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【おそ松さん】線(おそチョロ)
日時: 2016/02/07 12:06
名前: かわの (ID: cJYcwzou)

※おそ松視点。深夜テンションこわぃ(確信)。要はノリと勢い。以上苦手な人ブラウザバック(゜ω゜)



意外と頑固だよねぇ。
幾ら壊しても壊れない。
そう言ったのは俺が愛する弟。愛しい人。恋しい人。
嗚呼、なんて惨めなんだろう。その手に刻まれた線はお前を語ってたよ。


おーい。ひーまー、なんていつものようにソイツに抱きつく。
ソイツはへの字の口を更に下げて、おお直角!なんて感動(?)していると俺に対してへにゃりと笑った。ソイツの背中の温もりを感じつつ尊いなぁ。なんてボンヤリ考えていた。
そんとき俺はお前の苦痛なんて知らなかったんだ。


最近チョロ松が皆と風呂に入らなくなった。
何だかそそくさと一人だけで家のせまーい風呂に入っている。
たまには家でのんびりしたいのかねぇ。
なんて皆で話していたが違う。いつまで経ってもアイツは俺達と銭湯に行かなかった。
流石に怪しい。アイツは何かを隠している。
俺の頭の中である考えが過ぎった。
【教えてくんねーなら見ればいいんだ。】と

チョロ松はいつも俺達が銭湯に行ってる間に風呂に入ってるハズだ。
いつものようにチョロ松を除いた皆と銭湯に行くフリをする。
吐いた息は白くなり、寒空に同化して薄れていく。
銭湯まであと10メートルと言うところで少し焦った演技をした。
皆がどうしたの?と聞いてくるのを
「ああワリィ。金忘れてきたから取ってくるわ。先入ってて。」
と適当に理由をつける。皆からしょうがないなー。みたいな声が聞こえた。
時間がない。足早に家に向かい走ろうとすると
「兄貴!!」
なんて呼び止められる声が後ろから聞こえた。
ワリィ。今、構ってられねーわ。カラ松。
心の中で謝罪しとくと走るスピードをあげた。


俺は誰にも見つからないようにこっそりと忍び足で家に入ると、脱衣所へと歩を進める。
戸のちょっとした隙間から覗き込むと、そこには丁度チョロ松が服を脱いでいるところだった。
するりとパーカーを脱ぎ捨て、Yシャツのボタンに手を掛けている。
少し暗い照明がところどころチョロ松を照らして色気がムンムンたっていた。
幸いコチラに気付いていないようだが、腰を屈めるこの体制は割とキツい。
そのまま観察し続けるとお風呂場から啜り泣く声がシャワーの音の合間から聞こえた。
泣いてるのか?チョロ松。
そう問いかけたかったがバレてしまっては元も子もない。
少し心苦しいが受け流した。
そうこうしている内にチョロ松が風呂からあがる。
とても湯上がりとは思えないような苦悶の表情を浮かべて。
泣いていた。湯気の立つその身体はところどころ切り傷があり、濃かったり薄かったり大きかったりと様々な切り傷が主に腕や脚に沢山あった。
過呼吸になりそうな程悲しく泣き続けるチョロ松は手元にあったバスタオルの中からカッターを取り出した。
チキチキ、と出てきた刃の先をチョロ松は助けを乞うような目で見つめていた。
カッターを右手に握るとチョロ松は容赦なく己の左手を切った。
一回、二回、三回と最初は只の白い線がだんだん紅くなり、最終的には血がポツリと脱衣所の床に垂れた。
チョロ松は悔しそうに涙を流すと、直に落ち着いたのか血の出る左手で顔を拭い、自分に対してなのか嘲笑した。
俺はただ呆然と見ているしかなくてそれと共に何も知らなかった自分を責めた。
−−何が長男様だよ。
握り締めた拳は爪が食い込んでじんわりと血が垂れていくのが分かった。


