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【囚人と紙飛行機パロ】【一チョロ】あなたが、私の光でした。
日時: 2016/04/23 18:08
名前: アイカ (ID: UrPtHUHp)

これは、とある時代。とある場所。


「ふひっ…僕はクズだからね。」


自由を奪われ、迫害される一人の囚人。


「…また、明日も、来るからな!」


病弱で、けど短気で心優しい一人の少年。


「…僕と、こっちで話さない?」


「僕の名前は……ぇ、えっと……んと、チヨって呼んで?」



「飛んでいけ。クズな僕だけど、今だけは……!」



「僕、遠くにいくんだ。だから…バイバイ。」



「待つよ。いつまでも待ってる!」



「あのとき、つよがら、なきゃ、よかっ、た…………」



「やめろっつってんだよ!!俺と、あいつの、っっ!!破くなぁぁああああ!!さわるな!!こわすんじゃねぇ!!」




「これが!最後なら!!お願いだから!!」



(もう……からだは、うごかないけど)


(もう、処刑されて、生きることはできないけど)



((せめて………最後に))


あなたが、あなただけが、この暗い世界の一筋の光でした。




ー囚人と紙飛行機

【囚人と紙飛行機パロ】【一チョロ】あなたが、私の光でした。 ( No.1 )
日時: 2016/04/23 18:31
名前: アイカ (ID: UrPtHUHp)

ゴキッ!!
強い、音が響きわたった。
ここは、刑務所、なんて名前だが実体はそんなところではない。ただの拷問部屋だ。僕達の種族は代々、紫の瞳を持っている。それだけなのに、毎日、毎日。
殴られて、起きる。仕事でミスをすると殴られ、食事を抜かれることもある。痛い。ずっと痛い。何で、僕が。僕たちが。
将校はニヤニヤしながら僕を見た。
「おい、4番。お前は今から裏庭の雑草抜きにいってこい。」
雑草抜き、一番過酷な仕事だ。草が一本でも残っていたら、殴られるどころではない、もっと酷いことをたくさんされる。けど、逆らえない。もう僕たちはそう教え込まれている。
僕は囚人番号4番。本当の名前は今でも覚えているが、きっと呼ばれることはもう無い。
「お前達は働けば自由になる。労働がお前達を救う。」
そんなことを始めに言われたっけ。けど、そんなことは毛頭もないと理解してしまっている。だから日々、死んだように生きている。
「……やらなきゃ。」
無心になって草をむしり続ける。一本も残しちゃだめだ。綺麗に、綺麗にしなきゃ。
コツッ。
僕たちを逃がさないための柵の向こう側から、靴音が聞こえた。
(マズイ……将校か?!)
きっとまたいびる為に来たのだろう。隠れなくては。いや、それも駄目だ。もう、覚悟を決めるしか……!
「あれ?人がいる。」
そこにいた人物は僕の想像した人物ではなかった。
「お、お前、怪我してるけど大丈夫か?!」
麦わら帽子についてる、緑のリボンが風にあおられていた。
「………、別に、大丈夫。」
その少年から、目が離せなかった。


暖かい、光が見えた気がした。


始めてだった。気味悪がられなかったのは。


それが、恋だとあとから気づいた。

【囚人と紙飛行機パロ】【一チョロ】あなたが、私の光でした。 ( No.2 )
日時: 2016/04/23 18:41
名前: アイカ (ID: UrPtHUHp)

話しだしたのは、僕だった。
「こっちに来て、話さない?」
いった後に、気づく。この柵には電気が通っていて、入るどころか触っただけでも危ない。この柵が今は恨めしかった。少年と話せないということもあるが、少年との隔たりをさらに大きいものにしているように思えたから。少年もそれに気づいたように少し悲しげに笑って、それから何かを思い付いたように笑って僕に告げた。
「なぁ!明日も来るからな!」
「ち、ちょっと待って!」
呼び止めて、聞いていた。
「あ、えと…名前は?」
ちょっと困った様子の少年。あぁ、こんなクズなんかに名前は教えたくないのか。
「…んと、えぇっと…チ、チヨって呼んで!」
頑張って捻り出したのであろうその名前。偽名であることはバレバレだった。けど…久しぶりだった。番号でしか人を呼んでいなかったから。


こんなに暖かい気持ちは久しぶりだった。



自然と僕の口許は緩んでいた。

【囚人と紙飛行機パロ】【一チョロ】あなたが、私の光でした ( No.3 )
日時: 2016/04/24 00:56
名前: アイカ (ID: UrPtHUHp)

次の日。僕は休憩時間に外に出ていた。あの少年が、チヨが来ることを、きっと期待していたんだろう。眠る時、あんなに幸せだったのは始めてだった。あんなに笑顔を刻みつけられたこと、いや、あんな優しい微笑みを向けられたのは始めてだった。けど、チヨと僕の生きる世界は違う。だからきっともう来ない。期待する気持ちと諦める気持ち。そんな相反する気持ちに押し潰されそうになったとき。
コツン。
地面に何かが降ってきた。それは一つの紙飛行機だった。
慌てて僕が柵へと顔を向けると、チヨがイタズラっぽい笑顔でそこに立っていた。
「……?」
何やら身振り手振りで何かを伝えようとしている。……?これを、開けて?
そっと紙飛行機を開いた。そこには、手紙が書かれていた。
『こんにちは。これだったら看守の人にバレずに話せるだろ?紙飛行機だったらこんな柵、普通に飛び越せるしな。だから、これから紙飛行機を交換しようよ。僕は、お前の事を知りたい。好きなもの、とかそういうことが。ちなみに僕はアイドルが好きだよ。にゃーちゃんって本当に可愛いんだ!これはあんまり人に言ってないんだけどね。
だって僕、友達がいないから。だから、お前が友達になってくれるといいな。あと、お前の名前聞いてもいいかな?
              チヨ』
暖かい、気持ちになった。チヨの心遣い、そして始めて貰った手紙に。
その紙飛行機を大事に抱えて、絶対に返事、書くから!という意味をこめて笑顔を向ける。通じたかはわからないけど、チヨはにっこりと笑ってくれた。



こんな感覚、始めてだった。



そして、ここからチヨとの長い長い交流は始まった。

【囚人と紙飛行機パロ】【一チョロ】あなたが、私の光でした ( No.4 )
日時: 2016/05/10 21:49
名前: アイカ (ID: UrPtHUHp)

毎日、毎日。僕らは紙飛行機を交換しつづけた。
『今日は、お花をお父さんがくれたんだ…』
『今日、猫が紛れ込んだから、友達になった』
『本、やっと読み終わったよ!』
『字、上手くなったでしょ?』
本当に些細なことのやりとりだった。ただ、それだけでも嬉しかったんだ。それを壊したくなかったから。僕は本当のことを、刑務所のことを書かない。君が笑顔でいてくれることが、僕の喜びだから。僕なんかのせいで、笑顔を曇らせたりなんて、したくなかった。



……あれから、どれほどたったのだろう。
青年となった僕らの紙飛行機は、まだ柵を行き来していた。そして僕は君がくれる紙飛行機が一種の安定剤のようになっていた。どんなに辛いことがあっても、君の紙飛行機を見れば、笑顔を思い出せば。全て、笑顔で耐えきれる気がしたんだ。けど……そんな幸せは、簡単に崩れたんだ。君は笑って言ったよね。


「ごめんね。僕、遠くに行くんだ。だから……




ばいばい。」



ねえ。



そんなさみしい笑顔、止めてよ。



チヨ……


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