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- 名も無き少年は恋をする。【暗殺教室】
- 日時: 2017/09/23 20:22
- 名前: ココナッツ (ID: Pa6wZ.rX)
俺は今までなんだってこなしてきた。
演技だって、技術だって…暗殺だって。
それなのに、どうして貴方はいってしまうのですか?
記憶の中で薄れていく影を追いながら、彼はそっとその名を呼んだ。
『死神さん』
- Re: 名も無き少年は恋をする。【暗殺教室】 ( No.1 )
- 日時: 2017/09/23 20:53
- 名前: ココナッツ (ID: Pa6wZ.rX)
(依頼されて…来てみたはいいものの)
周りを見渡せば自然豊か…というか雑草だらけの校庭。
ボロボロで今にも壊れそうな校舎。
恐る恐る踏み出してみれば、所々床が抜けてしまいそうな程ボロい。
おまけに窓も欠けつつある。
こんな所に生徒など存在するのであろうか。
とりあえず、俺は頭の中で依頼内容を整理する事にした。
ある日突然、死神さんが失踪してから約1年は経った頃。
突然政府から連絡が掛かってきた。
政府が殺し屋なんかに何の用だと言うのだ。
嫌な予感がよぎりつつも、とりあえずは出よう。
話はそれからだ、と素直に携帯を手に取った。
『もしもし、原田さん』
「原田」とはこの家に住み着き名乗っている偽名だ。
政府の人間は『いや、すみません。貴方はこう呼ばれているんですよね』と苦笑してから、こう呼んだ。
『天使さん。』
…天使、ねぇ。
なんちゅう名前で呼びやがるんだ。
俺が天使というネームで呼ばれるようになったのは、死神の弟子だからというのもある。
そして、周りの情報に寄ると
『爽やかな笑みで相手をものにし、最初から最期まで、不敵な微笑で相手を殺める。』
まさにその姿は『天使』そのもの。
「…で、政府さんは何の御用で?」
『おっと、これは失礼。実は君に依頼したい事がある』
「…依頼?」
政府からの依頼と聞いて、そっと耳を傾ける。
どんな依頼かと聞くと、若い君だからこそ出来るいわゆる潜入捜査のようなものさと笑った。
『椚ヶ丘中学校3年E組に、今年担任としてとある生物が来る』
「ふーん、んで。その生物ってのは?」
興味本位で聞いてみると、政府は妙に余裕を持った笑みでこう言った。
『少なくとも、お前が一番知っていると思うぞ』
と、妙に引っかかる事を言ってから政府は話を続けた。
『その生物は触手を持っていて、しかも何故か一年後に地球を破壊すると宣言していた。そこでだ。お前の年齢は確か推定15.6歳程。しかも超一流殺し屋の弟子ときた。この潜入捜査、そしてその生物『暗殺』を是非引き受けて欲しい』
人間の暗殺なんて何度もやった事がある。
けれど、触手生物の暗殺なんざ依頼を受けた事が無い。
1年間の潜入捜査、
しかも、政府直々の依頼ときた。
これは、引き受けるしかないだろう。
俺は、すぐに了承の言葉を口にして電話を切った。
その後、政府からその学校の『制服』が送られてきた。
サイズはぴったりだ。
学校の潜入捜査など初めてだし、何より学校へ通った事などは無いから妙に胸が躍った。
政府に寄ると、俺の名は『今村優也』として学校に伝えてあるらしい。
そして俺の潜入捜査の件を知っているのは、同じく政府の人間の『烏間惟臣』だという。
けれど、周りに馴染んでからの方が暗殺に挑みやすいと見て、俺は政府の人間と生物がやって来る前に、先に教室へと送られる事となった。
どんな教室であろうと、俺が必ず操ってみせる。
そう自分の中で宣言して、俺は玄関のドアノブに手をかけた。