今日はと言うか、いつも暇な俺は居間で頬杖をついていた。
ちゃぶ台の上には白紙の紙とボールペン。
俺はボールペンを手に取りクルリと回した。
紙に〝チョロ松〟と書き込み、何度も丸で囲う。
最早ショートしてしまった俺の頭ではグルグルと一昨日の事がフィルムのように途切れ途切れで永遠リピート中だ。
そこに丁度ハロワ帰りらしきいつものスーツ姿のチョロ松が帰ってきた。二階に行こうとするチョロ松を呼び止めて俺の目の前に座らせる。
何も言ってないのに何故か正座姿のチョロ松にまず揺さぶりをかける事にした。
「なぁ、最近なんで俺達と銭湯行かないの?」
お得意のへらへらした顔で問うが、相手には少々威圧感があったようだ。
「なんか。最近一人の時間が欲しいなぁって思って。」
目を逸らされたのが気に食わないが一応、へぇ〜とだけ答えておいた。
「あのさ、腕見せてよ。」
そう言うとチョロ松は分かり易くたじろいだ。まあそうなるよね。ただ此処で大人しく打ち明けてくれれば許さない事もない。
「なんで・・・」
その目には困惑と悲しみが入り乱れている。
「・・・いやだ。」
そう言ったチョロ松は無意識なのか自分の腕をギュウと握っていた。それが俺の癪に触った。なんで俺じゃないの?なんでお前のストレスの捌け口が俺じゃなくてお前自身なの?なんで俺じゃダメなの?
勝手に手が動いてチョロ松の服を引っ張った。立ち上がって逃げようとするチョロ松。全てがスローモーションに見える。ビリッと言う音と共にチョロ松の服の袖が肘の中心程まで破れた。新しい傷。消えずに茶色く変色した傷。全てが見えた。チョロ松は腕を引き、俺から隠すと怒って俺を叩こうとする。でも俺は自分でもヒく位冷静でいつもは到底避けられないその攻撃を片手で受け止めた。
相手は勿論困惑していたが、そんなこと知らねー。
嗚呼、俺は壊れてしまったんだ。
「何?この傷?」
どす黒い感情と一緒に吐いたその言葉はたったそれだけだった。


重い口がようやく開く。嗚咽し、震える唇で爪を噛み続ける彼の声はとても小さかった。
「僕は・・・リストカットしてる。」
うん。知ってる。
「何で?」
さも知らない風に理由を問う。俺は笑えているのだろうか。
「・・・最初はちょっとした出来心で就活辛いからやってた。でも怖くて手首は傷付けられなくてずっと腕ばっかり切ってる・・・血が出たときにストレスが流れて行くのが分かって安心して、悲しくて、嬉しくて、気持ちよくて感情がごちゃ混ぜになった。」
その言葉を聞いて頭がガンガン唸る。それでも言葉を紡ぐチョロ松は何処か楽しんでいるようにも見えた。
「それからは依存したみたいに色々な場所を切るようになった。」
なんで?そんなにわらってんだちょろまつ。
「意外と頑固だよねぇ。
幾ら壊しても壊れない。」
僕も〝お前も〟
そう聞こえたのは俺の幻聴か。そうでいて欲しかった。
なんでお前、嗤いながら泣いてんだよ。チョロ松。
頭が警告を鳴らす。この線を越えてはならない。と、でもそんな事は俺にとってはたわいも無い事で、手を伸ばしてしまったんだ。一番伸ばしてはいけない存在に。その果実に。
視界は霞んで、俺のパーカーは濡れていた。


いつものように手を握る。指を絡め合うと紅い痕を首筋に付けた。
見上げると気持ちよさそうな顔をした弟。
腕には日に日に増える傷。深い深い傷。
俺と寝る度に増えるその傷はチョロ松そのものだった。
しがらみに囚われて何も出来ないチョロ松に。
お前の痛みは俺の痛み。
お前の半身は俺だ。あんなイタい奴じゃない。
ぜーんぶぜーんぶ俺のモン。
俺はガリッとチョロ松の肩に食いついた。
滲む血すらも愛おしそうに見つめるチョロ松は俺の指を物欲しそうにくわえた。
嗚呼、愛おしい我が兄弟よ。俺はとんでもない罪を犯してしまったようです。
熟れた果実はその内黒くなって朽ち果てる。
幸せな未来なんて俺達には訪れやしない。
ぐしゃりとあのとき踏みつぶした果実は俺自身。
ズボンのポケットからカッターを取り出すと呟いた。



「一緒に逝こうね。チョロちゃん。」



ある家から血を流した男二人の亡骸が四人の男に発見された。
死に顔はどちらも穏やかだったと言う。

                                fin


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