聞かざる、言わざるの僕に、「貴方は、私のこと、本当に愛していない」こう付け加えて、僕はKOした。
口が震え、冷や汗が体を伝い、喉の奥は今日の昼食が逆流し、今にも吐きそうな状況だ。かろうじて出た声にすべてをのせる「そんなことない」
「…分かってる。愛しているのは分かってるの…でも……」
「…………」
「今までありがとう。また、ピアノ、聴かせてね…」
彼女は最後まで笑って、僕の車で遠くで揺らいだ。ダサい家族用の大きな車だ。いきなりのことすぎて、立ち竦む僕は、まだ認めてすらいないのに。
自分に残されたものは、親父が残した、白い汚れた軽トラックと、馬鹿みたいにデカイ家と、金と二人ぶんの家具。
どうしろと言うのだ。このまま朝を迎えて、死ぬのを待つのみか。
「……ーう……おー…い………」
やれやれ、もう幻聴か。こちとら死ぬ準備はすでに万全だ。待ち構えてバッチコイ、言わんばかりに目をつむる。「おーーうい!!!!」音が近づいて、カッと目を見開いた。
「殺せ!!」叫んだ僕の声が、蝉にもみくちゃにされて、消えた。「…ええ?」
「分かってる…おかしな奴だと思うのは。しかし、俺はもう死ななければ…介錯だと思え、俺が腹をさくあいだ、君はそのチャリで俺の頭を殴れ!」
「ええ!?」
「早く…」その時僕は泣いていた。ぼやけて、自転車に乗る高校生のかおがやけに滑稽に見える。
手をバタバタさせて、戸惑う彼は自転車を徐に掴んだ。それでいいと、心から思う。「え…えと……殺す前に言いたいことがあるんで…それだけ…」
「なんだァァ!!」泣いて、訳がわからなくなった。
「……ここ、僕のおばあちゃんの家なんですゥ!!多分住所間違ってます…ではいきま」
ごつりとおとがして、ここからはおぼえていない。
- Re: 隣人と俺。 ( No.3 )
- 日時: 2016/11/12 00:55
- 名前: 優斗 (ID: VhEnEiwQ)
彼はへこんだ白い自転車を引きずり、また僕の目の前に現れた。なんだ夢か。いや、死人は夢を見ないんだ。
…なんだろうか、上を向いて口をパクパク大きく動かして、金魚がえさを食うみたいな顔で手をじたばたしている。彼は何を伝えようとしているのだろうか。
それにしても美しい。死んだあととはこんなにも素晴らしい場所が見られるのだな。ならば生きてなどいたくない。
美しい緑を遮って、今度はしわくちゃの顔。優しそうな顔のおばあさん。おばあさんは僕の顔をシワの多い細い目でじっと見ては、瞬きを繰り返し、それを二、三回すると顔を上げて何か話している。…暫くして、僕の顔に手が触れた。おばあさんの手だ。冷たい。
親指で数回僕の頬を撫でると、どこかへ消えてしまった。
「………かな…」若い声がした。男の声だ。「…ああ、死んでは……けど…気絶す…とは…」ぼんやりとだが、この声に聞き覚えがある。あの自転車の彼のとのだ。納得していると、ふにゃりとした感触が頬の上でした。彼の指が僕の頬に触れているのだ。「…こんなにも………なのに………なんて、なあ」何かぼそぼそ話しかけているようだが、僕には…途切れ途切れにしか聞こえなかった。彼は物凄く残念な顔をしている。炎天下に晒された草みたいな、そんな感じ。
彼の熱い汗ばんだ手のひらが頬に触れている間、ぼんやりとしか見えない彼はずっとこちらを見ていた。しかし、そろそろ目をつぶらなければ。
潔く死ぬべきだと、僕は逃げるように眠った。
次に目が覚めるときは、どうか、綺麗な景色であってほしいと願う。
……
さっぱり、腹さかれて死ねばええのに。
「うぅむ、汗が流れてきますなあ」てぬぐいで額の汗をぬぐい、ふかふかしたタオルを、横に寝転がった男にかけてやった。男は三日、魘されたままで、一日一回は必ず「すばる」と、情けない声で鳴くのである。
死人のように真っ白でも、モヤシのように細くとも、体温は必ずあって、それがまるで、中は熱い氷のように不思議だ。
祖母から聞いた話し、彼は以前この村で住んでいて、親父さんが住んでいた家の世話をしなければならないから、こちらへ越してきたそうだ。まあ、それくらいのこと、当然知っているようにして、豊太は長話をする祖母から逃げてきた。
逃げた理由は、やはりこの男。一目惚れという、世にも厄介なものが付きまとい、この男の事を毎日穴が開くくらい見つめていた。軽い口づけをしようかとも迷ったが、そこはやめておいた。
眠った男の横で、豊太は歌を歌うように「あーあ、ホンマにべっぴんさんやなあ、あー、女ならええのに、女なら堂々と言えんのにー」とじろじろ周りを見回した。「……はあ…へんたいなんか…おれえ…」横を見ると、目をつむった男。風呂に入っていない黒い髪がそわそわした風に吹かれ、そのたびに、男がんんと小さく息をする。
その姿になぜか、艶というものを覚え、豊太は赤面した。ばくばく、破裂しそうな心臓を瞬間冷却し、男の顔に触れる。「へんたいちゃいますからねえ」呟いた言葉は耳に届いたのか。
そういえば、なんかで読んだけども、自分で変と思っているうちは変じゃあ無いらしい。
いやいや、そんなはずはない。目の前の、それも五つは違うであろう、しかも男に、なぜが欲情しているのだ。高校三年生舐めるなよ。と言わんばかりに、盛りのついた犬くらいにはある性欲。だが、紳士、日本男児、武士、ニンジャ、すべての心をもってして、彼にそういうことは言わないと誓える。
しかし、唇を奪うくらいよいのでは無いか。
薄く引かれた、まるで、そう、新鮮な刺身くらいには赤い唇。これはもう食ってくれと言わんばかりにこちらに向いている(自分が向かせている)。
死体に興奮する馬鹿げた王子がいるらしいが、この男は生きている。ならば問題はなかろうて。
ごくりと生唾を飲み込み、己の固い唇をなめ回し、顔をばちんと叩いてから後ろを向いた。男の長いまつげに息が当たりそうだ。
豊太は鼻の下を伸ばし「べっぴんさんには、ちう、しなあかんねんで…そういうヤクソクなんやあ…ふへ、うへへへ」笑って、ノリで染めた髪の毛をかきあげた。ばくばくいう心臓を押し潰し、チャンスを我が物とすべく突撃していく。
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