BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 【おそ松さん】常識人(チョロ松総受け)
- 日時: 2016/02/11 23:26
- 名前: かわの (ID: cJYcwzou)
※一チョロ要素強め。若干R18。以上苦手な人ブラウザバック(゜ω゜)
人間って悲しい感情をため込むとおかしくなるんだって。
風が吹いて肌寒い日に河原でぽつりと一松が呟いた。
ふーん。それで?
僕は六つ摘んだタンポポの花びらを見つめながら適当に返事をした。
俺は兄さんがーーーーだよ。
その声は風にかき消されて聞こえなかった。
六つのタンポポもその風と一緒に翔んでいった。
僕はスーパーで文房具コーナーに立ち寄っていた。
鉛筆やノートが並ぶ中で僕はカッターを手に取った。透明で何の変哲も無い、切れ味の悪そうな安物のカッター。
僕はそれを持ち、レジへと足を向けた。
先ほど買ったカッターをポケットに突っ込む。
すれ違う車を虚ろな目で見ると、僕は歩き出した。
フラフラと覚束無い足取り歩くと、身を預けるように前のめりにまた歩く。
僕は目的地の崖にたどり着くとしゃがみこみ、今までのことを頭の中で思い出す。
嗚呼、最悪な記憶しかないな。
そう思うと身体の奥底から熱い何かが這い上がって来て、目から何かがこぼれた。
ただただ背中を丸め込んでグスグスと泣いて肩を震わせる。こんなことしか出来ない自分が不甲斐なくて止めようにも涙は止まらない。
ポケットからカッターを取り出し、自分の手首に向ける。
でも手が震えるだけで切れはしなかった。
何度もそんな作業を繰り返すと、諦めの念が湧いてきてカッターを投げつけた。
僕は近くの海へと駆け寄ると海の中へ飛び込んだ。
水中で身体を丸めるとどんどん深いところへ沈むのが分かった。
ぶくぶくと泡が口から出る。伸ばした手の先には明るい光。
遠のいていく記憶に沿うように僕は目を閉じた。
ザバーン、波の音が遠くから聞こえた。どんどん近くなるその音に僕は目をあけるとそこは浜辺だった。
最悪。失敗だ。 僕はずぶ濡れの服の端を搾る。
いつの間にか浜辺に打ち上げられたらしい。それにしてもこんな寒い日にずぶ濡れだと流石に辛い。ジンジンと霜焼けのように感覚が無くなっていくのを僕は惨めだと思った。
「ただいま。」
ぽつりと呟くと十四松が勢いよく飛びつく。
「おかえりー!なんでぬれてんすか〜?」
その声が聞こえたのか皆がひょっこり居間から顔を出した。
本当に最悪。
「なぁ、何か最近お前帰ってくんの遅くねぇ?」
おそ松兄さんは笑いながらもどこか探るように問いかける。
僕はぐしゃりと髪をかくと、知らない とだけ答えた。
視界の端には一松の不安そうな顔。
そんな顔しないでよ。僕は両手で目を塞いだ。
お風呂にぽちゃりとアヒルのオモチャが浮いている。
狭い湯船に浸かると僕はお湯の中に身体をすっぽりと沈めた。
程良い熱さのお湯は僕をまた眠くさせた。
ゆっくりと目を閉じると僕の感情が脳裏を過ぎた。
〝僕は常識人〟
と言う考えが僕の中を渦巻く。
僕はいつから〝常識人〟なんてモノに成ったのだろう。
狭い檻の中に僕を閉じ込めて黒い黒い感情を胸の中に押しつぶす。
ーーー人間って悲しい感情をため込むとおかしくなるんだって。
今更一松の言葉の意味が分かった様な気がする。
きっとあのときお前が僕に言った言葉は〝しんぱい〟だろ?