- Re: 名も無き少年は恋をする。【暗殺教室】 ( No.2 )
- 日時: 2017/09/23 21:25
- 名前: ココナッツ (ID: Pa6wZ.rX)
登校初日。
長い道のりをのりこえて、
胸躍らせて来てみればこの大草原である。
わー、自然豊かですねなんてものではない。
文字通り周り全てが大草原である。
そして、その先にあるのは皆が夢見る素敵な学校なんてものではない。
木で作られた校舎である。
しかも大分ボロくて、ちょっと力を入れたら床が抜けるんじゃないかと言うほどのおんぼろ。
おまけに窓は掛けているし、とても衛生面的にも精神的にも色々よろしくない。
本当に生徒なんか居るのだろうかと思わず不安になったが、そっと教室の扉を開く。
やはりその扉もボロくて、『ギィィ』と今にも壊れそうな音を立てている。
そして教室を見てみると、皆下を向くばかりで転校生に対して何の挨拶一つも無い。
最近の若者ってのは冷たいもんだ。
その後、チャイムが鳴り響きいかにも悪そうというかなんというか、とにかくやる気のない今の担任、というか仮教師がやってきた。
そして転校生の俺に気づくと、そいつはニタリと笑った。
『クズどもに朗報だ。これから新しく入るクズを紹介する』
なんだその紹介の仕方は。
演技とか関係無しに顔面を殴ってやりたい。
けど、そんな事してしまえばこの潜入捜査はすぐに終了となるであろう。
そんな気持ちを堪えながら、俺は紳士的に微笑を浮かべて自己紹介をした。
「転校生の今村優也です。転校したばかりで何も知らないので…色々、教えてもらえると嬉しいです。宜しくお願いします」
ぺこり、と頭を下げる。
何人かの女子が一瞬目を光らせたが、すぐにその光は途絶え皆下を向いた。
「こいつの席は…おい、そこの貧乏」
そう指さされたのは、顔立ちが綺麗で純粋そうなサラサラとした黒髪の少年だった。
「は、はい…?」
「お前の隣、空いてるだろ。座らせてやれ」
担任が言うと、何やら皆がヒソヒソと騒ぎ出したが気にしない。
俺はすぐにそいつの隣に向かって笑顔で対応し、手を差し伸べた。
「今村優也です。これから宜しくね」
「い、磯貝悠馬…です。宜しく」
少し戸惑いながらも、差し伸べられた手を取り握手を交わす磯貝。
俺はこいつを何とか利用出来ないものかと席につき考えた。
昼休み、何やら騒がしいと廊下から教室に入って見れば、磯貝はいかにも簡単に表すのであればジャイアンというに相応しい存在に胸倉を掴まれていた。
「今俺にぶつかっただろ。土下座しろや土下座」
うわ、なんだその昭和のヤンキーみたいな脅迫。
内心引きながらも状況を見て出る幕を見計らう。
「で、でも明らかにそっちが…」
「あぁ!?」
すると、そいつは更に磯貝の首を絞めるかのようにして強く胸倉を掴んだ。
「ん…ぐぅ」
息苦しそうに息を漏らす磯貝。
そろそろか、と俺が踏み出そうとすると1人の少女が俺の手を止めた。
「い、いかない方が良いです怖いです…!」
メガネを掛け三つ編みの少女がそう訴え、周りにいた奴等も静かに頷く。
…なんだこいつら。気色の悪い。
「悪いね。俺、こういうの本当嫌いなんだ。」
笑顔で優しく手を払い除け、磯貝たちの前へと向かった。
すると、ボス的なやつはなんだとでも言うように俺を睨みつける。
俺は怯みもせずに微笑を保ったまま話し始めた。
「標的を1人に絞っていじめ、かぁ…そんな子供みたいな事やってて楽しいの?」
俺が問いかけたその瞬間。
クラスの空気に一気に緊張感が走るのを感じる。
そいつは「転校生の癖に生意気いってんじゃねぇ」と余裕を見せるかのように笑い、磯貝の胸倉を離す。
けど、内心焦ってるよね。
バレバレだよ。
「あ、気に触ったんならごめんね。けど…」
