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【おそ松さん】ピエロ(チョロ松総受け)
日時: 2016/02/04 22:02
名前: かわの (ID: cJYcwzou)

※何か色々注意。苦手な人ブラウザバック(゜ω゜)


伸ばしても届かない。そんなもの。
大きく包み込もうとも消え失せる。そんなこと。
【悪い子だ〜れ。】
知ってるクセにはぐらかすんだね。
やっぱりお前等は僕には手に負えないよ。


ガチャリ、と古びて建て付けの悪いドアノブを回して開ける。
玄関から見えるのは廊下などない只の圧迫感が迫る自分の部屋だった。
机の上には電源の切れたパソコン。積み上げられた資料。こびりついたマグカップの跡があり、その斜め後ろには2メートル程の木製のベットがあった。
床には脱ぎ捨てた衣類。
片付けなんてなんてしている暇はない。個性とも言えた潔癖性は時間が経つと共に薄れていった。
台所に向かい、冷凍庫から冷たく固まった白米を取り出す。
それをレンジで手短に解凍するとお茶漬けにして食べる。これが僕の日課。
僕はいわゆる中小企業に見事合格した。が、毎日毎日深夜に帰ってくる日々。体がどれだけ悲鳴をあげようが休めない。会社はブラック企業だった。
辞めれることなら辞めたいがそうも行かないのだ。
その理由がクソみたいな兄弟と言うのだから僕は最高に愚かだ。

会社に勤めて一ヶ月。頑張った。頑張ったよ。僕。よく耐えたね。
自分で自分を励ます。社長室の扉を控え目に2、3度叩く。応答が聞こえると、扉を重苦しく開けた。
目の前にふてぶてしく椅子に座り込んでいる男は僕の勤め先の社長だった。
お気楽だなぁ。なんて思いつつ机の上に退職願を叩きつける。
「松野チョロ松。本日付けで此処を退職させて頂きます。」
そう言い社長の返事を待つ。嫌な汗が背中を伝い、悪寒がする。
でも頭の何処かでは、次の就職先探さなきゃなぁ。何て考えていた。
「いいよ。」
意外とあっさりしたその言葉に安堵した。では、と部屋を出ようとしたした瞬間呼び止められる。この際、辞められるなら何でも聞こう。
「辞めるんならコレ、我が社にも関係無くなるしばらまいてもいいかね?」
そう言い床に散りばめられた〝コレ〟と言われた物は写真だった。僕の兄弟達の写真。昔の、遠い昔の写真。
皆学ランを着崩して血に染まり、足元には赤い赤い何がなんだか判らない人間らしきモノ。
僕達の青春が、ひた隠しにしたかった過去が、兄弟達には平穏に暮らして欲しくてずっと僕だけで抱え込んできたモノが写っていた。
「なん、・・で?・・・」
バッと顔を上げると、どういう事か分かるよね?
と言われ、僕は頷くしかなかった。社長の顔は逆光で黒く塗りつぶされていた。


そんな事があってズルズルと約半年働き続けた。
最低賃金スレスレの給料。休日出勤当たり前。残業手当ては勿論無しのそんな場所でだ。
大体何となく妥協点として受けた面接で受かってしまい、親にも兄弟にも口では何も告げず手紙だけで去ってしまったのを少し後悔した。きっと皆の顔を見たら決心が揺らいでしまうから。と一度も実家には帰っていないしそもそも帰れない。
なけなしの給料で買った淡い黄緑色の二つ折り携帯を開くと待ち受け画面には愛おしい兄弟達が写っていた。皆笑顔でピースをしている。珍しく一松も。確かトド松が撮りたいと駄々こねて皆で撮った写真だったはずだ。
写真の兄弟達の頭を軽くなぞると僕は死んだように眠りこけた。


目が覚め手探りで眼鏡を探す。光の加減によって深緑にも見える眼鏡を掛けると、かったるい体を無理矢理起こしてまた冷凍の白米でお茶漬けを口にかき込む。歯磨きをし、大分安物の紺色のスーツの上からダウンを着込んでドアを開けると
ガンッ、と鈍い音がなった。
「!?」
「おーチョロちゃん。」
目の前に居たのは僕が恋い焦がれた愛しき兄弟達。五つの同じ顔。
長男は先程打ったのか、左手で頭をさすっている。ふと周りを見渡すと皆身体中ぼろぼろだ。
「どうしたの?その痣。」
そろそろと言葉を紡ぐと有無を言わせずカラ松が僕のスーツをめくった。
其処には皆の顔についているものよりも数倍大きく、赤黒や青紫色に変色した痣。中には切り傷のようなものもあった。
僕はカラ松の手を振り払う。皆僕の身体を見て絶句しているようだった。
「何で、兄さん・・・」
一松は気怠そうにしながらも目の奥はギラリと光っていた。
僕は両手を降参のポーズにすると皆を自分の部屋に招き入れた。