もう心配されても戻れない程度には僕は僕のことが嫌いだよ。
〝不安〟が僕の心を渦巻いて押しつぶす。
僕は常識人。いつからそんなつまらないカテゴリーの一員になったのだろうか。
いつから僕は〝僕自身〟を捨てたのだろうか。
いつのまにか僕は〝僕自身〟に目隠しをされて手足には重たく冷たい〝常識〟と言う鎖が巻き付いていた。
お風呂からあがると、僕は夜ご飯は食べずに布団に入った。
明日から僕はまた〝常識人〟でいなくてはならないのだと思い、多少気がダルいが目を閉じた。
ガタンと大きな音がし、嫌でも目が覚める。
まだ暗い部屋は人の暖かみというものがない。
周りを見渡すと布団には誰もいなかった。
手探りで部屋から出ると、明かりの漏れている居間へと向かう。
襖の間から覗くと皆集まっていた。
「何あの態度!?イミ分かんないだけど!!」
トド松が怒りながらちゃぶ台を叩く。
さっきの音の原因はこれか。多分僕について話してるらしい。
「まあ、知らない。は酷いよねぇ。」
おそ松兄さんが頬杖をつきながら笑っているが、語尾には確かに怒りが籠もっていた。
「チョロ松にーさん、まえ廃墟ビルにいたよー」
十四松がそう言うと皆が十四松の方に顔を向ける。
「「「「なんで!?」」」」
飛び降りようとしてたからだよ。そう心の中で答えたが聞こえてはいないだろう。
「「「「「はっ?」」」」」
足音がこっちに近づいて来る。もしかして僕、声出してた?
急いで階段に上がろうとするとカラ松にがっしりと足首を捕まえられる。
「ヒッ・・・」
グッ、と握る力を強くされ、弱々しい声が出た。
トド松と一松が僕を取り押さえる。
縄を持っているのは十四松。その顔からは悲しみとも狂気とも伺える笑顔がこびりついていた。
流石六つ子はコンビネーションがいいなぁ。なんて他人ごとのように呟いた。
「ごめんね。一松。」
僕の紡いだ音は一松には届いたかな?どうか僕のようになりませんように。
頬から冷たいなにかが伝った。
「なぁ、幸せ?」
男が僕に聞く。
「んん、・・・はい?」
疑問系だったのが気にくわなかったのか僕のソコを素足で踏まれる。
「ッッ・・・しあわ、せ・・です・・・、」
激痛に耐えながらも男がいや、男達が満足する答えを口にする。
「そう。よかった。俺、チョロちゃんに幸せでいて欲しいからね。」
常識人なんかじゃなくていいよ。 男はそう言い、顔を最高に歪にして笑った。
愛おしい我が兄弟達へ
貴方達は大きな罪を犯しました。これ以上僕を苦しめないで下さい。
僕は〝常識人〟と言う枠に収まっていたかった。どうかその枠を壊さないで下さい。それで僕を救った気でいるのなら貴方達は最高に馬鹿です。
僕はどんなにもがき、苦しもうが〝普通〟でいたかったのです。
僕が死んでも「まあ、アイツだから。」で終わらせて欲しかったのです。
僕は貴方達の性処理の道具、ましてや玩具でもありません。
最後は僕に思いっ切りの苦痛と絶望を味わわせてから僕を壊して下さい。
無くなるより壊れた方が人間らしいでしょう?
どうか最後は僕を〝人間〟に戻して下さい。
僕を幸せにさせて下さい。
貴方達にこの声が聞こえますように。
そう願った彼は勿論幸せなんてものとは程遠い日常を過ごしました。
毎日血の繋がった兄弟に犯される日々。
彼は〝壊れた〟のです。
彼の願ったように〝人間〟らしくなりました。
また彼を犯した兄弟達もまた〝壊れて〟おかしくなりました。
その内彼らは罪悪感に苛まれて押しつぶされるのでしょう。
こんな素晴らしい狂劇はきっとこれ以外に存在しないでしょう。
だって彼らは〝常識人〟と言うつまらない枠をぶち壊したのですから。
そこに暗闇しかなくとも〝死〟しか存在しないこと知っても、その〝常識〟というストッパーを自らと同じように狂わせたのですから。
そう語った紫色が良く似合う〝常識人〟の男は泣いていた。
fin