BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 白昼夢【文スト】包帯無駄遣い系男子生誕祭
- 日時: 2016/06/26 21:45
- 名前: 緋雪 (ID: ejGyAO8t)
みんな大好きだざあさんの生誕祭で勢い余って書いたものをそっとうpします
小説2巻ややネタバレあり、
やや織太要素あり
マフィア組、社長、ギルメンは登場しません。。
ハッピーバースデーだざあさん!
- 白昼夢 ( No.1 )
- 日時: 2016/06/20 01:40
- 名前: 緋雪 (ID: 1.72.7.1)
白昼夢
夜の横浜に1発の銃声が響いた。
音と共に放たれた、熱くひしゃげた鉄の塊は私めがけて一直線に飛来した
流れる時間は永遠を感じさせるほどではあったけれど、
其は吸い込まれるように私に到達した、
先刻から"死ぬ"と言うことばかりを考えていた私はもはや何処に当たったのかなど見当もつかないまま後方に吹き飛ばされた
全身を強く打ちつけた鈍い痛みを感じ、喉の奥に鉄の味が広がる
静かだった、周りを包んでいるであろう叫び声や騒めきは私の耳には届かない
ああ、こんな心持ちなのか。
白黒とゆれる視界がぼやけていく
私はゆっくりと目を閉じる。
意識が暗闇に落ちる寸前、誰かが私の名前を呼んだ気がした
夢をみた。
私は川の中に立っていた
如何やら、また死にぞこなったらしかった
いつまでもそこに立っていたっていっこうに死ねないのだから
仕方なしにざぶりざぶりと急流を掻き分けながら私はのろのろと川岸に這い上がった
それにしても、ここは何処だろうか
何処からどれくらい流れて来たのかさえ、ちっとも見当がつかないが
見知らぬ所まで随分流された様だった
私は此れが夢であるとは思いもせずに辺りを見渡した
対岸から私を呼ぶ声がした
聞き覚えのある、懐かしい、声
ゆっくりと其方へ振り返る
「織田作…君なのかい…?」
すると彼は少し安心した様に
「忘れられていたら、如何しようかと思った」
と何ら変わらぬ真顔で答えた
其の時、何故か私は織田作はまだ生きていて
久しく会っていなかっただけの様な錯覚にとらわれていた
「私が君の事をわすれる筈がないじゃあないか、それにしても久し振りだね織田作」
「…ああ、…久しく見ないうちに随分と変わったな、太宰」
そう言って少し目を細めた
「佳い人間に少しでもなれていたら嬉しいよ
ところで織田作、君から声をかけてくるなんて珍しいじゃないか、私に用事が有るんじゃないのかい?」
すると織田作は少し眉を下げて俯きがちに答えた
「様子を見に来ただけだ…元気そうで、安心した」
「元気では有るのだけれど、自殺は一向に失敗してばかりだよ」
私の言葉を聞くと織田作は悲しそうに微笑んで
「程々にな…まだあの豆腐は作っているのか?」
と聞いた、あの豆腐とは以前、私が自殺の為に作った特殊な固い豆腐の事だ
「最近は作ってないねぇ、今の職場にお豆腐好きな子がいるのだよ、今度作って上げようと思う」
「其がいい」
織田作は小さく微笑んだ後、髪を触りながら視線だけを此方に向けて呟いた
「太宰、おめでとう」
「いったい、何のことだい?」
「今日、誕生日だろう」
ふと合点がいった、織田作はこの言葉をわざわざ言いに来てくれたのだ
「ふふ、ありがとう。わざわざ伝えに来てくれたのだね」
照れ臭そうに髪を掻き上げてから織田作は私の背後、其の遠くの方を見遣った
「太宰、その後ろに続く道を真っ直ぐ歩いて行けば、きっと帰れる」
そして促し急かす様に指を指した
「ありがとう、如何やって帰るか考えあぐねていた所だったんだ」
そう言って振り返ってから、ふと織田作と2度と会えないのではないかと感じた