俺は一瞬にしてそいつの背後へと回る。
そいつは驚いたようにこちらに振り向こうとするが、振り向かせない。
俺はそいつの首に手を当て耳元でこう囁いた。
『俺、こういうクソみたいな事して優越感に浸ってる奴、『大嫌い』なんだ』
すると、相手は恐怖に怯えたかのように一気に腰を抜かしてその場に倒れ込む。
空気が凍りつく中、俺は笑顔で磯貝の手を引いた。
「悠馬、ちょっと校庭で話さない?」
この状況は利用出来る。
俺は、このクラスを操るんだ。
- Re: 名も無き少年は恋をする。【暗殺教室】 ( No.3 )
- 日時: 2017/09/26 23:21
- 名前: ココナッツ (ID: Pa6wZ.rX)
「い、今村さん…?」
いきなり手を引かれた事に動揺を隠せずに居る悠馬をよそに、俺は問いかけた。
「ねぇ、ちゃんと話してよ。こんなクラスに至った経緯を」
「…」
悠馬は目を逸らし、何も答えずにただ怯えている。
…これは徐々に心を開いていくしかないな。
「…ごめんね。転校初日に派手にやっちゃって…迷惑、だった?」
「迷惑なんかじゃない!!」
悠馬はそう叫ぶと、ハッとした顔をしてしばらく黙り込んだ。
俺はそんな悠馬の頬に優しく触れる。
ピクっ、と反応する悠馬に俺は耳元で優しくこう囁いた。
『大丈夫、俺は悠馬の味方だよ』
人間という者は、優しさに弱い。
特に、悠馬のような優しさに慣れていない人間は、優しい言葉を掛けられただけで舞い上がってしまう。
優しさは『魔法』だ。
悠馬はそう言われた瞬間目を見開いて、今にも泣きそうなのを堪えながらただ「ありがとう…ありがとう」と感謝の言葉を繰り返していた。
ねぇ、悠馬。
俺はお前の味方だよ。
ただし…
『この仕事が終わるまで…ね』
そう、これは彼を理由するための嘘であり所詮は張りぼての優しさだ。
彼をたくさん利用してあげよう。
そして、いざという時には簡単に切り捨てあげよう。
その時彼がどんな顔するのか、今からでも楽しみだ、なんて思ってる俺は。
あのボスみたいな奴より、『クズ』なんだろう。
日が進むにつれて、E組の事を徐々に知るようになった。
彼、寺坂竜馬はこのクラスの支配者。『ボス』である。
この情報は『奥田愛美』からによる情報。
彼女曰く、寺坂の標的に関わったものは酷い目に合わされるという。
その証拠に、以前悠馬を助けたという前原陽斗は捻挫を負って、現在も治療中で休み気味らしい。
なんて阿呆な連中だ。
こんな事して一体何が満たされると言うのだろうか。
そして、最近彼らの態度が冷たくなってきた。
恐らく『寺坂』に逆らったからであろう。
所詮は弱者の集まりって訳か。
これなら、支配なんて簡単だな。
そんなこと思いながらドアを開ける。
その瞬間ニヤリと口角を上げる寺坂が見えた。
何事かと思い見渡せば俺の机はゴミだらけ。
寺坂以外は何も言わずにただ下を向いて見て見ぬふりをしていた。
(任務とはいえ気分悪ぃや)
「おはよう。」
何事も無かったかのように笑顔で挨拶を向けると、何人かが微かな声で「おはよう」と呟いた。
表情を歪ませる寺坂を他所に、席に座ると磯貝が今にも泣きそうな声で「ごめん…」と呟いた。
「別に構わないよ。それに、悠馬のせいじゃないし」俺が言うと、悠馬は静かにうなずいてから俺の机のゴミを片し始めた。寺坂が悠馬に向けて睨んできたが、悠馬は怯むこと無くゴミを片す。
その様子に胸を痛めたらしい奥田が、「私も手伝います」とこちらへ寄ってくる。
皆はその様子を見つめるだけで何も言わないが、胸を痛めている事は分かった。
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