皆にお茶を出すと足場も無いような部屋で大の大人6人で座る込む。
「で、何で?」
おそ松兄さんはお茶を口に含みながら問いかけてきた。
やっぱり誤魔化せないか。僕は重たくなった口を開けた。
「あのね、僕達高校生くらいの時荒れてたでしょ?で、未だに未練たらたらの人が僕を六つ子の誰かと勘違いして襲いかかってくるときがあって、そんときについた傷。そう言う奴らって好き勝手に殴らせれば満足するから好きなようにさせてたんだよね。嗚呼、見えるところにされそうになったら頑張ってガードしてた。でも兄弟がこんな目に会わなくてよかったよ。そのために僕、よく外に出かけてたから。それに・・・」
もしかしたら僕じゃなくて他の誰かが犯されてたかもされないからね。
そう言うのは止めた。何かはばかられるし、絶対面倒臭い事になるし。
皆はやはり絶句している。この程度で絶句しているのならやはり言わなくて正解だっただろう。
「なんで、にいさんがそんなコトすんすかー?」
十四松はさも分からないと言った風に首を傾げた。
「だから、兄弟を守るために・・・」
「僕たちそんなこと頼んでないし。」
トド松は不機嫌そうに頬を膨らませている。
「Myブラザー。俺達、喧嘩なら勝てるぞ?」
カラ松が宥めるように問いかける。
僕の頭の中で何かがプツリと切れた。
「五月蠅いな!!お前等なんかに分かるか?睡眠スプレーで気を失ったことを良いことに犯されたんだぞ!!いろんな奴の目の前で!動画だって撮られてやっとの思いでココまで逃げてきたんだ!僕は兄弟を見捨てたんだ!!」
もう気付いたときには遅かった。
「犯された。って何?」
一松が悲壮感を顔中に滲ませて聞かれた。
周りを囲うのはかつての僕の兄弟。大きく見開かれたその眼には殺気が漂っていた。
「アイツ等、半殺しじゃ足りねぇ。殺してやる。」
そう言ったおそ松兄さんの背中は僕が今までずっと追っていたような背中ではなかった。
僕はこれからどうなるんだろうと思ったが、この地獄みたいな日々から抜け出せるならそれも良いかもしれないと思った。


目が覚める。ここは車の中?
嗚呼、目の前に立っている兄弟達は皆真っ赤な返り血を浴びて服が紅く染め上がっている。
まるで皆おそ松兄さんだな。
なんて思った。また明日からいつも通り皆と起きて皆と寝る生活。
「会社どうしようかな。」
ポツリと呟くと
「ワーカーホリックだねぇ。大丈夫。兄さんを苦しめるものはぜ〜んぶ壊してあげる♪」
と、トド松がスマホの画面を見せる。そこには数字の羅列。
トド松のことだからきっとウィルスでも送ったのだろう。分からないけど。
「「「「「おかえり。」」」」」
そう言った皆の顔は僕への愛で歪んでいた。


僕が好きな本にピエロの話がある。
【ある日ピエロは主人公に成りたいと望んだ。それはとっても浅ましく、愚かな夢だった。
ある日ピエロはショーで失敗した。綱渡りで綱から落ちてしまったのだ。
ピエロは右腕が使えなくなった。
ある日ピエロは屋根から飛び降りた。こうして自分が注目を浴びればし主人公になれると思ったからだ。ピエロは醜い顔になった。
ある日ピエロは主人公にはヒロインが必要だと思った。だがこんな醜い身体ではピエロを愛してくれる女はいなかった。ピエロは悔しくては悔しくて目の前にいた女を刺し殺した。その女は自分の母だった。
ある日ピエロは処刑されることになった。
ピエロは「ただ主人公に成りたかっただけなのに。」
と処刑台の上で嘆いたが誰も相手にしてくれなかった。
その日醜い顔だけが処刑台の上にあった。】
と、残酷な話である。只、どこかこのピエロと共鳴した気がするのだ。
「上の空だねぇ。」
そう言った男の手を握ると男は満足げに笑った。
僕の場合ピエロは僕じゃなくて僕を抱いてる男の事なんだけどね。
つーかお前たちがヤってることお前たちが殺しかけた奴らと一緒じゃない?
って言うツッコミは無しと言うことで。
主人公は僕だ。いくら兄弟でもこの地位は譲らない。
お前たちなんか


「だいきらいだよ。」


そのとき彼が伸ばした手は虚しく空を裂いて落ちていった。
彼の頬は濡れてたかもね。
なんでかって?そんなの彼が〝存在〟してた時に聞いてよ。
俺達の物語は俺達〝ピエロ〟が勝ったんだからさぁ。

【誰も処刑台の上にある顔がピエロのなんて言ってないんだから。】

                                 fin


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