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松の暗い小説書きます。
日時: 2017/01/30 23:01
名前: 街猫 (ID: PLUY1qyp)

ひっさびさにカキコに帰還しました主です。最近脳内エグいから純粋さを取り戻そうかと。
甘めやほのぼの、また病み系もメインで書いていきます。

コメント、リクエストお気軽に。

Re: カラおそ ( No.1 )
日時: 2017/02/01 21:47
名前: 街猫 (ID: PLUY1qyp)

逃避行I*カラおそ


今日は、家に誰も居なくて。居ないと、思っていて。折角の、チャンスだったから。

「気持ち悪い」

そんな声が頭上から降ってくるだなんて思いもしなかった。え、嘘、だってお前、今日は女の子とデートだって。ぐるぐる、脳内が湾曲し目の前で自分と全く同じ顔を驚愕に固まらせる相手と重なったままの手をぎゅっと握る。
数秒前まで触れ合っていた柔らかな唇が、肉が恋しい。呆然と、スマホ片手に立ち尽くしたまま己等を見下ろす末弟の顔を彩るのは嫌悪だ。

「や、やめてよ、冗談でしょ?兄弟でなんてさあ」

青い顔。多分、自分も、恋人も血の気が失せているのがよく分かる。違う、何て口を開こうにも張り付いた喉では無理だった。それは、此奴も同じらしい。
さて、発覚からここまでは何分、いや、何秒だっただろうか。俺は咄嗟におそ松の手を握り直し、更に捲し立てようとするトド松の横をすり抜けて外へと飛び出した。

「か、カラ松……?」

走って、着いたのは橋の下。確か、いつかにイヤミが住んでいた場所だ。

「すまん、おそ松」

走っていて、気づかなかった。逃げ出すことに必死で、ようやく真面に見た顔は大粒の涙で濡れていた。

「……おそ松」

喉が掠れる。堪えていた涙が、兄の泣き顔に引っ張り出される。ぼろりと零れたら終いだった。
えぐえぐと、抱き合う大の男が二人して涙を流す光景は少々目立っただろうが、幸いなことにここは人通りが少ないどころかほとんどない夕暮れ道だ。


「……」
「……いい加減泣きやめって、俺困っちゃうんだけど」

あれから、まあ数十分程度だろう、適当に泣いて、落ち着いたらまた涙が出る、なんてことを俺等は互いに繰り返した。のだが、段々と目も痛く、もう自分の顔は明らかに格好良く無いのに止まらない。流石おそ松、涙を擦った赤い痕のある目元を無理矢理笑ったように歪ませては、俺を本当に言葉通り困った顔で見つめるのだ。
悲しい。幼い頃の相棒に、向けられた事のない視線を向けられたのが、否定を、されたのが。
胸元に突っかかる何かがまた涙を溢れさせ、もう格好付ける余裕なんて無いほどに、堰を切って流れるそれを止める手立てを、俺は知らなかった。
ゆっくりと背を摩ってくれたおそ松の手だけが、やたらと感じられていた。
ああ、最初と逆転してしまったな。

*

時間で言えば一時間しない程度か。ようやく、吃逆があとを引きつつも俺は落ち着いた。
そのままざわざわと流れていく綺麗でもない川を眺めていた。

「なあ」

ぽつっとおそ松が口を開く。今頃兄弟達は俺達を探しているだろうか。

「なんだ?」

掠れたままの己の声はいつもより低い。同じように、驚愕に掠れた弟の声を思い出す。

「嫌われちゃったねえ」

そう、吐き出して、へらりと笑むその顔は、どうしようもなく綺麗で。
赤い舌が、隅々まで味を知ったちょっと苔のある舌が、紡ぐ声が苦しくて、

「……そうだな」

逃げたくなかったと、訴えられた気がした。

Re: 松の暗い小説書きます。 ( No.2 )
日時: 2017/01/31 12:04
名前: 街猫 (ID: PLUY1qyp)

反応あったら続きで。

Re: 松の暗い小説書きます。 ( No.3 )
日時: 2017/02/01 18:18
名前: 刹那 (ID: Cejf6vFx)

すごいです!!
ぜひ続き書いてください!!

Re: 松の暗い小説書きます。 ( No.4 )
日時: 2017/02/02 20:51
名前: 街猫 (ID: Wl8kRSYB)

刹那様

ありがとうございます!!続き書きましたので、よろしければまた見ていただけると嬉しいです(*^^*)

Re: 松の暗い小説書きます。 ( No.5 )
日時: 2017/02/02 22:11
名前: 街猫 (ID: PLUY1qyp)

逃避行II*カラおそ

結局、帰ることはできなかった。段々と馴染みのない景色が増えていく。淡々と歩みを進めるおそ松に、俺はただ付いていくだけだった。

「どこにいくんだ?」

余りにも会話がない。ふと、聞いてみた。聞きたくは、ない。

「んー、分っかんない」

迷いがない足取りの癖して、そんなことを吐く。
もう暗い道、するりと絡めた手が解かれることはなかった。
路地を、線路沿いを、街灯のない道をふらふら進む。ふと、昔迷子になった時の事を思い出した。確か、こんな風に暗くてざわざわと遠い風の音が耳を撫でる時間。寒くは無いけれど、繋いだ手が伝えてくるじんわりとした熱がやけに心地良いくらいの季節。

潮の匂いが近づく。
*
「うっはー、誰も居ねえ!!」
「そりゃあこの季節だからな、と言うか海に来たかったのか?」

たったの二駅分。十四松なら簡単にダッシュで着いてしまうここは、崖と小さな砂浜のある入り江だ。いつかにあった五男の色恋騒動を思い出し、そしてつい己等に重ねては切なくなる。また涙が零れてしまわぬうちに首を振った。

「ね、カラ松ぅ」

ふにゃりと彼奴が崖の上で微笑む。またあの笑顔だ。やはり、どうにも綺麗で胸が詰まる。

「一緒に、なろ」

掴まれた手のひらは、潮風に少し冷えていた。

「ああ」

おそ松の言わんとしている事は分かった。

「なんつー顔だよ」
「おそ松こそ」

きっと、性懲りも無く同じ顔だ。幸福がはち切れそうな、満面の笑み。

高く高く水飛沫が上がる。
俺は間違えていた。あれは逃げたくなかったなんて顔じゃなかったんだ。
企てが上手くいって、上手くいったからこそ諦めるべきを諦めた顔。

嗚呼、なんて愛しい表情!!

気づけば必死に口付けると共に、おそ松を腕に強く強く抱きしめていた。どんどん服が水を吸って重くなるが、そんなことは構わない。夢中で抱き合ってキスを重ねたまま、俺達は、青の底へ溶けた。
夕日が、遠くに光っていた。


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