「織田作、また会えるかい?今度は一緒に酒でも呑もう」
「ああ、あの酒場でな」
其の声を聞いた私はゆっくりと1歩踏み出した
途端、目の前が真っ白な光に包まれた
意識がふわりと上昇する感覚を捉えたとき
私の耳にはっきりと、織田作の
「幸せになれ、太宰」
と言う声が聞こえた
目を覚ましたのは探偵社の医務室だった
ベットに横たわっている私の腕にもたれる様に敦くんと鏡花ちゃんが眠っている
大方、私の様子をみている内に眠ってしまったのだろう
ぼんやりと其を眺めているとドアがゆっくりと開き谷崎くんが顔を出した
「敦くん、そろそろ交替のじか…太宰さん⁉」
「おはよう、谷崎くん」
目をぱちくりとさせている谷崎くんは見てわかるほど慌てていて
「あ、与謝野先生!与謝野先生を呼んできます!」
と言ってドアに躓き乍ら走って行った
如何やら与謝野先生のお陰で私の身体には傷ひとつ残ってはおらず
今すぐにでもベットから飛び起きることが出来そうだ
今のやり取りの所為か敦くんと鏡花ちゃんがもぞもぞと動き乍らゆっくり瞳を開けた
「あ、れ…?太宰さん、目を覚ましたんですね!あ、ああよかった…」
くるくると忙しなく表情を変える敦くんの横で未だ眠そうに瞼を擦る鏡花ちゃんが私の腕をつんつんとつついた
「…お豆腐」
「豆腐がどうかしたのかい?」
「太宰さん、寝てる時、豆腐って言ってた…その後、私の夢の中で太宰さんがお豆腐を作ってくれた」
そうか、私は譫言を口にしていたのか
「実はとっておきの豆腐製造方法があるのだよ、今度作ってあげよう」
そんなことを話しているとドアが勢いよく開き国木田くん、与謝野先生、谷崎くん、それに続いて乱歩さんが這入って来た
国木田くんはズカズカと大股で近付いて来ると開口一番、鬼の様な形相で叫んだ
「太宰、貴様よくも俺の予定を狂わせてくれたな!俺の予定には仕事の相棒が銃で撃たれて3日間寝続けて、その介抱をするなんて書いていないぞ!第一に貴様は…」
と、まあ何時もの具合でお説教している
眼鏡の下にくっきりと隈が見て取れるから恐らく寝る間も惜しんで対応してくれたのだろう、心なしか痩せたような気もする
「怪我を治しても眠ったまんまだったから心配したよ…で調子は如何だい」
「お陰様で、元気ですよ」
「そうかい、そりゃあ良かったよ」
そう言って与謝野先生は心底安心した様にからりと笑った
「そうそう、太宰!この僕も看病したんだ、治らない訳がないよね」
「乱歩さんにまで看病して貰ったんですか、そりゃあ国木田くんも怒る訳だ」
「社長も心配していましたのよ、ねぇ兄様?」
いつの間にか這入って来ていたナオミちゃんが谷澤くんの腕を絡め取りながら首を傾けた
「私は3日も眠っていたのかい…?」
「ああそうだ、お陰でお前のたん」
「あ、其れは云わない約束ですよ!国木田さん!」
何かを云おうとした国木田くんの言葉を遮る様に敦くんが言葉を被せた
「たん…?私の?」
恐らく、私が意識を失ったのが17日、其れから3日という事は多分今日は20日
この3日間の間と考えれば思い当たるのは、
「私の、誕生日…?」
「その、だな敦がどうしても皆んなで祝いたいと言ってだな…俺は先輩として仕方なく準備を手伝ってだな…」
「本当に素直じゃないねェ、意外とノリノリだったじゃないか」
その場にどっと笑いがおこる
「経費が無駄になるのも何だ、これからでも良いのではないか?」
笑い者にされて赤くなった顔をそっぽに向かせてぶっきらぼうに言う国木田くんが何だか可笑しくて私はまた笑ってしまった
「ふふ、私はこんなに優しくして貰えるなら、此れから毎日、怪我人か誕生日の主役に成りたいものだね」
大丈夫だよ、織田作
見ての通り、私はいまとても幸せだ
Page:1